第22話 隣国の侵攻
早朝。
王都の鐘が鳴り響き、兵士たちが城壁へと駆けていった。
朝靄の向こう、草原を埋め尽くす影――それは隣国レオニアの軍勢だった。
槍と旗の群れが地平を覆い、戦鼓が空気を震わせる。
「数は……五千は下らぬか」
ギルバートが大槌を握りしめ、低く唸る。
王都の兵は再建の混乱もあって二千足らず。数で見れば絶望的だった。
だが、兵たちの瞳には恐怖よりも決意が宿っている。
“追放者の国”のために戦うという誇りがあった。
会議の決断
王宮の作戦室。
地図の上に駒を置きながら、クラリスが冷静に口を開いた。
「正面から戦えば勝ち目は薄いわ。けれど王都の地形を使えば、数を削れる」
彼女の指が地図上の峡谷を指す。
「西門の外は狭い谷道。そこに敵を誘い込み、両側から挟撃する。
その間に南門から奇襲隊を出し、補給線を断つ」
アレンが頷き、剣を握りしめた。
「正面は俺が受け持つ。時間を稼げばいいんだな」
クラリスが彼を見据える。
「あなた一人で無茶はしないで。私は常に支えるわ」
二人の視線が重なり、決意が固まった。
出陣
王都の城門が開き、アレンが白銀の鎧をまとって進み出る。
兵たちが剣を掲げ、民衆が祈りを捧げる。
「アレン王! クラリス王妃!」
「最強の夫婦に続け!」
歓声が響き、軍勢が動き出した。
その姿は、追放者や敗者の群れではなく――新しい国の軍隊だった。
激戦
谷道。
レオニア軍の先陣が押し寄せる。
アレンが剣を構え、兵たちを鼓舞するように叫んだ。
「恐れるな! 俺たちはもう捨てられた者じゃない! 誇りを持つ者だ!」
剣が光を帯び、突撃してきた騎兵を一閃。
その力は兵たちの士気を高め、王都軍は奮戦した。
一方で、クラリスは高台から魔導を放ち続ける。
「《封鎖の檻》! 《紅蓮の雨》!」
闇と炎が谷を覆い、敵軍の進撃を阻む。
混乱する敵軍の背後へ、ギルバートと奇襲隊が突入。
補給線を焼き払い、敵陣は一気に動揺した。
追放者の誇り
戦場の中央。
アレンは敵将と刃を交えていた。
「お前が新王か! 追放者風情が!」
「追放されたからこそ分かる! 誰も見捨てない王の意味を!」
一撃。
敵将の剣を弾き飛ばし、アレンの剣が喉元を捉える。
その光景を見て、王都軍の兵たちは歓声を上げた。
「王が勝ったぞ!」
「押せ! 追放者の国の力を示せ!」
勝利と余波
夕暮れ。
戦場に残ったのは、炎と勝利の叫びだった。
レオニア軍は退き、王都は守られた。
だがクラリスは険しい表情を崩さなかった。
「これで終わりじゃない。彼らは必ず再び来る。……今度はもっと大きな力を連れて」
アレンが彼女の肩に手を置く。
「それでも構わない。俺たちなら、どんな敵が来ても超えられる」
夜空に焚き火が燃え上がり、兵たちが「最強夫婦」の名を讃える声が響いた。
王都の戦いは勝利に終わった。
だがそれは、さらなる試練の序章にすぎなかった。