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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

復讐が大好きな元「」と転生剣が他人の復讐心を喰らって復讐を楽しむ話

作者: カブトボーグ

悪役令嬢と書くときっと勘違いしたりだとか、PVが増えちゃったりするので

 その町で一番高いところに必ず彼女と彼がいる。

「お暇なんだよぉ。シガ、異世界のお話をしてよぉ」

 彼女は元悪役令嬢なのだけど、復讐を終えたので、「元」悪役令嬢なのである。

「HUNTER×HUNTERは完結したの?」

「船からまだ出てないところで死んじまったんだよ、俺は」

 話しているのは剣。彼は異世界から転生してきた。

「そろそろ腹が減ったよ、ナラ」

「私もタイクツだから、探そっか。復讐」

 ナラはシガを抜き、シガの剣先を人混みに向ける。

「おうおうおう。いいのがいるぜ。濃い復讐心だ」

 早速彼女と彼は姿を消した。


 男はカフェでエスプレッソを飲んでいた。

 ぼんやりと一言。

「復讐してえなあ」

「復讐なんていけませんわ」

 声をかけられてふと視線を向けると、相席に令嬢が座っている。手にはすでにティーカップがある。

「ごめんなさい。相席させていただいて」

「他にも席が───」

「あなたが思いつめたような顔をしてらっしゃったので、つい」

 令嬢の微笑みは男の心を簡単に溶かす。

「私も───かつて復讐心に駆られて罪を犯してしまいました」

「さぞ気持ちよかったでしょう?復讐できて」

 令嬢は複雑な表情をする。

「いえ。復讐は何も生みませんわ。私に話して少しでも楽になりませんか?」

 男は令嬢が腰に剣を携えているのが気になった。


 男は、とある工場に長年勤めていた。高くはない給料だったが、やりがいのある仕事だった。家族ができ、子どもの成長を見ることが幸せで、より一層男は仕事に励んだ。

 だが、突然解雇された。一切の不祥事を男に負わせるというおまけ付きで。

「復讐してえよ。会社の全ての人間によ。頑張ってきた俺をコケにしやがって」

「それはさぞお辛かったでしょう」

 令嬢は悲しみの涙を流す。

「私が今、楽にして差し上げますわ」

 令嬢は剣を抜き、男の頭に突き刺した。男から剣を抜く。男は意識を失う。血は流れない。

「この人にも落ち度があるのだけれど、いいや、別に」

 令嬢は愉悦の表情。だって、男の復讐心をたくさん食べたんだもの。

「私があなたの代わりに復讐してあげる」

「復讐、気持ちよかったでしょって言われて、ニヤけるの、必死にこらえてたでしょ」

 シガが笑いながら言う。

「だって、本当に気持ちいいんだもん。復讐」


「売上金をネコババとは、なんて野郎だ。解雇くらいで済んで良かったと思え。娘がいるそうだから、情をかけてやったんだ。俺にも同じ年頃の娘がいるからな」

 某企業の社長は水素水片手に独り言を言っていた。

「復讐に参りましたぁ」

 背後から一刺し。

「ガッ」

「こっちは身を粉にして働いてんのに、偉そうにダラダラサボりやがってよお」

 足を、腕を社長はめった刺しにされる。もう動けない。

「助けてくれ!」

「助けて欲しいのはこっちだっつーの!」

 社長が人生最期に見た光景は吼えながら剣を振り下ろす血塗れの令嬢。

「うぜぇんだよ。涼しいところでのうのうと仕事しやがってよ!」

 令嬢は一人、また一人と呪いの言葉を吐き散らしながら殺していく。そのビルにはもう生きている人間は殺人犯たる令嬢しかいない。人が死んだときに出る、酸っぱい臭いがビルに充満していた。

「はー。スッキリした。早く逃げないと死体が臭っちゃう。あの臭い嗅ぐとイライラしてもっと復讐したくなっちゃう」

 漬物の臭いを最高にキツくした悪臭を思い出して、彼女は苦い顔をした。


 男は目を覚ました。カフェで意識を失って病院に運ばれたらしい。意識を失う直前に誰かと話していた気がするけど男は思い出せない。病院のテレビからニュースが流れていた。某企業のビルで大量殺人があり、社長を含めビルにいた従業員全員が殺されたらしい。

「工場の親会社だな」

 男のなかに復讐心はもう何一つ残っていない。

「酷いことをするヤツもいるもんだなあ」

 男は心を傷めつつもどこかスッキリした気分になっていた。


 その町で一番高いところに必ず彼女と彼がいる。

「お暇なんだよぉ。シガ、異世界のお話をしてよぉ。アーマード・コアの新作は出たのぉ?」

「発売日前に死んじまったんだよ、俺は。あー、何で死んじまったんだ俺は。後悔してきた」

「暇だ暇だ暇だぁ。シガがヒキコモリになった挙げ句、自殺しちゃった話してよぉ」

「何万回話さなきゃいけねーんだよ、俺は」

「私はね、復讐の次に好きなのが他人の不幸なの」

「俺もー。お。旨そうな復讐心がいる」

 早速彼女と彼は姿を消した。


 男が退院するその日に、見舞い客が来た。

「ごきげんよう」

「どこかでお会いしたことありますかあ?」

 男は令嬢に見覚えがなかった。いや、どこかで───?

 男の悲鳴。男は剣で斬りつけられていた。

「なにをする」

 グサリ。太股一突き、二突き、三突き。

「パパを殺したお前を絶対許さない!」

「なんのこと───」

 身体中を男は刺される。どうして男は自分が刺されているのか理解できない。

「ごめんね、社長の娘さんが社長を殺した犯人に復讐したいんだって。でも私は死にたくないから代わりに死んでね」

 そして男は死んだ。

「この人にも娘がいるから、その娘の復讐心を喰べちゃおっか」

 とってもお得なスパイラル♪

 彼女と彼は楽しそうに歌っていた。


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