3 テイマースキルを学ぼう
今日は午前中のグランとの勉強の時間の代わりにモンスターテイムを習うことになった。
講師は屋敷の厩舎の責任者でもあるヴィッグ。
・・・名前的に髪の毛を確認してしまう。ふさふさの金色をしている。どうやら地毛のようだ。
髪の話はやめよう。
仕事柄鍛えられているのか、筋肉もたくましい、40代ほどのヴィッグは白い歯を輝かせながら歓迎してくれた
「あいや、ぼっちゃん。こんなところさ、ようこそおいでくださいました」
近くの馬の放牧で有名な村から出稼ぎできたヴィッグは東北訛りのような喋り方をする。
この国に東北地方とかはないはずだが。
「こんなとこって、ここも屋敷の一部だし、厩舎を汚いとか思ってないよ」
などなど、適度にヴィッグや厩舎を褒める。講師をしてくれるわけだし、気分よくやってもらわないとね。
ヴィッグは照れたように頭をかきつつ、本題に入ってくれる。
「モンスターテイムは魔物と意思疎通をするためのスキルだと一般では言われとりますが、そもそも魔物と意思疎通ができんければテイムをすることはできません」
講師モードに入ったのか、節々は訛りつつも丁寧な言葉で説明してるヴィッグ、厩舎とはいえ侯爵家の屋敷の使用人として責任者を任せられる程には教育されているのだろう。
「クロウ丸!」
ヴィッグが叫ぶと、厩舎の屋根から大きめのカラスが飛んできてヴィッグの肩に乗る。
ヴィッグが、クロウ丸の頭を撫で、餌を差し出すと器用にクチバシで受け取り食べると満足そうに「カァ〜」と鳴いた。
「こんな感じで私は、テイムのスキルとは魔物と縁を結ぶもの、と考えとります」
魔物と縁を結ぶ、か。まだピンとは来ないが、いいことを言う。
となれば実践してみたいが、どうすればいいかヴィッグに確認してみよう。
「厩舎の裏の雑木林に、ゴミなどを処理してくれとる温厚なスライムが数匹住んどります。彼らで練習してみるのはいかがでしょう」
その提案に賛成し、歩いて厩舎の裏に移動する。見える範囲にも5匹ほどいる。
5匹でも赤や青などカラフルだ。
その中でも、一番眠たそうな顔している薄い黄色の子が気になったので近づいてみる。
「手に魔力を込めてそっと近づけてみてください。スライムが気に入れば近寄ってきます」
微笑んで頷き、その通りにしてみる。手のひらを広げ、集中して魔力を集めると、ほんのり発光する。
その両手をそっと近づけると、スライムがこちらに興味を示してきた。
そのまま手を器にし、スライムを乗せる。スライムが眠たそうな目でじっとこちらを見てくる。
「そのままスライムの名前を決めて、スライムが気に入ればテイム成功になります」
「…そっかぁ。じゃあ、君の名前はシズクだ!」
・・・僕の手のひらと同じ光り方でスライムが発光し出し、やがておさまる。
これがゲームならファンファーレが鳴ってるところだな。
シズクが仲間にくわわった!
って感じで。
なんとなくシズクの気持ちが伝わってきたので頭に乗せる。シズクは僕の頭が気に入ったのかすぐ眠ってしまった。
「さすが、ぼっちゃんだ。もうテイムをマスターされましたな」
「え?これで?」
その後、ヴィッグに詳しく聞いたが、総合ステータスや魔力量によってもテイムできる魔物は変わってくるのだが、その辺は5歳児だから理解できないと思われたみたく、テイムしたい魔物がいたら父やグランに相談するように、とアドバイスを受けた。
要は「あの動物飼いたい!」のであれば保護者の同意が必要ということだ。
いや、魔物がペットと同じ扱い!
その日の夕食で何やら母がソワソワしていた。
そう、例の自動魔力吸収の実験のGOサインが僕と父から出たからである。
水着に着替え、侯爵邸の大浴場へ向かった。この世界のお風呂は魔力のこもった魔石で湯沸かしができるため、前世と同じ感覚でお風呂に入れる。魔力様々である。しかし。
「なぜ、女湯で?」
「私がわがままを言って1時間貸切にしたからよ!」
母はこのくらいのわがままなら言う人間である。
迷惑がかかっている侯爵邸の女性使用人さんたち、ごめんなさい。
水着姿の僕と、さすがにドレスではない、濡れてもいい服を着ている母が対峙した。
見届け人は父とグランとシリュウとメイミとシズクである。いや、シズクはシリュウの頭の上で寝ているだけか。
楽しそうな男3人と心配そうなメイミ。メイミはちゃんと体を拭くための布(要はバスタオル的なもの)を用意してくれているが。男3人はニヤニヤしている。
「どのような結果になるか楽しみですな!」
とか言って笑ってるし。もう少し心配してくれてもいいと思う。
「じゃあ、上からぬるま湯をかけてみるわよ!」
そう言ってこちらに母が手をかざすと、手のひらが青く輝きだし、僕の頭上に水の塊が現れた。
自分が標的じゃなかったら、そういえば自分とグラン以外の魔法、初めてみたな〜、とか他人に放つ呪文も詠唱とか必要ないんだ〜とか考えていただろうがそんな暇はなかった。そのまま水の塊が落ちてきたからである。
思わず目を瞑って体をこわばらせたが、体が濡れることはなかった。足元は濡れていたので、どうやら僕に当たった水だけ消えたらしい。
見たことない光景だったのかみんな唖然としている。シズクまで驚いた顔をしている。そんなに目を見開いたの初めて見た。
母だけは目を輝かせてこんなことを言っている
「じゃあ次は氷ね!飛ばしてぶつけるわけにはいかないから、大きな氷を出して、シオンちゃんが触ったら溶けるのか消えるのか確かめたいわ!」
そうか、氷属性がないから氷も水属性で出せるのか。ちなみに母は水属性レベル5らしい。
母が床に両手をかざすと両手とも青く光だし、僕の身長より大きい氷が出来上がった。
「さぁ!シオンちゃん!」
楽しそうな母に促されて、恐る恐る触ってみると、触ったところが光だし、そのまま手のひらに吸収されていった。
「これが、自動魔力吸収・・・」
思わず呟いてしまうくらい不思議な光景だった。
氷は溶けるというか削り取られるように光に変わっていく。
氷の冷気は感じるが、直接触れることはない。
手のひらから体内に何かが取り込まれているのを感じる。
とにかく不思議な感覚であった。
周りの大人たちも呆然としていて、得意の考察モードにも入れていない。
母はとにかく楽しそうだ。
そんな中、僕は大きな氷の近くに水着姿でしばらくいたため
「・・・くしゅん!」
体が冷えてしまっていた。
驚いたメイミに湯船に案内されてしまい、貸切の時間いっぱいまでお湯に浸かることになりましたとさ。
次回は1/26投稿予定です。




