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秋知将と冬将軍

作者: TOMMY
掲載日:2025/11/04

冬将軍は、ゆっくりと腰を上げた。

白銀の甲冑が朝の光を受けて淡く輝く。

「どれ、今年はそろそろ、赴こうかの」


その声は、霜柱のきしむ音のように低く、澄んでいた。

腰の太刀が、金属の呼吸をひそかに漏らす。

冬将軍は望遠鏡を手に取り、彼方の山々を見やった。


「ふむ……秋知将は、まだ働いておるな。見事なり。しかし──」


その視線の先、山は赤や金に染まり、燃えるような景観をつくっていた。

秋知将は巧みに筆をふるい、山肌に色を置く。

その筆は風を染め、山に息を吹き込んだ。

その均衡、その節度、まさに自然の調律師であった。


冬将軍は空に手をかざすと、北風を呼んだ。

風は鋭く唸り、彼の羽織が揺れた。

やがて彼は手を前に押しやり、一陣の白風となって秋知将の社へひとっ飛びした。


「やあやあ、今年も見事よ、秋知将」


秋知将は筆を止め、深く頭を垂れた。

「これはこれは、冬将軍。今年は少しお早いのではございませぬか」


冬将軍は目を細め、静かに答えた。

「貴殿も承知しておろう」


秋知将はわずかに沈黙し、やがて頷いた。

「はい……存じております。力の及ばぬことながら、全力を尽くしております」


「ふむ。仕方あるまい。

実りがこうも少なくては、熊も安らかに眠れん。まぁ、いざとなればこの冬将軍が──」


秋知将は深々と頭を下げ、遮るように言った。

「まだ、暫しお待ちください。

秋の真髄、いま一度お目にかけましょう」


そう言って、秋知将は社の前に立った。

袖を広げ、ゆるやかに舞いはじめる。


その瞬間──

風は優しく渦を描き、木々は息を吹き返した。

紅はさらに深く、黄は光を帯び、枝の先々にはふっくらと実が育っていく。

山は一枚の絵画となり、世界がひととき、時を忘れた。


冬将軍はその光景を見つめながら、静かに頷いた。

「……まこと、美しき景観よ」


白い吐息が宙に漂い、ゆっくりと溶けていった。

そして季節は、音もなく冬の支配へと移り変わっていった。

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― 新着の感想 ―
 厳かな冬将軍が見てる中、落ち着きある秋知将が時に謙虚に時に大胆に景色を彩る様が素敵でした。
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