第28話 領都の冒険者ギルド
故郷の村から出て目的地とした領都に着いた様です。
さて、どんな事が待っているのでしょう。
魔物を倒しつつ移動を続けていた為に昼を過ぎてしまったが、この辺境伯領の領都であるエンターニア市と、その向こうに巨大な湖であるリーナス湖が見えて来た。
とりあえず、しばらくはあの都市での生活になるのだろう。
治安が良いといいがとか、物価はどうだろうとか、嫌な連中が居ないと良いなとか、師匠・先生たちはご壮健かなとか考えつつ走り続けると城壁と人の出入りする門が近づいて来る。
うん。
12歳まで、母に連れられてスキル取得の為の訓練によく来ていた都市だ。
親父が熱い時期と寒い時期に狩りに行くのを嫌がっていたので、その間、この都市にお世話になる事が多かった。
母が亡くなり来なくなって4年もたっているが、それ程変わっていないと良いなと思いつつ城壁の門へと向かった。
門に並ぶと、直ぐに俺の順番がやってくる。
城壁の外には魔物が居て当たり前なので、市町村間の移動をする人は多くはないからだろう。
しかし、改めて見ると都市全体を囲っていると言うのに立派な城壁だ。
高さ30メートル、厚さ10メートルくらいあるのかな。
それぐらいないと、巨大な魔物にあっという間に壊されると言う事なのだろう。
それらの整備の為に、結構な税金を取られていると言うのも有るのだけど、まあ、それは良いか。
門番に話しかけられ、市に入る為の検査が始まった。
「ステータスウィンドウを可視モードにして、こちらに見せろ」と、それなりに横柄な態度で命じられる。
まあ、一日こんな仕事をして居たらな、と思いつつ「はい」と答え、ステータスウィンドウを可視モードにして門番に見せると。
「ふ~ん。レベルが思ったより高いな」と、何故かそれ程高くない筈のレベルが気になるようだ。
注意した方が良いのかなと思いつつも「はい。冒険者志望なので」と、正直に答えると。
「なる程な。しかし、いま領都では領軍の戦士団も募集しているが」と、向こうの目的がはっきりとした。
正直、軍に入る気はないので「小心者なので、人と戦うのは」と、弱そうに言ってみる。
すると「ふ~ん。その辺は慣れもあるがな。まあ、気が変わったら領主の館の近くの騎士団の詰め所に行けばいい」と、何とか強引な勧誘は回避は出来たみたいだ。
まあ、レベルは高くない筈だし、一応だったのかな。
そう推測していると「で、何日分の通行許可証が必要だ」と、門番の実務に戻った様なので安心ししながら会話を続ける事とした。
「何日分があるんですか?」
「1日、10日、30日だな」
「では10日で」
「なら980GAZUだ」
いわれた通り980GAZUを払い、銅で出来た日付の書かれた10日分の通行許可証を受け取り都市に入る事が出来た。
まあ、ステータスウィンドウの自分の名前は事前に確認し、犯罪者である黄色や殺人者である赤で無い事は確認してあったんだけど、レベルが高いと戦士団に誘われるとはな。
母と来ていた時は、ああ言うのは無かったけど。
そう言えば母が亡くなる少し前位に、ここの領地を治めている辺境伯は、隣の国へ攻め入って領地を奪い取ったんだったな。
そこから推測すると、防衛の為か更に攻め込む為の戦力が欲しいと言う処か。
早めにこの領都からは離れた方が良いかも、ここに来たのは失敗だったかも、等と考えつつ母と泊まっていた宿に向かう事にした。
宿に向かいながら、街並みや人の行き来を確認してみる。
街は記憶と比較してもあまり発展はした感じはないし、何か殺伐とした感じもある。
これが戦争前とか戦争中の雰囲気なのだろうか。
そう思いつつも、他の細かい事も見て行くと、流石に都市と言う事で、人間と獣人以外にもドワーフとかエルフとかも極稀に居る様だ。
都市の街並みは、中世ヨーロッパより、ちょっとカラフルさが無いかな。
土魔法で、コンクリートや岩の様な建物すら出来る筈だが、そう言った建物の数はそれほど多くないか。
この都市には、天級の土魔法持ちが居ないのかもしれない。
そんな事を確認していると、目的の宿に到着した。
母と泊まっていた宿の中でも良い方の宿を思い出して行ってみた処、今も営業していたので部屋を取る事に。
5日連泊で1割引き、10日連泊で2割引きとの事なので、朝夕食事つき、個室、一日3000GAZUの部屋を取り、前払いで27000GAZUを支払う。
犬人族のおばさんたち4人が経営している宿だけど、そう言えば夕食と朝食の時は若い女性のウェイトレスが居たような。
そんな事も思い出しながら、一応冒険者ギルドへ行ってみる事に。
一応と言うのは、もう夕方近くのこの時間だと依頼達成の報告で混んでいる状況だろうから、冒険者ギルドへの登録は出来なさそうだと言う予測も有るから。
だけど、まあ、一応様子を見ようと思って行ってみたのだけど。
やっぱり、懸念していた事が当たっていた。
宿のおばさんに確認した処、冒険者ギルドの場所は変わっていなかった。
おばさんの微妙な反応から少し、と言うか門番とのやり取りからも心配していたのだけど。
まあ、流石に活気はある。
だけど、母と来た時の半分以下かな。
しかも、冒険者ギルドに居る人達も、結構な年の人や、手や足の無い人。
その割合が多い。
『これは戦争に人を取られたな』と思いつつ、掲示板の張り切れていない数の依頼を見ていると、「冒険者ギルドへ御用ですか」と若い女性に声を掛けられる。
さっき一通り様子を確認した時に受付に居た、美人だなと思った少し年上のお姉さんだ。
「いえ。今日は様子見なんですけど」と周りを見渡すと。
「閑散としていてびっくりした?」
「いえ。もっと寂れた村の出身ですから」
「そう。で、今日は冷やかしに来たんだ」
そう言われてしまうとな。
「明日の空いている時間にでも、冒険者登録しようと思っていたんですけど」
そう言うと「まあ、事情があって職員は減ったけど、この時間でも登録は可能よ。あちらで話をしましょう」と受付に併設されている食堂兼酒場に誘われる。
ちょっと強引な感じに嫌な予感もするけど、冒険者としてお金を稼ぐつもりだから、行かないと駄目だよな。
戦争と冒険者。
どんな感じなのでしょう。
変更点。
『母が亡くなった少し後に他国に攻め入った』を、『亡くなる少し前』に変更。




