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追放された下級騎士、断罪された悪役令嬢に拾われて成り上がり ~共に復讐しながら最強夫婦になりました~  作者: 妙原奇天


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第53話 理と愛

闇と光の境界


 夜は既に夜ではなかった。

 空には星も月もなく、ただ帝王の闇と最強夫婦の炎がせめぎ合っていた。

 地平線が歪み、大地が逆巻く。

 黒と紅が混ざり、光と影の境界が揺らぐ。


 帝王シグマールが静かに歩を進めた。

 その一歩ごとに大地が沈み、闇が花のように咲く。

 「世界は力で均衡を保つ。強き者が支配し、弱き者はその恩恵を受ける――それが理だ」


 アレンが剣を構える。

 「なら、その理を俺たちが壊す!」

 クラリスが杖を掲げる。

 「愛のない理なんて、ただの支配よ!」


帝王の理


 シグマールの瞳が闇のように深くなる。

 「愛か……。人は愛を口にし、やがて裏切る。

  愛が戦を生み、愛が王を狂わせる。

  愛こそ最も脆く、最も醜い」


 クラリスが歯を食いしばる。

 「それでも、私たちは愛を選ぶ!」

 「愚かだ」

 「ええ。だからこそ美しいのよ!」


 クラリスの紅蓮が燃え上がり、帝王の闇を照らした。

 炎が夜を裂き、戦場に再び風が戻る。


炎の告白


 クラリスはアレンの背を見つめ、息を吸い込んだ。

 「アレン。私ね、最初はあなたを拾った時、ただ“利用”しようと思ってたの。

  でも、あなたが剣を握って立つたびに、私も立ちたくなった。

  あなたが笑うたびに、明日を信じたくなった。

  ――だから、今度は私が支える番!」


 紅の杖が光を放ち、炎が翼を描いた。

 アレンはその炎を背に受け、剣を握る。

 「俺も同じだ。お前がいたから、戦える。

  お前が笑うから、生きたいと思える。

  それが、俺たちの力だ!」


理と愛の衝突


 帝王が掌を広げ、黒い竜が咆哮と共に出現した。

 大地を覆う闇の化身。

 その口から放たれる一撃は、世界を焼き尽くすほどの黒。


 だが、アレンとクラリスは怯まなかった。

 「――《紅蓮結界・共鳴式》!」

 炎が二人の間に陣を描き、剣と杖が重なった瞬間、紅と銀が融合する。


 「《双輪一閃》!」

 紅銀の光刃が竜の咆哮を貫いた。

 闇が裂け、黒い巨影が崩れ落ちる。


 シグマールが初めて驚愕の表情を見せた。

 「人の力で……この理を断つというのか」


帝王の問い


 帝王は一歩退いた。

 「……なぜだ。

  なぜ貴様らはここまで立つ。

  滅びの縁に立ちながら、なぜまだ笑う」


 アレンが息を切らしながら答えた。

 「俺たちは……強いからじゃない。

  “弱さ”を知ってるから、立てるんだ!」


 クラリスが続ける。

 「あなたが信じる理は、傷つかない世界の理。

  でも私たちは、傷つきながら、それでも誰かを信じる世界を選ぶ!」


 シグマールの瞳がわずかに揺らいだ。


愛の光


 クラリスが杖を地に突き、最後の詠唱を紡ぐ。

 「――《紅蓮終焉・愛の方程》」


 紅蓮が花のように広がり、空を覆う闇を焼く。

 炎は兵を包み、傷を癒し、絶望を光に変えた。


 帝王は光の中で立ち尽くしていた。

 その顔には怒りでも恐れでもなく、わずかな微笑があった。

 「……これが、愛か」


 そして、闇が静かに崩れた。

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