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第75話 先生の旅立ち

 先生から雑学を含めた色々な事を教わっています。

 その中には、今後の指針となる事も含まれている様です。

 「貴方はこれからどうするつもりなの?」


 そう先生が聞いて来るので「冒険者として生活していくつもりですが」と、俺の当面の予定を教えると「一人で?」と、細かい事まで確認される。


 その事に意味がありそうなので「ピンク発情期対策も含め、奴隷を雇って、それを戦力化しようとも思っています」と隠さず伝えると「そう。でもどうして?」と言う先生に奴隷に対する嫌悪感は無さそうだ。


 「上下関係がハッキリしているから、昇華の宝玉を得た時に、もめる事は無いですよね。

  それに、承継・継承した知識なんかを話しても問題なさそうですし」


 そう言うと先生は微妙な顔で黙り込んだ。


 「奴隷にも話さない方が良いのですか?」


 「出来ればね。

  私も昔は奴隷を雇い、それで魔物達と戦っていた時期が有るの。

  結局、私も奴隷たちもAランクを狩れる様な強者にはなれなかったんだけど。

  それで、強者になる事を諦めた時に、奴隷を解放したのよ。

  私の事は話さない様に契約で縛ったうえでね」


 「それでもダメだったんですか」


 「まだ、結論は出ていないけど、不安ではあるわよ。

  奴隷たちも異常って程強くならなかったと言うのも解放した理由の一つなの。

  だから、もし貴方の奴隷が強くなったら、何故強いかが問題になる事を考えて、開放しないと言う選択肢を取った方が良いと言う注意点もあるわ」


 「奴隷たちには、どの程度まで明かしたのですか」


 「ほぼ明かしていない様なモノね。

  個別に得てもらいたい力の訓練方法について指導はしたけど、基本的な指導の過程で突出した才能を感じなかったから世間でも知られている程度の情報だけで指導したのよ」


 「はあ。難しいですね」


 「そうね。でも、迂闊に仲間を作るよりは間違いがないから」


 「はい。となるとお金が足りないんだよな。負傷している奴隷を雇うにしても」


 「なら、私が薬草を買い取ってあげるわ。お金なら一時期狂ったように集めたことがあるから」


 「え~と、昨日今日ここで俺が採取した薬草類は、俺のモノなんですか?」


 「ええ。この場所は、先達から承継した財産とは言ったけど、この場所もここに生えている薬草も別に私の所有物ではないからね。

  それを貴方のスキルとMPで採取したり、手作業で採取したモノだから、間違いなく貴方のモノになっていると思うわよ」


 「先生にそう断言してもらうと助かります。

  そう言えば、魔生薬づくりの道具と、魔法薬造りの道具も欲しいので、先生の造ったそれらと薬草と交換してもらえると」


 「分かったわ。

  その魔法薬に関する注意点だけど、魔法薬学は中級エリクサーを造れる様になると目をつけられ始め、上級が造れるとバレルと、もう逃げるか諦めるしかなくなる。

  だから、奴隷の治療には下級を使うべきね。

  作成時に、MPの回復とか浄化とかの薬効を抑え、再生に特化したように造れば、通常指の1~2本程度の再生能力も倍とかに出来るから。

  それに、貴方も知っている通り、ワンランク上の魔石を使うとか魔力を多めに込めるとかで良品ではなく優品に出来れば、更に効果は倍になるわ。

  後は、朝昼晩と2本ずつくらい使用して治療すると効率が良いんだけど、そんなに何処から手に入れたと言う話にもなるから、その辺の加減してね」


 「戦利品で出たエリクサーとの関係はどうなんですか?」


 「あれは、製造者欄が空欄だから、気にせず使えるわよ。

  だから、戦利品で持っているという事にして中級とか上級とかは使う方法もあるわ。

  でも、その場で使う事ね。現物を詳細鑑定されない為に」


 「偽装スキルで、製造者欄を空欄にする方法は、どうなんですか?」


 「鑑定スキルがこちらの偽装スキルより力が弱ければ大丈夫だけどね。

  でも、上級以上のエリクサーは、その値段もあり、高い鑑定持ちに鑑定されると思っていた方が良いから見破られる可能性も高いわ」


 「難しいですね」


 「そうね。厄介よ。色々と」


 その後も色々と話ししながら薬草類を採取。


 もう少しで夕方と言う頃で、転移で領都の近くに送ってもらい、そこで待つように言われる。


 すると、直ぐに転移で先生は戻って来た。


 これ、と渡されたのは、魔生薬生成用の薬研及び薬研車G4(グレード4)と、魔法薬生成用の魔法の壺(大型ビーカータイプ)G4。


 「ありがとうございます」


 「後は、万能草500単位と、魔力草1000単位を買う事にするわ。

  値段は、万能草は1単位10万GAZUと魔力草が5万GAZUね。

  薬草類を安めに買ったと言う事で、薬の生成用の道具とこの上級エリクサーと魔回薬をサービスで譲った事にするから」


 そう言って、更に45本を箱詰めにした上級エリクサー(良)5箱を目の前に置き、上級魔回薬(良)が200個入ったビンを渡してくる。


 先生が亜空間収納から出した薬草類保存用のコンテナに万能草と魔力草を入れつつ「え~と、冒険者ギルドへ売ると、どちらも5分の1の値段ですけど」と『買取価格が高いのでは?』と確認すると。


 「ええ。あそこは買い叩いているしね。

  それに、下級のランクの物しか造れない人を前提とすると、その相場になるの。

  上級が造れるのなら、これでも安いわ」


 そう言ったかと思うと「これに神硬貨70枚、硬硬貨200枚、ミスリル貨1000枚。あわせて1億GAZUが入っているから」とも言って大き目の袋に渡してくる。


 その大きさと重さに、これは小分けにして魔法の袋に入れないと、と思いつつとりあえず魔法の袋に入れ、まだ終わっていない薬草をコンテナに入れ続ける作業を続けながら「でも、上級エリクサーなんて売る場所がないのでは?」と気になった事も聞いておく。


 「私は偽装の指輪を持っているし、これからも使わせてもらうから、まあ、何とかなるわ。

  中級エリクサーにしても、利益は出せるしね。

  でも、貴方はそうじゃないから、簡単に売れない。

  その支援も含めてよ」


 「そっか。そうですね。ちなみに、どうやって売るんですか?」


 「完全に別人になって、売った後は転移で逃げるのよ。

  後は、小さめの都市位で売るわね。

  領都や王都は、イレギュラーがあるかもしれないから。

  後は、同じ都市では数年売らない様にもしているし」


 「なるほど。偽装スキルと転移魔法が手に入るまでは、そうそう売れないんですね。」


 そう言っている俺が薬草をコンテナに入れ終えたことを確認した処で「私は、これでこの領都から出て行くわね」と先生は突然の旅立ちを告げて来る。


 「えっ。もうですか?」


 「手遅れになる前にね。既に、全部亜空間収納に入れて来たし」


 「そ、そんな。もっと教わらなければならない事が」


 「私もそう思うけど、それはまたね。

  貴方の気配は、風魔法の風探知に覚えさせたから同じ都市に居れば分かりそうだし」


 心細くなったので「何処へ行くかは、聞けないですよね」と聞いてしまうと。


 先生は苦笑しながら「ええ。まあ、また会えると思うわ。私は転移が使えるし、多くの都市を転移先として登録しているから」


 「そうですか」と、少しホッとしながら告げると。


 「本当は、貴方に伝えたい事がイッパイあるのだけど、他の知識の承継継承者や貴方に迷惑が掛からない様に、それは告げずに行く。

  それも理解しておいて」


 そう真剣に言われたので、真面目に「はい」と返事をしておく。


 「貴方も早めに、ここから移動するのよ」


 「20日以内には必ず」


 「もっと早い方が良いとは思うけど、分からないしね」


 「なら10日以内には」


 「そうね。気を付けてね」


 「はい」


 その返事をしたと同時に少し笑みを浮かべながら、先生はまた目の前から掻き消えた。

 先生は急ぎ旅立ったようです。

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