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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆書籍発売中
第一 キッチンカーで異世界へ

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28/41

28.料理人、町は深刻な問題に……

 スパイスカレーはすぐに町の住民に広まった。


「お兄ちゃん、明日は何を出すんだ?」

「明日はグリーンカレーにしようかなと」

「グリーンか……。キーマはいつなんだ?」

「キーマはその次ですね!」


 スパイスカレーの種類を毎日変えながら作ったところ、見事に長蛇の列ができるようになった。

 チキンカレー、グリーンカレー、キーマカレー、ダールカレー、ポークカレー、フィッシュカレー、トマトスパイスカレー、和風スパイスカレーと全部で八種類用意した。

 中身の具材と少しだけ味が違うだけで、毎日違うものが食べられるってところが受けが良かったらしい。

 それにスパイスを使ったものに慣れた人たちだからこそ、すぐに受け入れてもらえたってのもある。


「ハルト、飯を食おうぜ!」

『ご飯! ご飯!』


 ゼルフと白玉が嬉しそうにキッチンカーにやってきた。


「お前たちが入ってきても、十分隙間ができたな」


 俺は椅子を取り出し、調理台をテーブルにして残りのカレーを食べていく。

 相変わらずすぐに減っていくカレーの量に驚いて声も出ない。


「今日はいくら売れたんだ?」

「11万ルピぐらいだったかな」

「えーっと……70杯ぐらいか?」

「まぁ、そんなところだね」


 たくさん売れるようになり、売り上げも安定してきた。


「ハルトは食べないのか?」

「俺はちょっといいや」


 俺はテーブルに手を置いて、そのまま体を休ませる。

 カレーも3口程度食べて満足した。

 むしろ、毎日元気にご飯を食べるゼルフと白玉を見ている方が元気になるからな。


『そろそろ休んだ方がいいと思うぞ!』

「俺もそう思う。体が一番大事だからな」


 ゼルフと白玉の言う通り、毎日仕込みと販売に追い込まれすぎて、体の疲れが取れていない。

 ただ、今キッチンカー販売を辞めてしまったら、お客さんは来なくなるんじゃないか。

 そう思って中々休業日を作れないでいる。

 これが社畜に慣れた影響ってやつだろう。


「ごめん、先に休んでるから。誰か来たら起こして」


 俺はそう伝えて、運転席に戻ることにした。

 前よりも広くなり、ゆったりと休めるようになった。

 だが、大きなベッドではないから、尚更疲れが取れにくいのもある。


 ちなみにキッチンカーはここまでパワーアップしてしている。


【ステータス】

 キッチンカー Lv.5 ポイント:2

 ナビゲーション 1

 自動修復 3

 キッチンカー拡張 3

 調理器具拡張

 電力拡張ユニット 2

 冷蔵/冷凍拡張ユニット 

 給水タンク拡張 2

 排泄拡張 2

 ディスプレイ


 ◇次のレベルアップ条件:1日売上 200,000円到達(・・)


 一度レベルアップさせるために、かなり売り込みをしたが、それでも20万ルピの壁は高かった。

 100杯以上売るってなると、お客さんが何回も来ないといけなくなる。

 それに仕込みの量がかなり増えるから、さすがに俺一人だとキッチンカーで作り続けるのは限界があった。

 大きなキッチンがあればいいが、キッチンカーの中では工程を何回かに分けないといけないからな。


――トントン!


 体を休めていると、ゼルフが呼びにきた。

 何か問題があったのだろうか。


「また腹が減ったのか?」

「カレー3杯も食ったから今はいらないぞ?」

「相変わらず食べたね……」


 大盛りのカレー3杯も食べて、太らないゼルフはどうなっているのだろう。

 毎日走ったり、剣の素振りをしているのを見ているが、それだけで体型がキープできるのか?


「ああ、それで商業ギルドからギルドマスターがハルトに会いたいって――」

「おぉ、店主はここにいましたか!」


 ゼルフを押し出すように、ちょび髭が目立つ初老が扉越しに挨拶してきた。


「ちょっと待ってください」


 俺は靴を履いて運転席から降りる。

 その時もギルドマスターは、キッチンカーの中を興味深そうに見ていた。


「私、この町の商業ギルドのギルドマスターをしているナリ=キンと申します」


 名刺交換のように紙を渡された。

 ただ、名前が気になってそれどころじゃない。


「くくく、頂戴いたします」


 なんて書いてあるのかはわからないが、きっと名前が書いてあるのだろう。

 ただ、異世界の名前はこんなにも独特なのか……。

 必死に平常心を保つように落ち着かせる。


「ハルトと申します。今、名刺の持ち合わせがなくてすみません」


 俺がその場で謝ると、ギルドマスターは驚いた顔をしていた。


「ハルトさんはどこか有名な料理長でもされていたんですか?」

「なんでですか?」

「いやー、名刺を持っているのは格の高い料理長ぐらいですからね」


 どうやらこの国では名刺はあまり一般的なものではなく、普通は名刺を渡されても何かわからないような反応をするらしい。

 その場で名刺がわかるってことは、それだけすごい料理人と判断できるってことだ。

 まさかそんなところで試されているとは思わないだろう。


「それでこんなところにギルドマスターが来たのは何かあったんですか?」

「いやー、ハルト様には大変お伝えづらいのですが……」


 ギルドマスターは若干気まずそうな表情をしていた。


「町の飲食店を経営する方たちから苦情が多くきていまして……」

「苦情ですか?」

「はい」


 俺は何か悪いことでもしたのだろうか。

 隣にいるゼルフも首を傾げており、全く想像がつかない。


「実はここのスパイスカレーを食べたお客さんが、他の店は不味すぎて食べられないと……」

「「はぁー」」


 それを聞いて俺とゼルフは大きなため息をついた。

 それはギルドマスターも同じだった。


「私もさすがに自分の店を見直してみたらとは言いましたよ? 商売は自分たちで切り開くものですし、自己責任ですからね! ただ――」

「ただ……?」

「この町にある飲食店の9割がお金を稼げなくて閉店しそうな勢いなんです」


 クレーム問題が思ったよりも町にとって深刻な影響になっていることを知った。

お読み頂き、ありがとうございます。

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よろしくお願いします(*´꒳`*)

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