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追放された下級騎士、断罪された悪役令嬢に拾われて成り上がり ~共に復讐しながら最強夫婦になりました~  作者: しげみち みり


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第47話 帝王の一手

前夜の静けさ


 王都の外壁に沿って、松明が等間隔に灯されていた。

 突破決行を明日に控え、兵も民も慌ただしく準備を進めている。矢の束、槍の柄、干し肉の包み。

 すべてが「明日」という一点に積み重ねられていた。


 塔の上で、アレンは鎧紐を締めながら遠い黒旗を睨んだ。

 「帝国は俺たちの動きを読んでいる。……必ず罠がある」

 隣でクラリスが紅のマントを翻す。「だからこそ、私たちで突破口をこじ開けるのよ」


 エリナが救護所から戻ってきた。

 「祈りは尽きない。でも神にすがるだけじゃなく、人の手でも明日を繋がねばならない」

 ミーナは薬包を抱えながら、「眠れなくても、体は横にしておけ」と無理やり笑ってみせた。

 誰もが不安を知っている。けれど、その不安を共有できるからこそ、心は折れなかった。


帝国本陣


 一方、帝国の大天幕。

 シグマールは玉座に腰掛け、夜の帳を透かして王都を見ていた。

 「突破を選んだか。人の愚かさとも、強さとも言える」


 その横で宰相セイルが深く一礼する。

 「陛下、ここで“帝王の一手”を」

 「よい。出すとしよう」


 シグマールが掌を開くと、黒曜石の駒が盤上に散らばる。

 「柱は囮で十分働いた。次は“籠”だ。……街ごと閉じ込めよ」


 セイルが静かに頷く。

 「承知しました。――影部と親衛を使い、“動く檻”を」


 夜空に黒い線が描かれ始める。

 王都の周囲を覆うように、黒柱の残骸と新たな陣が結びつき、目に見えぬ壁を築いていった。


軍議の決断


 翌朝。

 鐘楼に駆け込んだ斥候が叫んだ。

 「報告! 帝国の陣が動いています! 包囲が縮まっている!」


 地図の上に石が置かれる。

 外郭を取り巻く黒い輪が、じわじわと王都を締め上げていた。

 「突破口を作る前に、籠を作る気か……!」


 将たちが顔を歪める。

 「まだ行けます!」ギルバートが声を張った。「外の援軍も近づいてる。突破しかねぇ!」

 「だが籠が完成すれば、一度に出られるのは数千規模。全軍は無理だ」

 魔導師長が震える声で言った。


 広間の空気が凍る。

 ――突破か、籠に閉じ込められて全滅か。


 その中で、クラリスが前に出た。

 「なら、私が“火口”を作るわ」

 「火口?」

 「黒柱の残骸は地脈を塞いでいる。それを逆に利用する。熱を集中させて一点を爆ぜさせれば、籠に穴を空けられる」


 アレンは頷いた。

 「その穴を、俺たちが剣で広げる。……それしかない」


最強夫婦の誓い


 夜。

 決行の前、アレンとクラリスは再び塔の上に立っていた。

 王都の灯がまばらに瞬き、遠く黒の環がじわじわと近づいている。


 「怖い?」クラリスが問いかける。

 「怖いさ。でもな――」アレンは剣を握り、彼女の手を取った。「怖さより大きなものを持ってる。お前と一緒に掴む未来だ」

 クラリスは紅の瞳を潤ませて笑った。「私も。あなたとなら、炎は何度でも燃やせる」


 二人は静かに唇を重ねた。

 その短い誓いは、兵たちが見ることのない場所で交わされた。

 けれど、翌日を支える確かな力となった。


帝王の一手、動く檻


 翌暁。

 帝国の陣が一斉に動いた。

 黒柱の残骸と新たな陣線が繋がり、巨大な環が王都を囲む。

 空が揺れ、風が止まり、街全体が“籠”の中に沈んだ。


 「……動く檻」クラリスが息を呑む。

 「帝王の一手だ」アレンは剣を抜いた。

 「だが、籠なら破れる。俺たちの炎と剣で!」


 最強夫婦は視線を交わし、突破戦へ向けて駆け出した。

 その背に、兵たちの声が続く。

 「最強夫婦に続け!」

 「未来を掴め!」


 王都全軍が、黒い籠に挑み始めた。

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