表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/56

第3話 共闘の誓いと初陣

 荒れ果てた辺境の村に、新しい風が吹き始めていた。

 アレンとクラリスが狼の群れを退けた翌日。

 村人たちはまだ半信半疑ながらも、二人の存在を「希望」として見つめ始めていた。


「村を守ってくださると……本当に信じていいのですか?」

 白髪交じりの老人が、深く頭を下げて問う。

「俺たちがここにいる限り、この村を見捨てはしない」

 アレンはそう答えた。かつて騎士として誓った忠義の言葉を、今は“辺境の村”へと向ける。


 だが、安堵は長く続かなかった。


 ――その日の昼。


 見張りに立っていた少年が、慌てて駆け込んでくる。

「た、大変だ! 森から武装した連中がこっちに!」


 村人たちがざわめく。盗賊だ。

 この辺境に住み着き、弱き村を狙って略奪を繰り返してきた連中に違いない。


「来たわね」

 クラリスは冷ややかな笑みを浮かべた。

 彼女にとっても、これは“試練”だった。貴族の身分を失った自分が、力で立つことを証明する場。


「アレン、いける?」

「むしろ好都合だ。ここで俺たちの覚悟を見せつける」


 やがて、十数名の盗賊が村の入口に現れた。

 粗末ながらも鋭い剣や槍を携え、笑いながら村人を威嚇する。


「へっ、また骨と皮だけの連中かと思ったら……おやおや?」

 先頭の男がにやりと笑う。

「見慣れねぇ顔がいるじゃねぇか。綺麗なお嬢ちゃんに、でかい剣を持った若造……。ちょうどいい、荷物と女を置いていけ」


 その下卑た笑い声に、村人たちは顔を青ざめさせる。

 だが、アレンとクラリスは微動だにしなかった。


「――俺たちの最初の相手としては、少々格が落ちるな」

 アレンが剣を構え、低くつぶやく。

「落ちるどころか、泥にまみれた害虫よ」

 クラリスの声は凛として響いた。


 盗賊たちが怒号を上げ、一斉に襲いかかる。


 アレンが前に出た。

 剣閃が走り、二人、三人と盗賊が吹き飛ぶ。騎士団で磨いた剣技は健在であり、むしろ“自由”を得たことで研ぎ澄まされていた。


「なっ……強ぇ……!?」

「うろたえるな! 数で押せ!」


 だが、数の優位を頼みにしていた盗賊たちの背筋を凍らせたのは、次の瞬間だった。


「《封縛の連鎖》」


 クラリスが呪文を唱えると、地面から黒い鎖のような魔力が伸び、盗賊の足を次々と絡め取った。

 貴族社会で“悪役”と呼ばれた令嬢の知略は、魔導の才と共に生きていたのだ。


「動けねぇ……!」

「足が……!」


「今よ、アレン!」

「おうっ!」


 アレンが縛られた盗賊たちを次々と叩き伏せていく。

 鎖に囚われた敵は回避もできず、ただ次々と地に沈むだけだった。


 やがて、残った数名が恐怖に駆られ、森へと逃げ出した。


「ひ、ひいい! 化け物どもだ!」

「もう近づくな! 二度と来るか!」


 村に、静寂が戻った。

 アレンが剣を収めると、クラリスが軽やかに微笑む。


「ふふ……初陣にしては、悪くない戦績じゃない?」

「お前の補助があったからだ。俺一人じゃ押し切れなかった」

「当然でしょ? だって私たちは、共闘するんだから」


 そのやり取りに、村人たちは目を見開き、やがて歓声を上げた。


「すごい……本当に盗賊を追い払った……!」

「この村に……救世主が……!」

「いや、救世主なんて生ぬるい! 英雄だ!」


 震えていた老人が、涙を流しながら二人に跪いた。

「どうか……どうか、この村を導いてください!」


 アレンとクラリスは顔を見合わせる。

 互いの瞳には、同じ光が宿っていた。


「――なら決まりだな」

 アレンは剣を掲げ、宣言した。

「この村を拠点に、俺たちは立ち上がる!」


「ええ。そして必ず、王都に復讐を果たすわ」

 クラリスの声は誇り高く響き渡る。


 荒れ果てた辺境の村に、新たな秩序と力が芽吹いた瞬間だった。

 追放された騎士と、断罪された悪役令嬢。

 二人の共闘が始まった今、この村はもうかつての“廃墟”ではない。


 ここから、最強夫婦の逆襲が幕を開ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ