23.料理人、計算の必要性を知る
「お前ら起きるぞー!」
俺は今日も元気に起きて朝から仕込みの準備をする。
昨日、キッチンカーが修復されてから初めて販売をしたが、売り上げは無事に3万ルピを達成した。
【ステータス】
キッチンカー Lv.3 ポイント:3
ナビゲーション 1
自動修復 1
キッチンカー拡張 2
調理器具拡張
電力拡張ユニット 1
冷蔵/冷凍拡張ユニット
給水タンク拡張 1
排泄拡張
ディスプレイ
◇次のレベルアップ条件:1日売上 50,000円到達
その結果、次は5万ルピと単価が高いものじゃないとレベルアップができなくなってきた。
昨日のチキン南蛮セットは一食1500ルピだから、約34食売らないといけない。
ただ、売れたのは20食ちょっととレベルアップには倍近く必要となる。
「んー、値段を上げるか場所を変えるってのも一つの案だよな」
それに意外と大変に思ったのが、1日の売り上げってところだ。
日が変わってしまったら、全てがリセットされるからな。
それにキッチンカーが町の外に置いてあるため、買いにくるのはほとんどが外に仕事へ出る人たちばかりだ。
初日に気になって外に出てきた人はいるが、基本的には町の外に出ることはない。
「魔物を狩ってくる」
『オイラも手伝ってくるー』
ゼルフと白玉は眠い目をこすりながら、ネフィル山の麓に向かって歩きに行った。
「いってらっしゃい!」
その理由は外に魔物が出てくるからだ。
ただでさえ、強い魔物が生息しているネフィル山が近くにあるため、町の人の警戒心は強い。
わざわざ危険を犯してまで外には買いに来ないだろう。
そう思うと、初めて町に来た時に人の列ができていたのは奇跡に近い。
「俺も何か材料を探しにいくか」
ゼルフと白玉がいない間、俺は町の中へ買い出しに行くことにした。
「おっ、兄ちゃん。魔導具を放置しててもいいのか?」
声をかけてきたのは門番だ。
門の近くにキッチンカーが置いてあるため、門番からは見えている。
「あそこに置いていたら邪魔ですかね?」
「いや……それはないと思うけど、取られやしないか?」
さすがにキッチンカーが盗まれることはないだろう。
鍵も外しているから運転もしないし、近くに門番がいる。
「大丈夫だと思います。あれなら……」
俺は門番に近づきコソッと呟く。
「あとで差し入れを持ってくるので見ててください」
「ははは、俺に任せろ!」
門番は嬉しそうに自身の胸を叩いた。
門を管理しているため、基本的には持ち場から離れることはできない。
一緒に管理してもらえれば、こちらもありがたい。
隣から良い匂いが漂ってくるのに食べられないって一番苦痛を感じる仕事なのかもしれない。
キッチンカーを門番に任せた俺は町の中で使えそうな食材を探していく。
「売ってるものは日本とそこまで変わらないのか……」
形がどこか歪だが、野菜や果物は見たことあるものばかりが並んでいる。
「兄ちゃん、うちの野菜は採れたて新鮮よ」
「これっていくらですか?」
「玉ねぎは1つでも2つでも100ルピよ」
値段はそこまで日本と変わらないが、特徴的なのは10円単位のものが売っていないということだ。
例えば、じゃがいもが1つ50ルピでも、100ルピで売られている。
にんじんなんて正確な値段だと1本30ルピだ。
何個持って帰るのかは客が決めることになっているらしい。
もしかして、商業ギルドに加入する時に受けたテストが必要になるのはこういう場面なんだろう。
何種類も野菜を買ったら、店主はその場ですぐに暗算しなければいけない。
俺でも10種類以上置いてある野菜を30個近くバラバラに買われたら混乱しそうだ。
「えーっと……じゃがいも7個に玉ねぎ3つ、にんじん4本に……トマトが3つもあって……」
実際に店主のおばさんが隣で頭を抱えながら計算していた。
終いにはチラチラと客と一緒に俺を見つめてくる。
「全部で1600ルピですよ」
「おお、兄ちゃん助かったよ!」
知らない人を簡単に信用しても良いのかと、少し心配にはなるが町自体に大らかな人が多いところなんだろう。
「ちなみにじゃがいもはあと1個とにんじんは2本持っていっても値段は同じですよ」
「なら持っていこうかしら!」
俺の言葉にお客さんは嬉しそうにしていたが、おばさんには睨まれてしまった。
流石に居心地が悪くなった俺はそそくさと野菜店から離れていく。
その後も色々と町の中を見ていくと、やはり気になったのはスパイス店だ。
飲食店から様々な匂いが漂っていたが、スパイス店に置いてあるものは、すぐに数えられないほどだった。
店主も数えられないと言うほどだからね。
異世界特有のスパイスも見つけられたら、それこそ独特な料理を作ることができるのだろう。
そんなことを思いながら歩いていると、突然町中に大きな音が聞こえてきた。
――ピーピーピーッ!
俺だけではなく、町の人たちが揃って警戒をしていた。
「今の音ってなんですか?」
「いや、俺にもわからねーぞ。小さいころからこの町にずっと住んでいたが聞いたことねぇ」
長いこと町に住んでいる人が聞いたことのない音に俺は嫌な胸騒ぎがした。
「ありがとうございます!」
俺は礼を伝えて、急いでキッチンカーの元に戻る。
だって、町の人が聞いたことのない音って言ったら、きっと俺たちに関わっていることだからな。
ただ、町の外に出ようとしたら、なぜか人だかりができていた。
「すみません! 通らせてください!」
人だかりをかき分けていくと、なぜか門番に捕まっているゼルフと白玉がいた。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします(*´꒳`*)




