表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/170

第72話 知識を広めようとすると

 主人公は、薬の先生から知識を受け継ぎ始めました。

 その過程で、疑問が出来たので質問をするようです。

 薬の先生から色々と教わり、その話の中で転生者の話が出て来た。


 なので、それについて疑問に思った事も聞いてみる事に。


 「転生者の取得するスキルの数と言った統計データを知っているという事は、先生の系譜、先達者達って、ひょっとして何処かの国のお偉いさんだったんですか?」


 「いえ。承継継承者の初めの方はそうだったらしいけど、もう数十代前に一般人になっているわ」


 「数百年。いや、数千年そう言う知識を引き継いできたって事ですか」


 「そう言う事。だから、今日話した知識に敬意を払い、出来れば次に繋いであげて」


 そう厳粛な雰囲気をたたえ、俺に頼んでくる先生。


 少なくとも先生は、この知識に敬意を払っている、と言う事なのだろう。


 俺にはスキル知識源泉がある。


 だから、承継・継承なんて無くても、正しい知識を簡単に得られる。


 だけど、俺以外の人はそうではないのだから、今日聞いた知識を広く広めれば人族の為になるかも。


 でも、人によって取得条件が違う事があるんだから『本当だ』『嘘だ』で争いになる等、上手くいくとは限らないのか。


 でも、先達から引き継いできた知識には敬意を払おう。


 そう決めて「はい」と言うと。


 師匠に「ごめんね」と言われる。


 意味が分からない俺が首を傾げていると。


 「さっきも言ったけど、本当はもっと貴方が強くなってから承継継承者に選ぶべきなの。

  そして、私は戦闘出来るタイプでは無かったから、先代から引き継いだ力を私自身が使い、それを補充できなかったの」


 そう言って大き目のショルダーバックを渡される。


 肩に掛ける方のベルトだけでなく腰回りの方のベルトもあり、それをすれば戦闘に邪魔にならないタイプか。


 何が入っているのだろうと思い、中身を見ようとするとその奥の方に暗闇が。


 「だから、今あなたに引き継げる力はこれだけ。

  魔法の袋の極大よ。時間停止の効果も付いている。

  使うと目立つ収納効率化はわざと付けていないと聞いているわ。

  これを先代から引き継いだ時には、亜空間魔法の宝玉、転移の宝玉、昇華の宝玉が6個、偽装の指輪があったのだけど、私の魔法薬学スキルが上級以上だと知られて、色々な人から追われてしまってね。

  それから、逃げきる為に使ってしまったの。

  今も特級の魔法薬学スキルを中級に偽装する為、偽装の指輪は手放せないしね」


 そう申し訳なさそうに言われたので、「ああ。命が掛かっているのなら使うし、手放せないでしょうね」と、俺なりにフォローする。


 でも、先生は「私が戦えれば、補充も出来たんでしょけど」とまだ申し訳なさそうに言って来る。


 なので「僕は戦えるタイプになりますから、自分で得ますよ。でも、偽装の指輪で隠れきれるんですか?」とファローしながら心配な事を聞くと先生の表情が曇り。


 「そろそろ難しいわね。先達が残してくれた、特級でそれなりのグレードの偽装の力なんだけど」と指輪に触れながら悔しそうにしている。


 「辺境伯領で、無理やりリクルートしている連中の探索や鑑定は、最低でも上級って情報ですね」と、心配になり俺からも情報を告げると。


 「そうね。そろそろ移動しないとな」と、先生はその辺も知っていた感じの返事だ。


 それにホッとしながら「後、今日教わった知識を人に広く教えるのは不味いですか?」と、神が俺に人族を救ってほしいと言っていた事を思い出しながら聞くと、予想外の返事が返ってくる。


 「……、私も考えたことはあったけど、先達は失敗したらしいから」


 「そうなんですか」


 「知識を皆に引き継ぎたいのに、知識を独占又は抹消する為に殺されたり殺されそうになったらしいから」と、悲しそうに言われてしまった。


 「独占と抹消ですか?」と、看過できない情報だと思い聞くと。


 「ええ。取得出来ないと逆恨みする人も居るし、知識をもっと持っているだろうって確証も無しに捕縛に来た人も居るし、敵陣営からは暗殺対象となるし、敵陣営まで知識を広めようとすると味方に殺されるらしいわ」


 「スキル取得の為の私塾もイッパイあるんですが、それとは違ってくるんですね」


 「ええ。と言うか、正しい知識によってスキルを高確率で取得出来る事が、また問題なのよ。

  それを独占したい人、それによって不利益を被る人にとってはね」


 「ああ」


 「私塾レベルでも、あまりに高確率でスキルが取得出来ると、国の組織に組み入れられる事になるわ。強制的にね。

  勿論、簡単に取得できるスキルや比較的簡単に取得できるスキル、それに広く取得方法が知られているスキルでは、そんな事にはならないのだけど」


 「……、一般的な私塾で教えている、剣技とかなら問題にならないと言う事ですか」


 「そうね。別に火魔法とか教えていてもそれだけでは目をつけられないけど、取得率が2割を超えたり、数か月で取得する人が数人出たりしただけでも、もう国の介入があると思った方が良いと言い伝えられているわ。

  命や生活が懸かっているから、得た力を使わず隠し続けて、と言う事も難しいからね。

  そして、得た力はすぐに噂になり、権力者たちの耳に入る。

  まあ、そう言う情報を集める斥候とかも居るんでしょうね」


 それって悪循環だろ。


 折角、先達たちがスキルを取得し易い修行方法を見つけても、見つけたことを知られると、その修行方法は広く知られる事は無くなる。


 しかし、独占しようとした連中だけは強化されるのか。


 だから、余計に独占しようとしてくる。


 悪循環の始まりか。


 もし、悪循環にはまっているのだとしたら、知識を独占しようとしてくる連中に敵対するモノにとっても、勝つ為に知識を独占すべきとなっている可能性すらあるのか。


 俺が、悪い思考の迷宮に入り込んでいると、俺が難しい顔をしていたからだろう。


 「本当に、思っている以上に厄介よ。それを意識しておいて。

  そして、それを回避する自信が無いのなら、広く他人に教えない方が良いわ。

  それで酷い目にあいたくなければね」


 そう先生が忠告して来たので気持ちを切り替えて情報を聞くことにする。


 「どういう形で、広めようとしたかは伝わっているんですか」


 「ええ。私塾を開く形、国王に進言する形、騎士団長になって、冒険者ギルドを通じて、密かに結社をつくって、教会組織に隠れて、目立たない様に僻地の村で。

  でも、探索と言った探す力や鑑定と言う調べる力もあるでしょ。

  だから、全て上手くいかなかったって」


 「そうなんですか」


 「私が今装備している偽装の指輪だって、付与術と偽装スキルを天級レベルで持っていた人が数百個用意したのに、もう残っているのはこれだけなの。

  特級を上回る力で探し出されて、持ち主もろとも消されたり略奪されたりしたのよ。

  僅かな生き残りを残してね。

  栄達や見返りなど求めず、皆で力を共有しようとしただけなのに」


 「……」


 「単純に、魔物との戦いで壊れたとか失われたと言うのも多いだろうけどね」


 ……、スキル知識源泉で得た知識で、スキルの取得について正しい情報を広め、人族を強化して滅びを回避して欲しいって話だったはずなんだけどな。


 また、神様の想定間違いって事。


 それとも支配者になり、自分の身の安全を確保し、知識を広めるだけの権力を得ろって事?


 単純に、国の戦力とか無視できるだけの強さを手に入れて知識を広めろってパターンもあるのか。


 ああ。百能は気に入らない奴は皆殺しに出来るほどの力って言っていたか。


 まあ、多くのスキルを天級に、しかも上限まで鍛えれば、だろうけど。


 なんて言うか、前途多難って実感してしまった。


 まあ、安易に知識を広めると言う間違いを犯す前に教えてくれた先生には感謝だけど。

 スキルを取得する為の正しい知識を広めて人族を強化する。

 それは、どうも安易に出来ない様です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ