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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆書籍発売中
第二章 料理人は異世界で先生に

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40.料理人、料理指導をする

 翌日、俺は朝からキッチンを借りて準備をしていた。


「本当に鶏の骨まで煮てもいいのか?」

「コンソメ作りには必要だぞ」


 隣で料理人はメモをしながら、心配そうに眺めていた。

 コンソメの基本は香味野菜として、たまねぎ、にんじん、セロリを入れると、独特の深みと香りになる。

 本来は牛ひき肉と卵白を入れて、不純物を吸着させて、スープ自体を透明にする工程が必要だが、時間と技術がかかる。

 そのため、今回は鶏ガラを入れることで深い味わいにさせながら、ほぼ煮込むだけの簡単コンソメを作ることにした。

 これならここの料理人でも作れるだろう。


「冷蔵庫で保存はできるけど、肉の出汁だからなるべく早めに使い切るんだぞ?」

「えーっと、出汁ってなんだ?」


 やっぱり出汁という考えがないのだろう。

 海外では昆布や鰹節、椎茸などの旨味に気づきにくいと聞くが、肉や骨、野菜の旨味はしっかりと理解している。

 そんな感覚だと思っていたが、そもそも出汁を知らないとはね……。


「んー、旨味の土台というのか味の基本だな。これに様々な味が重なっていくんだが、出汁にも種類があるからな」 


 コンソメやブイヨンが出汁と言われると、少し疑問を感じる。

 ただ、洋風の出汁とも言われているから、広義の意味では出汁で問題ないだろう。

 詳しい話をしても、きっと理解はできない気がする。


「そういえば、パンに強力粉は使わないのか?」

「ここでは薄力粉で作ることになってるぞ。まぁ、領主の中が悪いのも関係しているからな……」

「だからパンケーキみたいなパンだったのか」


 パンを食べた時にどことなくパンケーキのように感じた。

 どうやら隣の領主とは関係性があまり良くないため、強力粉を使うことがないらしい。

 パンは基本的に強力粉をベースにすることが多いからな。


「んー、ならパンは水分少なめで、表面はしっかり焼いたほうがいいのか」

「パンも料理に合わせて作り替えるのか?」

「そりゃー、そうだろ。何を食べるかで主食も変わってくるし、パン一つでもメインの主菜やスープに合うものじゃないとおかしくなるからな」

「あっ……ああ」


 ここまで考えに差があると、どうすれば良いのか俺にもわからない。

 ただ、一つ言えるのはまずは簡単なものを教えるべきなんだろう。

 まずは簡易コンソメスープが作れれば問題ない。


 ちなみに今日作るメニューはクリームシチュー、ローストビーフ、サラダ、パンとほぼ昨日作ったものと同じメニューだ。

 せっかくなら、どれだけ変わるか感じてもらいたいからな。

 それに特別にデザートも用意するつもりだ。


 その後もずっと料理をしていると、昼頃にはいつものあいつらがやってきた。


『ハルト、お腹空いた!』

「はやく何か食べさせてくれ!」


 相変わらず食いしん坊組が食べ物を求めにきた。

 昨日の夕食も途中で手を止めて、食べるのをやめていたからな。

 

「クレープでも食べるか?」

「それはなんだ?」

「あー、前に食べたトルティーヤに近いやつかな」


 せっかく薄力粉があるならと、クレープ生地を大量に作っていた。

 デザートで用意しようと思っていたのはミルクレープだ。

 単純に俺がクレープを食べたくなっただけだが、せっかくなら見た目を派手にしたかった。

 ただ、それだけの理由だ。


「ちょっと待ってろよ」


 そう言って、俺は野菜を切って、肉を炒めて、調理台の上に並べた。


「これはこのまま食べちゃダメなのか?」

『オイラ、待てないぞ!』


 お互いに左右に体を揺らしてソワソワしている食いしん坊にクレープ生地を渡す。

 ついでに料理人もチラチラと見ていたので、一緒にお昼ご飯を食べることにした。


「まずはこの生地にソースを塗ります」


 ソースは二種類。

 一つ目は簡単に作れるオリーブオイルと塩胡椒のソースだ。

 二つ目はキッチンカーから材料を持ってきているからできた照り焼きソース。


「そこに野菜と肉を載せて、あとは巻いて食べるだけだ」


 ちゃんと三角形になるようにクレープを包んでいく。

 具材を入れすぎると巻けないのが、クレープではよくある――。


「なんか食いにくいぞ……」


 やはりゼルフは具材をてんこ盛りに入れていた。


『クゥエエエエ! やっぱりハルトのご飯が一番だ!』


 俺はできたものを白玉に渡すと、美味しそうに食べている。


「こうやってみんなで楽しみながら食べる料理もあるから、覚えておくといいかもな。まぁ、貴族では使わないだろうけど……」

「……貴族では……こんなこと……やら……ないからな」


 口いっぱいにクレープを頬張り、もぐもぐとしながらゼルフは話していた。

 そのせいで口から野菜がポロポロと落ちてきている。


「お前は話すか食べるかどっちかにしろよ?」

「なら黙る」


 そう言ってゼルフは黙々と静かに食べていた。

 簡単にできるものなのに本当に大袈裟だ。

 だけど、ゼルフと白玉を見ていると、料理人として嬉しい。


『ハルト、おかわり!』

「あー、はいはい。本当にお前らよく食べるよな」


 すぐに白玉のクレープを巻いていく。

 俺は一つで食べただけで十分だったのに、ゼルフと白玉はどれだけ食べれば気が済むのだろう。


「そういえば、口に合ったか?」


 一口食べてから、ずっと静かな料理人に声をかける。


「なんか……本当に俺の料理とは別物だな……」

「まぁ、美味しいものをたくさん食べて、どうやったら美味しくなるのかを考えて勉強するべきだな」


 きっと俺の料理は見たこともないし、食べたことのない味なんだろう。

 初めて食べる料理って俺もワクワクしていたからな。

 少しでも盗もうという気があれば、料理は自然と美味しくなる。

 この料理人も少しは成長してくれれば良いと、俺は成長を願っている。


「『おかわり!』」

「おいおい、まだ食べるのかよ……」


 食いしん坊組もどんどん成長して、将来が心配になってきた。


お読み頂き、ありがとうございます。

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