1 ”無”?
初投稿の作品です。
拙い文章ですが、楽しんでいただけると幸いです。
とある国のとある教会。
片膝をついて祈るポーズをする少年。
祈る先には神様をかたどった像、その前には老齢の神官。
2者の間には台座に置かれた水晶があり、神官が魔力を込めると水晶が光り始めた。
「では、この水晶に両手をかざしてください」
言われた通りに、立ち上がり水晶に両手をかざすと、水晶が光だした。
「”無”?」
水晶に映されたのは”無”という文字のみであった。
少年はその文字を見て何かを悟った。
無って、無能、無能力ってこと?
あ・・・詰んだ
追放されるやつだコレ
少年は異世界転生者であった。
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シオン・B・シルバーバーグ
それが僕のこの世界の名前である。
自我が芽生え始めてきた頃から徐々に前世の記憶を思い出し、5歳になった今ではいい感じにこの体になじんできていた。
シルバーバーグの名にふさわしい銀髪もお気に入りである。
この異世界、あるいはこの国は、よくある西洋の中世的な剣と魔法の世界だった。
シルバーバーグ家は侯爵家であり、この国"ロクセン王国"の北西を収めている。
協会に行った日の午後、僕は父様に執務室に呼び出されていた。
執務室の扉を少し開いて中を見てみると、父様は難しい顔をしていた。
シルバーバーグ侯爵家当主、ウォルト・B・シルバーバーグその人である。
年齢は36歳で、僕と同じ銀髪。
・・・若白髪ではない。
爽やかイケメンではあるのだろうが、侯爵の業務が多忙なのか少々やつれている。
追放ルートは怖いが恐る恐る声をかけてみる。
「失礼します、シオンです」
「あぁ、シオンか。入りなさい」
室内に入ると父様の右側に僕の専属執事のグランが立っていた。
ビシッとしたスーツに身を包んだ老紳士であり、僕に対しては好々爺でもある。
・・・こちらは白髪まじりのグレーの髪だ。
「グランから聞いたんだが、神託の儀式で無属性と判断されたようだね」
無属性?無能力の無ではなかったのか・・・
グランの方を見ると優しく微笑んでる。
追放は免れそうだが、ではなぜ父様は難しい顔をしていたのか。
「無属性が悪いわけではないんだが、他の属性と比べてあまり貴族向きじゃないのがな」
素直に理由を教えてくれる父。
なるほど。人としては無能ではないが、貴族としては無能、と。
あれ?結局やばいんじゃ・・・
僕の絶望を悟ってか、グランが助け舟を出してくれる。
「ウォルト様、本日のシオン様の神託の儀式でのことですが、シオン様が触れられた水晶の光り方は他のお子様たちとは一線を画す光り方でした。ぜひ、詳しくスキルボードで調べてみましょう」
父様が頷くとグランはスキルボードを探しに上機嫌で部屋を退出した。
それにより、父様と二人きりになる。どうしよう。ちょっと気まずい。
無言でいると気まずさに拍車がかかるので気になることを聞いてみることにした。
「父上、無属性が貴族に向いていないというのは・・・」
「ふぅむ。シオンは属性については知っているかい?」
属性については教育係も兼務しているグランから教わったことがある。
確か、火・水・風・土の四つの自然属性4種と光・闇の理属性があり、魔法というのは基本的にこの6つの属性に当てはまるというものだ。
復習も兼ねて父に説明すると父様は満足そうに頷いた。
「うん、よく勉強しているね。そう、魔法は大体6属性のいずれかに分類されるが、そうでないものも存在する。そういった魔法は無属性に分類されるんだ。例外はあるけどね。そして、無属性の代表的な魔法が問題なんだ」
「代表的な魔法・・・?」
魔法と言えば、炎や風を操ったり、怪我を治したりといったことが思いつくが、それは火や風、光といった属性に分類されるのだろう。であれば無属性ってなんだ?
「無属性の代表的な魔法は、身体強化、モンスターテイム、アイテムボックスといったものだ。冒険者や兵士で重宝される魔法で、貴族にはわかりやすく強い自然属性が向いているという風潮がある」
「・・・貴族向きの属性になれなくて申し訳ありません」
素直に謝ると、父様が驚いたような表情になった。
「そうではないんだ。無属性の魔法を活用するということは危険な場所に行くということ。僕はシオンにそんな危ないことをさせたくないんだ!」
そうだった。父様は意外と親バカだった。
いきなりの父様の大声に驚きつつもグランがスキルボード?らしきものを持って入室してきた。
某ハンバーグのレストランのメニューのような窓付きの黒板だった。
「これがスキルボード?」
グランに尋ねると嬉しそうに解説してくれる。
「はい、ぼっちゃま。これがスキルボードです。触って魔力を流せば、持っているスキル、つまり使える魔法を表示してくれる魔道具です。さ、ぼっちゃまこちらへ」
スキルと魔法の違いについてはスキルボードのようなもので表示される能力名がスキルで、実際に放っているものが魔法という区別はあるが基本的にスキル=魔法という認識なんだそうだ。
スキルボードに触り魔力を流す。以前グランに魔力の操作は教わっていたのですんなりできた。
「こんな感じかな?お、文字が出てきた」
▪️シオン・B・シルバーバーグ
▪️無属性レベル3
⚪︎身体強化
⚪︎アイテムボックス
⚪︎モンスターテイム
☆自動物理防御
☆自動魔力吸収
お、さっき父が言ってた代表的な魔法が3つとも使えるみたいだ。
レベル3って高いの?低いの?
この星のマークはなんだ?自動物理防御?自動魔力吸収?
と、考えていたら、後ろから覗き込んでいた父様が驚いて、グランが満面の笑みを浮かべていた。
「ウォルト様、やはりシオン様は天才でしたな」
「・・・ギフトが二つ。それにより霞んでしまうがレベル3もなかなかだな」
ギフト?やっぱりこの星マークはレアスキル的なアレ?
あとレベル3って高いんだ。首を傾げつつグランを見て説明を促す。
「おほん。シオン様、順を追って上から説明しましょうか」
「はい、お願いします」
「では、まずレベルですが・・・」
グランが言うには一般人の最大レベルは5。6〜10は国の有力者で数名。11以上は異人とか都市伝説
の類らしい。レベルは20代から30代くらいまで成長するものであり、神託の儀式でレベル2以上が出ることはマレなのだとか。
それから、身体強化・アイテムボックス・モンスターテイムについても説明があったが予想通りもので、後でそれぞれのスキルの家庭教師を見つけてくれるらしい。
そして星マークのスキルについてなのだが・・・
「これはギフトと呼ばれるものでしてな。神に愛されたもののみが授けられるというスキルでどれも強力なものだと言われています。自動物理防御も自動魔力吸収も見たことがないギフトですが、名前からしても強力そうですな」
グランの説明を再度難しい顔をして聞いていた父だったが、考えがまとまったのか、僕の肩をがっちり掴んできた。
「シオン。ギフト持ちであれば無属性とはいえ、他の貴族に後ろ指を刺されることはない。だから、危険なことはせず自分らしい好きなことをしなさい」
決意した表情で優しく諭す父様。
自分らしくが危険なことであれば矛盾が生じるが、別に危険なことがしたわけでもないので、5歳らしく大きく頷いた。
第1、第3月曜日(祝日なら火曜日)の投稿を予定しております。
次回を気長にお待ちください。




