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第25話 連合軍の影

 夜明け前、王都に駆け込んだ伝令の顔は蒼白だった。


「報告! レオニアが――大陸諸国を糾合しました!

 “対追放者連合軍”が結成され、二万の兵が動き出したとのこと!」


 会議の間がざわめきに包まれる。

 二万――王都と同盟国ベルシュタインの兵を合わせても、数は一万に届かない。

 しかも周辺の小国の多くが、恐怖に駆られてレオニアに従ってしまったという。


動揺と決意


 重臣たちは一斉に口々に叫ぶ。

「二万の兵など、とても受けきれませぬ!」

「早急に和睦の道を探るべきでは――」


 だがクラリスは紅の瞳を鋭く光らせ、手を振り上げて声を切った。

「和睦? 私たちを“悪役”と決めつけた王都に戻るというの?

 ここまで築き上げたものを、すべて差し出せと?」


 沈黙が落ちる。


 アレンが剣の柄に手を置き、静かに告げた。

「俺はもう、誰にも跪かない。二万が来ようと、俺たちは剣を取る」


 その言葉に、兵たちの目が燃え上がった。


作戦会議


 地図の上に駒が並べられる。

 クラリスが指を走らせながら語った。


「正面衝突では不利。だからこそ、私たちの強みを活かす」


「強み……?」

 ギルバートが眉をひそめる。


「追放者たちは、各地で生き延びてきた者たち。盗賊上がりもいれば、元傭兵もいる。

 正規軍ではなくとも、奇襲・撹乱に長けている」


 クラリスの声が鋭さを増す。

「谷や森を利用した遊撃戦で敵を削り、補給線を断つ。そして最終的に王都の堅固な城壁で迎え撃つ」


 アレンが頷く。

「要するに、敵の数を無意味にすればいいんだな」


「ええ。剣はあなたに任せるわ。私は全軍の流れを導く」


民衆の声


 広場で作戦が告げられると、民衆からどよめきが起こった。

 農夫が鍬を掲げ、若者が槍を取る。


「俺たちも戦う!」

「追放者の国を守るのは、俺たち自身だ!」


 その声に、アレンの胸は熱くなった。

 かつて自分を追放した王都の民衆が、今は自分の旗の下に集っている。

 剣を握る手に力がこもる。


「……必ず守る。今度は俺が、皆を裏切らない」


 クラリスが横で微笑み、彼の手を握った。

「だから最強の夫婦なのよ」


敵陣の動き


 同じ頃、遠く離れたレオニアの野営地。

 巨大な天幕の中、諸国の将軍たちが集っていた。


「追放者どもを放置すれば、大陸の秩序は崩壊する」

「二万の兵で一気に叩き潰すのだ!」


 その中央で、レオニア王が冷笑を浮かべる。

「必ず焼き払え。追放者の国など、一夜の夢に過ぎぬと知らしめるのだ」


 その声に諸将が頷き、戦鼓が鳴り響いた。

 ――大陸最大規模の軍勢が、動き始めていた。


前夜


 夜の王都。

 アレンは城壁の上に立ち、闇に沈む大地を見つめていた。

 やがて来る戦いの足音が、確かに聞こえてくるようだった。


「アレン」

 背後からクラリスの声がした。

 振り返ると、彼女は深紅のマントを羽織り、凛とした眼差しで立っていた。


「大陸が敵に回っても、私たちは共に立つ」

「ああ。俺たちはもう、ただの追放者じゃない。――最強の夫婦だ」


 二人は夜空を仰ぎ、静かに誓いを交わした。

 次に訪れるのは、大陸全土を揺るがす決戦だった。

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