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第9話 転生者が必要である理由

 神って感じの存在からの説明は、まだ続いています。

 人族が滅びそうになっているのは、完全に世界の設計ミスなんだから諦めればいいのに。


 その俺の思考を読み取っている筈なのに、諦めようとしない神って感じの存在は、まだ俺を説得するつもりの様だ。


 「君の気持ちも分からなくは無いよ。

  僕は人の神だからね。

  でも、君の母親や前世の家族の事を思い出しても、魔物に無残に殺されて消え去れば良いって思うのかい」


 ……、卑怯な。


 「そうだね。その代わり君には力が与えられ、それで気に入らない人族を殺しまわれる力すら与えられる。

  だから、今は絶望から抜け出して、君の母親や前世の家族みたいな人を救ってくれないかな」


 そう言われても、俺には返事が出来ない。


 神って感じの存在はそんな俺をしばらく見ていたが、俺が何も言わないので、


 「それで説明を続けると、この世界の理では、レベルの数の2倍までしかスキルを取得出来ない。

  そして、その中からレベルの数だけ装備してスキルを使用できる理だ。

  なのに、君は百能スキルにより既に100個分スキルの取得枠が埋まっているんだ」


 と、致命的な説明をしてきた。


 「さっきも言いましたけど、そんなスキル持っていませんけど」と、神って感じの存在に対して咎める様に聞いてしまう。


 「そう、まだ未覚醒なんだけど枠は使われているんだ。

  そして、そのスキルの覚醒条件と言うか使用条件が、百能スキルが他に無い強力なスキルであると事、僕が縁結びの神って事を考慮して、縁結びと言う願いに絡ませる事になったんだ。

  いや。僕がそうしたんだ。

  本来なら一つしか与えていない強力なスキルを、最大100も使える様にする訳だし」


 なんだそれ?


 「僕のミスを含め、ここまで事情を説明した事だし隠す事は止めてハッキリ言うと、他の力に比べて規格外過ぎて、そう言う制限をつけて君が悪い方向へ暴走しない様にと考えていたんだ」


 という事は、この神って感じの存在の失敗なんだ。


 ああ。本人もそう言っていたな。


 「そう言う事。

  一人の人に渡すには危険な力。

  だけど、今のこの世界の流れを変えられるほどの力を一人だけでも持たしたかったんだよ。

  それが、君と君の力なんだけどね」


 それで失敗しているのだから、もう諦めるべきでは。


 「他の神にも嫌味を言われたけど、人の神達にこの世界から手を引かれること自体は嫌なようでね。

  まあ、何とかなったんだ。

  だから、説明を続けるよ」


 何とかなった……か。


 何とかするのは、俺って話なのか。


 そう複雑な思いを抱えているのだけど、神は説明を始める。


 「まず、未だ未覚醒の百能スキルだけど、異性との愛情がキーなんだ。

  まあ、同性でも異性に対する愛情に相当するなら良いんだけど、それはここでは無視するとして、それを得る事及び君の愛情で相手を幸せにする事により、力が覚醒しスキルが使用可能になるんだ。

  まあ、相思相愛になり、相手を幸せにすると言っても良いのかな」


 なんだそれ。


 愛情とか、あれだけ馬鹿にされ虐待されていた俺が得られる訳ないだろう。


 「人族に余裕があれば例えスキルを君が得られなくても、誰かからの愛情が得られたとは思うのだけどね。

  狭いコミュニティである村に転生させたが良くなかったのも有るか。

  まあ、才能と力を持ち善人だったからと君の母親に選んだ女性のピンク発情期が、依頼で訪れていたあの村で始まるとは知らなかったんだ。

  気が付いていれば、また別の結果になったのに」


 ……。


 「怒るのは当然だね。

  僕のミスだから。

  その結果失われた母親を生き返らせることは出来ないけど、次の生まれ変わり時には、君の母親の魂に出来る範囲で配慮する様にするから」


 「それで幸せになれるような世界じゃないでしょ」と冷たくいってしまう俺。


 だけど「それは、君にして欲しいんだ」と神は俺に言うが。


 「人一人で何が出来るんですか」


 「出来るだけの力を更に追加する。

  実は、魔族の神、魔物の神、精霊の神の承認を受けて、魔物の神と精霊の神からは、何とかしろよって君に与える力まで預かっている。

  だから、君次第でもあるんだよ」


 「なら他の人にその力を与えて頼んで下さい。

  僕はもう消滅させてもらって構いませんから」


 「……。

  見返してやりたい。

  復讐したいと言う思いすらないんだね。

  だけど、異世界からの魂の初期化なしの転生は本来は理で認められない事だから、私達人の神だけで行って良い事では無いのに、権力者に捕まらずに残っている転生者は十数名だけ。

  そして、百能スキルを使いこなせるほどの魂の力を持った存在は、現状もう君しかいない。

  君が前世の自己犠牲で神に認められ与えられた魂の力はそれ程大きいんだよ」


 「自己犠牲?」


 「ああ。自分の死すら覚悟した状況で、母親と小さい子供を助けようとしたでしょ。

  あの行為は、私たち人の神の目に留まり、君を称賛する私達の気持ちが作用して君の力の根源である魂に力が与えられたんだ。

  私達にとってはカスみたいな力だけど、人にとっては大きな力がね」


 自己犠牲か。


 俺がビル火災に巻き込まれて死んだとき、脅えた子供と目があってしまい子供連れの避難を助けたりはした。


 けど、結局あの親子も煙に巻き込まれて、一緒に死んでしまっただろうけど。


 と言うか、あの行為で神に認められて力が与えられたんだ。


 なのに、その力も原因で、こんな世界であんな目にあい続ける事になるなんて。


 ……。


 正直、もう嫌なんだよ。


 そう俺の中で結論が出たので「なら、俺の記憶を消して、魂だけ使ってください」と神に伝える。


 「魂の力の強弱は、魂が内包するエネルギーの力だけではない。

  その魂に刻まれた記憶や思いが、魂の力をより引き出すんだ。

  だからこそ、二つの記憶・思いを持つ転生者が、強い存在となる可能性があるんだから。

  だから、記憶の初期化はあまりしたくない」


 なんだそれ。


 なら、高齢者に力を付与すれば、人生が長い分、記憶も思いも多いだろう。


 「いや。年を取ればとる程強くなると言う理の部分と、年を取ると弱ると言う理との相克で、君が思っている様にはならないよ。

  ちなみに、前世の記憶・思いの部分は、そう言う補正の枠の外にあり、君を強化し続けるんだ

  他にも、科学と言った世界の理の探求は、スキルに頼る今の世界ではあまり進んでいない。

  その辺の知識やイメージも魔法スキルの威力なんかに影響があるんだ」


 転生者が強い、力を持っている理由がそれなのか。


 でも、嫌なものは嫌なんだよ。


 「だから、魂に刻まれた記憶や思いを消滅させるのではなく思い出せなくしたまま、新たに生まれ変わらせることも出来るけど、それではそれ程強く離れない。

  今までの君がそうだったようにね」


 という事は、前世の記憶や思いを思い出した俺は、前より強くなったのか。


 だけど。


 「ちなみに、3つの人生の記憶を持つ事は、許されていない。

  と言うか、そうなると亜神レベルの存在という事になるからね。

  それで、覚悟を決めてくれたかな」

 神って感じの存在に、覚悟を決めてと言われてしまいましたが。

 主人公は。

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