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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆書籍発売中
第二章 料理人は異世界で先生に

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51.領主、勝利は確実 ※フロランシェ領主視点

「こちら前菜のフリッターサラダです。レモンドレッシングでさっぱりと食べられる一品になっております」


 使用人たちにしっかりハルトが教え込ませたからか、動きは基本的に問題はなさそうだ。

 ちなみにサラダは担当がおらず、ハルトが自らレシピを料理長に教えて作っていた。


「うまそうだな……」

「お父様、こんなサラダ見たことないですよ」


 私も見たことないサラダに気持ちが高ぶっている。


「これはどうやって作ってあるんだ?」

「季節の野菜に薄力粉の衣を作り、一度軽く揚げています」

「そうか。さすがハルトさんだな」


 ハルトさんの料理は作り方一つ一つが丁寧で繊細なものが多い。

 それに見た目も芸術性が高くて、王都の料理人の中でも高水準の人物だろう。

 まるでゼルフィウス様が連れてきた料理人か、別の世界から来たような方だと思っている。


「ではいただこう」


 私は衣のついた野菜を口に入れた。

 サクッとした衣から野菜の甘みが口いっぱいに広がる。


「かぼちゃが甘い……」

「お父様、何ですかこれ!」


 娘のショートもあまり好んで野菜を食べないのに、手を止めることなく頬張っている。


「かぼちゃに火を通すことで、より甘みを強く引き出しています。それを外に出さないためにも衣が必要だと聞いていま……です!」


 きっとハルトさんに教え込まれたまま話しているのだろう。

 俺はチラッとブレッドン側のテーブルに目を向ける。


「なんだこれ……」

「野菜がこんなに美味しいなんて……」


 領主夫妻はあまりの美味しさに言葉を失っていた。

 野菜が苦手な子どもたちが手を止めることなく、サラダの入っていたお皿はすぐに空になってしまった。

 もちろん私とショートも同じだ。


「次はクリームシチューです。先ほどのサラダは体を冷やしてしまうので、一度体を温めるとより美味しく食事が召し上がれます」


 普段からクリームシチューを食べることが増えてきた。

 この何とも言えない濃厚なスープが私は大好きだ。

 ただ、今回はそこに薄い何かが置いてある。


「これはなんだ?」

「パンではないのかしら?」


 ブレッドンの領主夫妻も興味深そうに聞いていた。

 もうこれで今回は我が領地の勝ちだろう。

 俺は嬉しくなり、笑みを深めるとそれに気づいたのだろう。

 すぐに視線を逸らした。


「こちらはパンケーキと言います」

「パンケーキだと!? ふんっ、ついにパンを作ったのか」


 さすがに〝パン〟とつけば、強力粉だと思っているだろう。

 だが、これもハルトが作ったことのあるパンだ。


「いえ、これも全て薄力粉で作っております」

「チッ!」


 悔しそうな顔をするあいつを見ると、ずいぶん心地良いな。


「このパンケーキは普段よりも薄い気がしますが……?」

「ショート様の言う通り、今回は少し薄めに作っています。上に載っているパンケーキを崩して召し上がってください」


 柔らかいパンケーキとクリームシチューを一緒に掬って口に入れる。

 やっぱり食べ慣れているクリームシチューと変わらない。

 ただ、ブレッドンの領主は驚いていた。

 子どもたちもマナーを忘れて、皿を持って口元に近づけて食べるくらいだ。


「パンケーキにクリームシチューが染み込むと、さらに味が深くなりますわ」

「今回は溶かしたバターを多く使っております。そのため、そのまま食べても美味しいですし、クリームシチューと馴染んで二度美味しさを楽しめます」


 私はスープ担当の見習いだった料理人に視線を送ると、軽く頭を下げてパン・デザート担当の料理人と喜んでいた。

 きっと協力することを覚えて、一緒に作ったのだろう。


「スープのあとはメイン料理です。今回はチキンのピカタを用意しました。ソースはトマトとチーズの二種類からお選びください」


 さっきのフリッターとは少し似たような見た目をしている。

 これはきっとハルトが指導しているのだろう。

 ピカタって聞いたことがないからね。


「ピカタは薄力粉と卵でコーティングすることで、お肉が柔らかく卵でふんわりとします」

「うっ、なんだこれは!? チキンって硬いのが当たり前だろ!」


 私もすぐにナイフを入れる。

 ジュワッと肉汁が溢れ出てきた。

 プルプルとする鶏肉に驚きを隠せない。


「なんだこれは……」


 鶏肉は筋肉質で中々食べづらいが、ハルトのアドバイスでここまで変わるものなのか?

 トマト煮も美味しかったが、硬さが全く違う。


「このレシピは教えてもらえないか?」

「それは降参すると言っているもんだぞ?」

「うっ……それでもこれを毎日食べたい!」


 あいつはあっさりと負けを認めた。

 今まで素直になるあいつは見たことがない。

 それに――。


「いや、私も今回は負けだ。全て一人の料理人がアドバイスしているからな」


 私がキッチンカーに視線を向けると、ハルトはビクッとしていた。


「このあとはデザートだけかい?」

「はい、キッチンカーの料理を楽しめるように、勝手に調整させていただきました」


 料理長も中々悪い顔をしている。

 普段は出てくる主食が薄いパンケーキのみにしていたのは、ハルトさんの料理を食べさせたいためだろう。

 料理の師であるハルトさんの料理は別格だからな。


「じゃあ、私はキッチンカーとやらに行こう」

「ふんっ、すまないが私が先だ」


 私は勢いよく立ち上がると足に力を入れて、キッチンカーに向けて走り出す。


「何だと!?」


 それを追いかけるようにあいつも走ってきた。

 やっぱり私たちの関係は昔から変わらないからな。

お読み頂き、ありがとうございます。

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