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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆書籍発売中
第二章 料理人は異世界で先生に

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39.料理人、ゼルフを揶揄う

『ハルト、オイラを置いて行くなんてひどいぞ……』

「あっ……食べられてなかったんだね?」

『クゥエエエエエ!』


 白玉が怒って突いてくる。

 あの料理人とショートより、出会った当初の俺やゼルフの方がよっぽど食べようとしていた。

 そんなことを思いながら、部屋に戻るとゼルフは窓際で黄昏ている。


「なんか様子がおかしくないか?」

『きっと変なもの食べたぞ!』

「あいつならやりかねないからな。その辺の――」

「痛っ!?」

『クゥエ!?』


 気づいたらゼルフは俺たちの頭をコッツンと叩いてきた。

 相変わらず瞬間的に移動するのは心臓に悪いぞ。

 俺には全く見えないからな。


「お前ら、俺を何だと思ってるんだ?」

「食いしん坊」

『同族』


 本当のことを言ったら、もう一発叩かれた。

 少し手加減してくれているのが幸いだろう。

 本気で叩かれたら頭が割れるかもしれないからな。

 ゼルフってさすが極道って思うぐらい力が強い。

 自分よりも大きな魔物に剣が効かないとわかれば、殴りかかる……いや、馬鹿ってことだな。


「ハルト、また何か考えてるだろ?」

「いや、クッキーができたのにゼルフが来ないからさ」

「なぁ!? クッキーができたのか!」


 ゼルフはすぐに部屋から飛び出そうとしているところを俺はすぐに捕まえる。


「今は冷やし中だ」

「なっ!?」


 相変わらずの食いしん坊だな。

 いつものゼルフで俺はどこか安心した。

 ゼルフは再びゆっくりと椅子に腰掛ける。


「怒られてそんなに落ち込んでいるのか?」

「怒られた……? ハルトは俺が怒られたと思っているのか?」


 俺は大きく頷く。いや、俺だけじゃない。

 白玉も体に顔が埋もれるほど頷いている。


「お前らな……はぁー、悩んで損だったわ」

「ゼルフでも悩むんだな」

『オイラより馬鹿だと思ってたのに』


 再びゼルフが近づいてくる前に俺と白玉が逃げる。


「お前ら……!」


 もう何度も叩かれるわけにはいかないからな。

 ただ、ゼルフはどこか嬉しそうに笑って――。


「やっぱりあいつ極道だ!」


 ゼルフの笑いは気持ち悪かった。



 しばらくゆっくり過ごし、夕日が落ちた頃。

 俺たちは領主に呼ばれて一緒に食事をすることになった。

 クッキーを作る時に見ていた料理人が張り切っていたから、きっと美味しいものが食べられるのだろう。

 一応貴族の料理を食べるのは初めてだからな。

 そう思って期待していたが、目の前に出てきたものを見て、俺は呆然とした。


「えーっと……肉料理、パン、クリームスープ、サラダでいいですか?」

「あぁ、俺がしっかり作った最高傑作だ」


 俺だけではなく、ゼルフと白玉もジーッと料理を見つめている。

 ただ、領主とショートから見たらこれが普通なんだろう。

 何と言うのか……。


「見た目と香りからして、あまり美味しそうには見えないんだよな……」


 パンなら香ばしい匂いがするだろうし、クリームスープならシチューのようにとろみがついているはず。

 薄力粉が有名な町なら尚更だ。

 なのにパンはふかふかな感じもないし、クリームスープもシャバシャバだ。

 肉はただ焼いただけに見えるし……。


「じゃあ、いただこうか」


 そう言って、領主やショートは普通に食べている。

 特に何も言わないから、味は美味しいのだろう。


 俺もスプーンでゆっくりとクリームスープをすくう。

 明らかにとろみはないが、美味しいのだろうか。

 恐る恐る口の中に入れる。


「やっぱり思った通りの味だ……」

「どうだ?」

「えーっと……思ったまま伝えてもいいかな?」


 俺は一度領主をチラッと見る。


「気にしなくてもいい。構わないよ」


 領主からの許可が降りたなら問題はないだろう。

 料理人も感想を聞きたそうにしていたからな。


「まずこのスープだが、何かの乳と水がベースになっているよな? コンソメみたいなベースや出汁は入っていないよね? それにせめて胡椒とかスパイスで味を整えているならまだわかるが、野菜の旨みがなければ、ただのまずいスープになってるかな」


 味としては牛乳より少し獣臭さがあるから、羊乳を使っているのだろう。

 チーズやヨーグルト、バターには最適な素材だから、使っていてもおかしくない。

 ただ、羊乳と水だけだと獣っぽい香り、強いコクが前面に押し出される。


「サラダに関しても、ドレッシングとか何もない生野菜だし、肉にもソースやスパイスがない。もう少し一手間かけて――」

「うっ……」


 段々と料理人は震えるように地面を見ていた。

 どうやら言いすぎてしまったようだ。

 ゼルフと白玉からも、視線で言い過ぎだと言われているような気がする。

 さすがにお前たちも食べればわかるだろう。

 俺はゼルフと白玉に視線を向けて勧める。


「うっ……食えたもんじゃないな」

『ハルトのご飯が世界一だ……』


 ゼルフと白玉も食べられず、そのまま手を止めてしまった。


「そうか……俺は料理人としての才能がないのか……」


 いや、才能どうこうより前の町でも思ったが、料理そのもののレベルが低い気がする。

 世界にはそこまで料理に手をかけない国もあるぐらいだからな。


「たぶん才能がないわけじゃないぞ。ちゃんと作ろうとはしているからな」


 しっかりコースのように前菜、スープ、肉料理、パンとしっかり揃ってはいる。


「ほぉ、そこまで言うなら明日にでも作ってもらおうか?」


 領主は俺をみてニコリと笑っていた。


「あっ……やらかしたやつだ……」


 わざと領主は俺に感想を言わせたのだろう。

 さっきまでショートにクッキーが美味しいと聞かされていたからね。

 クッキーを作らされる羽目になったばかりなのに、俺は明日の食事を作らされることになった。

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