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第16話 村の不正と価値観

 主人公は、旅立ちの意思を固めて住んでいた家を燃やしました。

 そして出立ですが。

 住んでいた家を燃やし『さて、新天地に向かうか』と門に向かい始めた処で、五月蠅そうな連中がやって来た。


 煙の件と、家の焼却に感傷的になり、時間をかけ過ぎたかのかもしれない。


 こちらに村長とその取り巻き2人と孫娘。


 それに親父と狩り仲間兼取り巻き3人が向かって来ている。


 俺は無視して門に向かおうとすると、村長の取り巻き2人が俺の前に立ちはだかり、背の高い方が高圧的に俺に聞いてくる。


 「おい。お前がネイルベアを倒したって本当なのか」


 「そんな事、無能の俺に出来る訳ないでしょ」


 「なっ。お嬢さんが嘘を言ったのでも言うのか」


 「なら、最初から聞かなければ良いだろう」


 そう冷たく告げると、暴力を振るおうと手を振り上げている。


 その様に暴力を振るわれ続けていた俺の体は固まるが、今ならこんな連中瞬殺できると睨み返す。


 こんな事なら、精神異常耐性スキルを装備しておけばよかったか。


 でも、スキルの力に頼り過ぎず、自分で克服できる所は自分で克服しよう。


 そんな事も考えていると「待て。お前、スキルを得たんだな」と、村長が怒った口調で言って来る。


 「それが何か?」


 「なら。さっきの転出許可は無しだ」


 「それは無視させてもらいます」


 「なに」


 「一応義理を通しただけで、別にアンタに許可をもらえなくても、ここから出て行くだけですしね」


 「な。何を。村人の義務を何だと思っている」と、怒りながら言って来るが。


 「そんなモノ、俺には無いでしょ。

  家や畑の土地の賃借料や村の防衛を維持する為に税は払っていたのに、成人を迎えた時に支給されるはずの武器・防具すら、貰っていませんからね」


 そう、村長達が俺にしてきたことを指摘する。


 すると「そ。それは今から」と、多少は事態を把握したようだが。


 「結構です」と、それは無視する事にする。


 「力を得た者が村を守らなければ、この村は滅びるんだぞ」


 そう、更に顔を赤くして怒ってくるが。


 母との修行で他の村も見た事のある俺が気が付かないとでも思っているのか。


 その浅はかさに呆れながら「滅びれば良いじゃないですか。こんな村なんて」


 そう告げると、意味を理解できない様で、「何を言っている。この村には世話になったものも居るだろう」とまで言って来る。


 馬鹿か。


 散々、無能者と言葉や態度で虐待して来たくせに。


 人によっては暴力すらあったのに。


 そう頭にくるが、冷静に「何処に居るんです」指摘する。


 そして改めて周りを見渡してみた処で、そんな連中は居ない。


 「唯一、世話になっていた母は死にましたしね。

  残っている連中は、俺から搾取し、俺を虐待していた連中ですが」


 そう言って、村長を睨みかえしていると、農作業をしていた村の連中も『何事か?』と言う感じで十数人近づいて来ていて、俺達の話を聞いている。


 そろそろタイミングかな。


 そう思ったので、言うべき事を言っておくことに。


 「気が付いていないと思っていたんですか。

  本来村の防衛にまわすべき税をアンタらが着服している事を」


 この国では、本来村で徴収した税は、3分の1が国に、3分の1がその地方の領主に、3分の1が市町村にが原則だ。


 そして、村に残る税の多くは、村の防衛に使われるはず。


 なのに、『この村では村長が防衛費をケチり懐に入れているから、何かあれば直ぐに滅びる事になる。だから、早く村を離れた方が良い』と母から注意されていた。


 それをハッキリ告げる事にした。


 一応、俺の育った村に最後の貢献する為に。


 「なっ。何を」と、言い返せない村長。


 「よその村に行った事があれば、みんな気が付くんだよ。

  城壁を作ったり補修できたりする土魔法使いに頼まず、自分達で補修している為に、何かあれば簡単に穴の開く貧弱な城壁。

  村の防衛の為に雇っている人の少なさ。

  村の防衛に関わる人の装備の貧弱さ。

  まあ、俺に支給される筈だった武器・防具なんかもそうだけど」


 そう言うと、目をむいている村長と、周りで俺達の話を聞いている人達をこの場から遠ざけようとし始める巻き二人。


 幼馴染みは、驚いているから知らなかったのか。


 まあ、演技の可能性もあるか。


 「この村が滅びるとしたら、あんたらの所為だよ」


 そう言って、周りに自分達の不正を聞かれた事にビビったり、俺を睨みつけている村長達の横を通り過ぎると、今度は親父が立ちはだかる。


 「おまえ。スキルを手に入れたんだな。なら狩りを手伝え」


 「お前バカか。手伝うわけがないだろう」


 「親に従うのが子供の義務だろうが」


 「親より強くなった子供は、虐待して来ていた親に虐待し返すのが義務ですが」


 「な。何を言っている」


 「所詮、そんなのは、あんたの中の価値観。

  俺の価値観だと、散々俺を虐待して来たあんたをなぶり殺しにしなければらないって事だよ」


 「なっ。訳の分からない事を言って、親に逆らうな」


 「ならハッキリ言ってやるよ。

  優しくしてくれた人には優しさを返し。

  助けてくれた人は、困った時に助けてあげる。

  だけど、俺がしてきた献身に、お前がした事は俺に対する虐待だけだろう。

  その虐待を自分がやり返されないって思考が理解できないね」


 「五月蠅え」


 そう言って逆上し、殴りかかってくる。


 その拳を、ワザと額で受けて拳を潰し、お返しと、もう声も聞くたくないので顎を殴り顎の骨を折る。


 散々なぐられてきた為、トラウマで体が硬直してしまったが、何とか上がっているステータスによりやり返す事が出来た。


 と言うか、体が硬直したせいで加減が出来ず、あごの骨が折れただけでなく口から結構な出血をして倒れ、気を失った様だ。


 まあ、正当防衛だろうと、ステータスと念じステータスウィンドウを表示して見ると、名前は黒く表示されている。


 殺人者になったら此れが赤、強盗などの犯罪者になったら黄色で表示されるんだけど、違うから大丈夫だろう。


 まあ、暴力程度では世界の理で認められる犯罪では無いから、散々虐待されてきたんだし。


 「屑どもが。こんな村、滅びればいいんだよ」


 そう吐き捨てて、門へ向かい村を後にした。

 主人公にとっては、最後の村への献身と言う事で、不正を暴きました。

 父親に対しては、殴られれば殴り返されると言う事を教えた、と言った感じなのでしょう。

 あまり良い出立ではないですが、主人公はこれで自由になれるのでしょう。

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