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第17話 王都炎上

 ――その日、王都は燃えた。


 処刑台での逆襲が噂となるのに時間はかからなかった。

 「追放された騎士と断罪令嬢が王都を欺いた」という話は瞬く間に広がり、隠されてきた王家の腐敗や圧政への怒りを呼び覚ましたのだ。


「やはり真実だったのか!」

「断罪は嘘、追放は陰謀――!」

「こんな王都に従っていられるか!」


 怒号と共に火が灯る。

 まずは商人たちが王宮への供物を拒み、次に民衆が石を投げ、やがて炎が街路を覆った。

 王都の空が、紅蓮に染まっていく。


騎士団の出撃


 騎士団副団長グレイゴールは、燃える街を前に剣を構えていた。

「裏切り者どもめ……! 王都を混乱に陥れるとは!」


 彼の背後には数百の兵士。

 鉄の靴音が地を震わせ、炎の光に槍の穂先が煌めく。


 だが城門前には、アレンとクラリス、そして仲間たちが立ちはだかっていた。

 その背後には、追放者や流民、民衆に武器を取った者たち――数こそ劣るが、目に燃える光は騎士団と比べても決して引けを取らない。


「来るなら来い、グレイゴール!」

 アレンが剣を掲げる。

「俺はもう下級騎士じゃない。追放者の国を守る騎士だ!」


炎の戦場


 戦いは一瞬で始まった。


 騎士団の突撃。

 アレンの剣が閃き、先頭の槍兵を弾き飛ばす。

 炎に照らされる剣は光を帯び、古き血の力が戦場全体に轟く。


 クラリスは後方から魔導を放った。

「《封鎖の檻》!」

 闇の鎖が地を走り、騎士団の一部を絡め取る。


「今だ、押せ!」

 ギルバートの鍛えた武具を手にした民兵たちが突撃し、予想外の反撃に騎士団は動揺する。


 ミーナは負傷者を抱え、薬草を煎じながら叫んだ。

「立って! まだ戦えるわ!」


 そして聖女エリナの祈りの光が戦場を包む。

 「勇気を、ここに――!」

 黄金の光が兵たちの心を奮い立たせ、追放者たちは一歩も退かなかった。


対決


 戦場の中心で、アレンとグレイゴールが剣を交える。

 火花が散り、衝撃波が周囲を吹き飛ばす。


「貴様のような下級騎士が、俺に敵うものか!」

「違う! お前こそ騎士の誇りを忘れた!」


 アレンの剣に光が宿り、ついにグレイゴールの盾を叩き割る。

 巨体がよろめいたその隙を、アレンは逃さなかった。


「これで終わりだ――!」

 一閃。

 グレイゴールは剣を落とし、地に膝をついた。


 戦場に歓声が響く。


王太子の暴走


 しかし、城壁の上から響いた声がその歓喜をかき消した。


「まだだ! まだ終わらん!」

 王太子ユリウスが姿を現した。

 その手には、禁じられた古代の魔導具――“黒き宝珠”が握られていた。


「貴様ら追放者ごときが……この俺を侮るなぁぁ!」


 宝珠が砕け、漆黒の瘴気が溢れ出す。

 王都の空を覆う闇が渦巻き、兵も民も恐怖に悲鳴を上げた。


「まさか……禁呪を解き放つなんて!」

 クラリスの声が震える。


 ユリウスの体は闇に飲まれ、巨大な怪物のような姿へと変貌していった。


炎の中の誓い


 アレンは剣を構え直し、クラリスと目を合わせた。

「……ここで止める。どんな闇でも」

「ええ。私たちが最強の夫婦だから」


 二人の力が重なり、剣と魔導が光を放つ。

 炎に包まれた王都で、最終決戦が始まろうとしていた。

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