第5話 神々の事情
ネイルベアに弾き飛ばされ、意識を失ったかと思ったら、神らしき存在の居る場所に居ました。
その神らしき存在から謝られ、説明が始まるようです。
「状況が分からないだろうから、お詫びと言う事で一通り説明しよう」
そう軽く光っている人型の存在が言って来る。
「お詫び?」
「うん。まあ、その辺も順序だてて説明するよ。まず、私は神って感じの存在。それは分かる?」
「いえ」
「……。そんなに神々しさが無いかな」
そう言った後、力を解放したのか、神って感じの存在が見ていられない程の眩しい光の塊になり、そこから放たれる光に押しつぶされる様な感じになる。
「本来は、こんな感じなんだけど、君が怖がらない様に抑えているんだ」
「はあ」
「はあ、か……。自分に絶望し、世界に絶望し、自分の中の神を殺した感じなのかな。ごめんね」
そう謝られても困るのだけど、今更神って感じの存在が俺に何の用があるんだ。
そう思っていると、どうも俺の思考を読めるみたいで、俺の返事を待たずに話を始める。
「実は、君は転生者なんだ」
そう言われても意味が分からない。
「うん。前世の記憶を解放するよ。
本来は、転生時に君に与えられたスキルが覚醒した時に前世の記憶の開放は行われるのだけど、今がその状態だから」
そう言って俺に対して手をかざしたと思ったら、思い出される前の世界。
38歳の独身男性。
そこまで生きて、そこでビル火災に巻き込まれて死んだんだ。
まあ、家族経営の小さな会社で働く、それなりの人生か。
でも、今にして思えば、近代日本と言う、多少公平でそれなりに平和な世の中で、便利で娯楽に満ち溢れていた世界だったから幸せだったのかな。
まあ、全然平和の無い地域もあったし、俺の住んでいた地域でも色々な許せない問題があったけど、今の生活を思い出せば幸せだったと言える。
「うん。心配だったんだけど、特に問題なく受け入れてくれたね。
それで、君にはこの世界の人族を救って欲しいんだ」
その言葉に相手が神って感じの存在と言う事を忘れ「嫌です」とハッキリ強い口調で言ってしまう。
「即答か。色々と思う処はあるだろうけど、説明を続けるね」
そう言って、少し俺を憐れむ感じになった神からの説明が続く。
「僕は、この世界の人の神になる。
俺の子供達とも言えるこの世界の人族である人間、獣人、亜人は、確実に滅びへの道を進んでいるんだ」
それは結構な事だ。
そう思っていた内心をまた読まれたようで。
「今の君はそれを望むのかもしれないけど、僕たちの立場だとそうはいかないんだ」
そう少し悲しそうに言った後、話を続ける。
「僕たちは、君達の信仰心といった思いに影響を受けている君達の存在からあふれる生命力や魂から漏れ出る力を得て、世界を運営したり、力を蓄えたり、新たな神を生み出したりしている。
だから、この世界から人族が居なくなると、僕たちは得られる力が減ったり無くなったりしてしまうんだ」
「それの何が拙いのですか」と、喧嘩腰で言ってみたのだけど。
「僕は人の神と言ったけど、人の神と言う括りで、この世界だと178の神が関わっている。その集合体が人の神になるのだけど、その力はバラバラでね。
僕なら、この世界の人族が居なくなっても問題は無いけど、この世界にしか係わっていない様な弱い神も居るから、そう言う神にとっては、この世界が終わる事は致命傷なんだ」
そう言われても良く解からないな。
そう思いつつ「神々は何故力が必要なのですか?」と聞いてみる。
「簡単に言うと、滅びたくないからかな。
君の知識で分かる様に簡単に言うと、この世界を創り管理しているのは神々なんだけど、神同士の滅ぼし合いとか、普通にあるんだよね。
それに生き残るには力が必要。
その為のエネルギー工場なんだ。この世界は。
勿論、この世界がある理由はそれだけでは無いのだけど、大きな目的はエネルギーと思ってもらっていい」
俺達は、天然ガスか石油って感じなのか。
いや。それとも違う気がするけど。
「そして、困るのは人の神だけじゃないんだ。
こういう世界を運営する場合、事前に創った世界の理だけで完結してくれればいいんだけど、それを補完する為に細かい作業が必要でね。
だから、異なる性質の神々で分業し世界を運営している」
また話が分からなくなったな。
滅ぼし合っているんじゃないの?
「滅ぼし合ったり、協力し合ったりと、色々なんだ。
この世界は、人の神だけでなく、魔族の神、魔物の神、精霊の神の4つのグループで協力し合い運営している。
このうち、人の神は細々とした事の運営を任されているのだけど他の神々はそれが苦手と言うか、面倒がってしたがらなくてね。
しかも、人族は滅びたら人族から得られる力はなくなるから世界全体で見たら得られる力は減るでしょ。
まあ、人の神はこの世界から手を引く事になるから、その分は他の神々に割り当てられるんだけど、世界の維持に使う力はそれ程変わらないから、結果得られる力が減るんだよね。
だから、人族が滅びる事も人の神がこの世界から手を引く事も他の神々も望んでいないんだ」
ふ~んと思いつつ、疑問を聞いてみる事にし、
「魔族と魔物は人族に敵対していて、お互いに滅ぼそうと。
正確には、魔族と魔物に人族は滅ぼされそうになっていると思っていたんですけど」
と、聞いてみたのだけど。
「うん。それは、そういう風に世界を創っているからなのだけど、完全に滅ぼされると、魔族や魔物は兎も角、魔族の神や魔物の神は困るって事」
なら、滅ぼさない様に指示を出せばいいのに。
「それについては、人族に問題があってね。
制御されずに世界を漂い流れている魔力である魔素の薄い場所では魔物や魔族は生活し辛いから、そう言う地域まで魔族や魔物は、あまり攻め込んでこない筈なんだ。
そう言った場所がある事や中立である精霊や人に有効的な魔物も居ると言った緩衝材があるので、人族を完全に滅ぼすまでは行きにくくなっている。
だから、滅ぼされそうになっているのなら皆で力をあわせれば何とかなるのに、未だにいがみ合っているでしょ」
「ええ。未だに人族同士の戦争はあるらしいですからね」と、少し嫌味を込めて口にする。
それに気が付いたようで、
「本来他の陣営を簡単に滅ぼせるような理にはなっていないのに滅びそうになっている。
つまり、魔物や魔族がと言う話ではないんだ」
と、少し苦笑いした感じで状況を説明されてもな。
「人なんて滅ぼされればいいでしょ」
そう俺が吐き捨てるように言うと。
「はぁ。
まあ、その辺は僕のミスになるのかな。
人族に関する世界の理を、もっと団結とか友愛に働くようにしておけば良かったのだけど、人族同士の争いでも人族を高めようと思ったんだ」
その位わかるだろうに。
そう思ったのが、また読み取られたのだろう。。
「僕たちは、神を自認する存在だけど、未来を読むことは出来ない。君達よりは正確に予測することは出来るのだけどね」
「はあ」
「君の前世より強力な発情期であるピンク発情期があるのも、この世界の人族が滅びない為のモノなんだけど、それすら上手くいっていない感じだからね」
「ああ。あれもなんですか」
「うん。正直、力不足を嘆く毎日だよ」
もう、駄目なんじゃないのかな。あの世界は。
そう考えると、またそれが読み取られたようで。
「まあ、神や世界に関する話はここまでにして、次の話に行くと君は転生者だ」
と、神って感じの存在は、特にフォローなく話を先に進め始める。
転生か。
前の世界の知識にある。
娯楽小説なんかでは、主人公に偶にある設定だったかな。
でも、何故転生者が必要なんだろう。
主人公の絶望は深そうですね。
でも、転生者はなぜ必要なのでしょうか。
毎日投稿していた前作を一時休止し、こちらの投稿を優先する事にしました。
1~7日に一回程度の投稿かな。