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追放された下級騎士、断罪された悪役令嬢に拾われて成り上がり ~共に復讐しながら最強夫婦になりました~  作者: しげみち みり


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第39話 黒鉄の巨将

 轟音とともに、漆黒の甲冑を纏った巨将が戦場に姿を現した。

 黒鉄で作られた鎧は陽を遮るかのように重厚で、手にした戦斧はまるで山をも砕く巨大な刃だった。

 兵たちがその圧に震え、誰一人近づこうとできなかった。


「帝国近衛軍将軍――黒鉄のヴァルグ」

 クラリスの紅の瞳が、鋭く彼を捉える。

「十万を率いる帝国軍の中枢……ここで討たねば、勝機はない」


 アレンは剣を握りしめ、前へと歩み出た。

「なら、俺がやる」


 その声は揺るぎなく、兵も民も思わず息を呑んだ。

――再び、英雄と巨将の一騎打ちが始まろうとしていた。


巨斧と銀剣


 ヴァルグが戦斧を掲げた瞬間、空気が震えた。

 次の瞬間、地を割るような斬撃がアレンに迫る。


「うおおおおっ!」

 アレンは剣を振り上げ、衝撃を正面から受け止めた。


 金属と金属がぶつかり合い、雷鳴のような轟音が戦場に響く。

 アレンの足元の石畳が砕け、膝が沈む。

「……っ、重い!」


 ヴァルグは嘲笑を浮かべた。

「貴様がシグルトを討ったという男か? この力を止められるなら、試してみよ!」


 斧が横薙ぎに振るわれ、空気が裂ける。

 アレンは身体を捻り、間一髪で避けたが、その衝撃だけで城壁の一部が崩れた。


「馬鹿な……! 一撃で石壁が……!」

 兵士たちが絶望の声を漏らす。


 だが、アレンは剣を構え直し、静かに答えた。

「斬れぬ壁を斬れるようになるために、俺はここまで来た」


戦場を制御する王妃


 一方、クラリスは魔導陣を広げ、戦場全体を俯瞰していた。

「北門、圧されているわ! 弓兵を回して!」

「西側は森を使え! 遊撃隊を伏せて奇襲を仕掛けなさい!」


 矢が飛び交い、兵が倒れていく。

 その中で、クラリスの指揮は迷いなく、兵たちを導き続けた。


「王妃様の声がある限り、戦える!」

「信じろ! 最強夫婦だ!」


 兵の心は再び奮い立ち、混乱は秩序へと変わった。


巨将との死闘


 剣と斧のぶつかり合いは、まるで大地そのものが震えているかのようだった。

 アレンの剣は速さを武器に、ヴァルグの斧は重さを武器に。

 速と重が交錯し、戦場の空気を揺さぶった。


「力比べでは勝てぬぞ、小僧!」

 ヴァルグの斧がアレンの肩を掠め、血が飛ぶ。


 だが、アレンは倒れない。

「俺には重さを支える理由がある!」


 銀の剣が閃き、ヴァルグの兜に傷を刻む。

 それでも巨将は怯まず、笑った。

「面白い……! ならばもっと潰す!」


 斧が振り下ろされ、地面に巨大な穴が開いた。

 爆風で兵たちが吹き飛ぶ中、アレンは踏みとどまり、剣を突き上げる。


 火花が散り、二人の力が拮抗する。


民衆の叫び


 その姿を見た民衆が叫んだ。

「王が戦っている!」

「退くな! 王都を守れ!」


 農夫も商人も、鍬や槍を手に加勢した。

 民と兵が一体となり、帝国軍の波を押し返し始めた。


 クラリスはその光景を見て、胸に熱いものが込み上げた。

「……この国はもう、ただの追放者の国じゃない。希望を選んだ人々の国よ」


決着の一撃


 アレンは深く息を吸い、クラリスを振り返った。

「クラリス! 力を貸してくれ!」


「もちろんよ!」

 クラリスが杖を掲げ、炎の魔力を剣に注ぐ。


 銀の剣が紅蓮の光を纏い、轟音と共に燃え上がった。

 アレンが咆哮する。

「――これが俺たちの力だ!」


 振り下ろされる斧と、振り上げられる紅蓮の剣。

 その瞬間、戦場全体が息を呑んだ。


 轟音と閃光。

 黒鉄の甲冑が裂け、ヴァルグの巨体が後方へ吹き飛ぶ。


 地面を砕き、巨将は膝をついた。

「……ば、馬鹿な……この力が……」


 アレンは剣を突きつけ、静かに言った。

「最強夫婦を侮った報いだ」


 その言葉と共に、ヴァルグは倒れ伏した。


勝利の雄叫び


 戦場に沈黙が走り、やがて轟音のような歓声が沸き起こった。

「王が巨将を討った!」

「最強夫婦が勝った!」


 帝国軍は動揺し、前線は大きく崩れた。

 兵たちは退き、追放者の国の旗が翻る。


 アレンは息を切らせながらも剣を掲げ、クラリスと視線を交わした。

「これで……一歩前進だ」

「ええ。でも帝国はまだ終わらない。ここからが本当の戦いよ」


 燃える空の下、二人の誓いはさらに強く刻まれた。

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