dislike and lonely
暗い部屋のベッドの上。
カーテンも閉め切って光の入らない場所に一人布団にくるまって泣いていた。
あの時どうしたら良かったのか、自分には分からない。
誰かに聞いたとしても欲しい答えが返ってくる事はないだろう。
『なんで……―――』
僕は裕福な家庭に生まれ、他と比べて何不自由なく育ってきたと思う。
友達と呼べる人はあまりいなかったけど、好きな人がいつも一緒にいてくれて家族にも愛されている。
好きな人は凄くかっこよくて、ハイスペックで何の勝負を仕掛けても一切勝てずにいつも悔しい思いをしていた。
そんなある日、彼に苦手なものがあるという情報を数少ない学友から聞いた。
好きな人、紅凛刳は護衛役兼うちの家の執事長をやっていて僕が人間界に社会勉強と称してお父様に放り出された時も直談判したらしくついてきてくれた。
「ねー、凛刳さんの苦手なものって何さ」
馬鹿正直に直接聞いてみた。
「俺の苦手なもの?なんだと思う?笑」
「…」
「…」
「いや、わからんて」
分からないから聞いているのにいつもこんな感じだ。
「おーしーえーてーよー。教えてくれるまでご飯食べない!」
「教えてそれどうするんだよ、悪用するの?」
「悪用…は、たぶんしない!!」
「たぶんって言われて教えると思う?」
「思わない!」
「うん、そうだよね?」
僕の言い方も悪いけどちょっとは教える素振りを見せてくれてもいいと思う。
「じゃあもう僕拗ねる!!!」
僕は自分の部屋に駆け込んで布団にくるまった。
「なんで教えてくれないのさ…」
コンコンコン…
「莉緒?そろそろ出てきて?」
………
「莉緒?」
ガチャ。
ギシリと音が聞こえたことで凛刳さんがベッドの隅に座ったことが分かった。
「拗ねないで?ごめんね?」
僕がくるまっている布団をぽんぽん軽く叩かれながら優しい声で謝られると凛刳さんに弱い僕は笑顔にならざるを得ない。
「でも教えてくれないもん…」
口角が上がってしまったと言って諦めたわけでは無い僕は必死に嬉しそうな声を押えて不機嫌っぽく装った。
「教えたら布団から出てきてくれる?」
「…うん。」
「俺が苦手なものかー…」
「まぁ、莉緒に拒絶されたり他の奴と一緒にいるのは無理だな。多分俺が苦手なものって莉緒がマイナスな感情になる時とかしかないと思うよ?」
優しい慈しむような声で言われて心臓が早くなる。
「ほら、言ったんだから出てきて?」
「あぃ…」
布団から目だけ出して凛刳さんの方を見ると寂しそうな顔でこちらを見ていた。
あんまり考えたことは無かったが凛刳さんは僕が少し離れて帰ってくるといつもこんな表情をしていた。
そんな凛刳さんが愛おしくて、可愛くて…
つい布団から飛び起きて凛刳さんを背中から抱きしめた。
「…ごめんなさい。」
「ん?なにが?」
「寂しい思い、させて…ごめんなさい。」
凛刳さんは後ろに手を回して頭を撫でてくれた。
「大丈夫だよ。」
「でも俺から離れるのはやめてね…笑」