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追放された下級騎士、断罪された悪役令嬢に拾われて成り上がり ~共に復讐しながら最強夫婦になりました~  作者: 妙原奇天


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第49話 出口の牙

突破の喜び


 紅蓮の炎が夜を裂き、銀の剣が突破口を押し広げる。

 兵たちが次々に駆け抜け、籠の外へと躍り出た。

 歓声が溢れた。

 「抜けたぞ!」「これで外と繋がる!」


 アレンは先頭で剣を振り払い、振り返った。

 クラリスが杖を杖にして肩で息をしている。

 「……大丈夫か」

 「ええ……まだ、立てる」

 紅の瞳が揺れながらも、確かに輝いていた。


不意の沈黙


 しかし、その瞬間だった。

 突破口の先に広がる平原から、すべての音が消えた。

 風も、草のざわめきも、兵の足音も。

 ただ一つ、重い蹄の響きだけが、ゆっくりと近づいてきた。


 「……来る」アレンが低く呟いた。

 平原の闇が割れ、黒銀の騎士たちが現れた。


皇帝直下の魔導騎士団


 黒甲冑に紅の紋を刻んだ騎士団。

 全員が騎馬に跨がり、手に持つ槍と剣は魔力を帯びていた。

 背後には漆黒の旗。

 それは帝国の象徴、皇帝直下の精鋭――「魔導騎士団」だった。


 ギルバートが歯噛みする。

 「親衛かよ……いや、それ以上か」

 エリナが息を呑む。「この圧……一人ひとりが軍勢に匹敵する」


 彼らの先頭に立つのは、漆黒の兜を外した一人の女騎士。

 長い銀髪が月光に揺れ、瞳は冷たく澄んでいた。

 「帝国親衛筆頭、ラクリマ・ヴァルハルド」

 その声は夜気を凍らせる。

 「ここを越えようとする者、すべてを討つ」


最強夫婦の挑戦


 アレンが一歩前に出た。

 「……なら、俺たちが討たれる前に、お前たちを斬る」

 クラリスが杖を掲げる。「炎は消させない。未来へ燃やす!」


 最強夫婦が前へ出ると、兵たちの声が続いた。

 「我らも行くぞ!」

 「最強夫婦に続け!」


 だが次の瞬間、ラクリマが槍を振った。

 青白い稲光が走り、十数名の兵が一瞬で吹き飛ばされる。

 「……強すぎる」ミーナが声を震わせた。


刃と炎の共鳴


 アレンが飛び込む。

 ラクリマの槍を銀の剣で受け止めると、凄まじい衝撃が大地を裂いた。

 互いの刃が火花を散らし、空気が震える。


 クラリスはその背を守るように詠唱した。

 「《紅蓮連環・第五式》!」

 炎の鎖が敵騎士の足元を絡め取り、馬を怯えさせた。

 だが魔導騎士たちは怯まず、呪文を重ねて炎を断ち切る。


 「全員が術者で、全員が剣士……!」

 クラリスの頬を汗が伝う。

 「これが……帝王直下」


折れない心


 アレンはラクリマの槍を受け流し、逆に剣を斜めに叩き込む。

 火花と共に銀と黒がぶつかり合う。

 「……強いな」ラクリマが静かに言った。

 「だが、俺たちは負けない!」アレンが叫ぶ。


 背後で兵たちが声を合わせる。

 「最強夫婦に続け!」

 「未来は俺たちのものだ!」


 その声が、折れそうな心を繋ぎ止める。

 炎と剣が共鳴し、紅と銀が夜を照らした。


帝王の視線


 遠くの丘で、帝王シグマールは戦況を見下ろしていた。

 「……良い。英雄と呼ばれるに相応しい」

 しかし、その瞳はまだ余裕を宿していた。

 「だが、英雄が英雄であるのは――死ぬその瞬間までだ」


 彼の手がわずかに動く。

 闇が揺れ、さらなる影が迫ろうとしていた。

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