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第70話 最後の試練

 主人公は、薬の先生から課された試練の一つである崖登りを無事終えた様です。

 俺は持っているスキルを使い、崖登り用のハーケンの様な短刀を造り、それをつかって一時間半で崖を登りきる事が出来た。


 すると「思っていたより優秀なのね」と、上で待っていた先生にそう言われるが、何度かハーケン代わりの短剣が抜けかけたり、飛行型の魔物であるビッグドラコンフライ(大トンボ)に襲われて火魔法で撃退したりと『それなり大変だったんだけど』と思いつつ先生を恨めしそうに見たのだが。


 「さて、最後の試練よ」と言われると、付いていくしかない。


 「今から見るモノに、敵意を持たないで。

  過ぎた恐怖心も駄目。

  探索スキルで探るのも駄目よ。敵対すると思われたら、それで終わりだから。

  後は、駄目だと思ったら私は無視して逃げれば良いから」


 そう言われても、意味が分からない。


 いや。


 何となく分って来たが、詳細が分からないと危険度が分からない。


 段々と濃くなり、既に異常と言っていい程の濃度の魔素から予想は出来るが、どうなる事か。


 所々霧が濃く立ち込めていて先が見えないが、地面はごつごつした岩場で所々小さな木が生え岩がごろごろ落ちている地面を数キロ歩くと平原に近い地形になり向こうに湖が見えて来た。


 湖畔なんだと思いつつ、先の湖を見ても霧の所為ではっきりとは分からないが、数キロどころか十数キロ以上の奥行きがありそうな湖だ。


 透明度も高いし綺麗だけど、と思っていると。


 「ここからは慎重に、1人で湖に向かってみて」と先生に言われ、先生は横に避けた感じと言うか、俺から離れて行く


 地面が岩でなく土になり、且つ水場が近いからか大量に地面から生えているモノに驚きながら湖にゆっくりと進んでいると水面が急に乱れる。


 そこで足を止めて湖を見ていると、湖の中心位に少なくとも数十メートルはある青色の巨大な竜が現れる。


 霧の合間から見える姿は水竜かな。


 目を合わして大丈夫かなとビビったりしたが、目を合わせても向こうからの敵意は感じられず、探る様にじっとこちらを見つめている。


 人に敵対するタイプじゃないんだ、とも思ったので『敵意は有りませんよ』と、ゆっくり頭を下げる挨拶を。


 動物なんかだと、目をそらすのが良い場合と駄目な場合があるけど、どうなんだろう、と少し心配にもなったが。


 俺が頭を下げたのを見届けた感じで、水に沈んでいく水竜。


 「ふう」と思わず息を吐くと「思っていた以上に度胸が有るのね。あれを見て、そんなに冷静なんて」と言いつつ、先生は俺の傍まで戻って来る。


 「いえ。察知スキルを持っているので、こちらに対し害意は無く様子を見ているだけって分かりましたから」と、あまり冷静でも無かったんだよなと思いつつ答えると。


 「そうか。察知スキルを持っていれば、必要以上に怖がる必要はないって分かるのね」


 「いや。まあ。スキルを騙す様な魔物も居るでしょうけど」


 「そうね。これであなたは私の財産・知識の承継継承者になったわ。

  まあ、まだ力不足だから暫定だけどね。」


 「はあ」と答えつつ、『承継継承者』って言葉の意味を考えてみると、承継が理念とか思想とか、継承が財産とかを引き継ぐって意味だったかな。


 知識と財産を引き継ぐのだから『承継継承者』か。


 それとも先生の言う知識の中には思想とかも入っているのかなと思いつつ先生の方に意識を向ける。


 すると先生は周りを見回した後「ここには、あの竜に敵だと思われない人しか来られないから」と言って足元を見ながら「足元にあるモノが何かは分かっているんでしょ」と俺に聞いて来る。


 「凄いですね。かなりの魔素源泉なんでしょうけど。

  足の踏み場が無いくらい、魔素が濃い場所にしか生えない薬草が生えているんですから」


 「ええ。ここは、私が師匠から引き継いだ場所。

  そして、今から薬草を採取しながら、師匠から教わった知識をあなたに伝えて行くわ。

  紙には残さず、ステータスウィンドウのメモ機能を使ってね。

  それなら、誰かに見られる事も無いから」


 「そうしておくと、精神支配とかされない限り、知識はもれないのか」と、考えられる懸念事項を話してみると。


 「まあ、奴隷にされて強制的に知識を話すように命じられるパターンもあるけど」と、先生も懸念事項を教えてくれる。


 「そっか。そうですね」


 「正直、私の次の承継継承者が居なくなるのではと思っていたけど、なんとか間に合って良かったわ。

  あなたも、出来る限り後継者を見つけて、知識と財産を承継・継承してね」


 先生は、ホッとした感じの後、お願いと言う感じで俺に言って来るが。


 「……、なんか領都に危険な連中が居て、俺もそいつらに強制的に軍に参加させられるのでは、って忠告されているんです。

  そうなったら知識を強制的に話すように命ぜられると言ったケースもありそうなんですが」


 そう現状の懸念事項を伝えると。


 「ええ。だから、本当はもっと貴方が強くなってからにしたかったんだけど、私もあいつらに監禁される可能性があるから」


 そう先生も同じ危機感を持っているとの事。


 その事に驚きつつ「えっ。あ。そうか。魔法薬を造れって。転移も戦争の為に使えってパターンもあるのか」と、予想される事を言うと、先生は頷いてから状況を教えてくれる。


 「そう。そうなったら私は転移して逃げるつもりだけど、スキルには色々な力があるから確実に逃げ切れるとは言えないし、それだとこの場所の継承が出来なくなる可能性もあるでしょ。

  なので、焦ってあなたを選んだというのもあるの。

  だから、もし、知識を漏らしたとしても、この場所の事を彼らに知られたとしても、それは私の責任でもあるから気にしないで良いわ」


 そう言ってくれるのは嬉しいけど、先生の責任に出来る事ではないよな。


 早めに、この領都から逃げ出さないと等と考え込んでいると。


 「まあ、あの連中は、竜にこの場所にとどまる事を認められないと思うけどね。凶悪な気配を纏っているから」と俺の不安を軽くする発言をしてくれるが。


 「そうだと良いんですけど、竜には竜の基準とかありそうですし、やはり財産も知識も守るべきかなと思いますけど」


 「そうね。貴方がその認識で居てくれるのなら良いわ。では、承継を始めます」


 そう思考を切り替えた先生は様々な話をしてくれた。

 見事試練をクリアしたようです。

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