第135話 再びの強盗
主人公は、また通り過ぎるだけの町に到着しました。
前の様に、門の使用料を払わないからと襲われたりするのでしょうか。
魔素だまりで得た宝箱等について皆と話しながら移動を続けていると、また町を守る城壁が見えて来た。
戦闘用にセットしてあるスキルを、通常に戻しつつ風魔法だけはセットしておく。
風魔法の『風の護り』を使う為だ。
町に到着し迂回路を使うが、ここも迂回路は荒れている。
しかも、城壁で警戒している連中は剣呑な空気だ。
「これは、また同じ結果になるかもね」とタチアナが迂回路が荒れている状況から今後のトラブルを予想したようでウンザリしながら言って来る。
「迂回路が荒れていると言う事は、そうなんですよね」と、ラシェルの方は顔をしかめている。
「多分ね」
そう言いつつ迂回を終え、新たな街道へ入り次の村へ向かう。
後ろを見ると、やっぱり狼煙が上がっている。
もう夕方も近いから強盗団は解散しているのかと思ったら、やはりやって来た。
先程と同じ様に34人に囲まれ、同じやり取りをして、全滅させる。
はあ。
「強そうな人が居る様に偽装すればよかったのかな」と俺が愚痴ると。
「えっ……。それはそうかもしれないけど、所詮荷馬車1台だし、護衛が十数名いるとかでもないし」と、タチアナなりの分析を教えてくれる。
「そうだよね。まあ、しょうがないか」
そう呟いた俺が、落ち込んでいる様に見えたのかもしれない。
タチアナは「強盗をやっていた人達が居なくなったから、これでこの辺も良くなるんだよね」と、『良い事をしたのでは』と言った感じで言って来るが。
「どうだろう。余計困窮して酷くなるかもよ」と、俺の認識を伝えておく。
「そ、そんな事はないと思うけど」と、タチアナは俺の予想を否定してくれているが、それを信じていない感じ。
なので「そんなに簡単に良くなるなら苦労はしないって、俺は感じているけどね」と『難しいよ』って感じで言うと「そうだよね」と、タチアナは少し悲しそうに呟いた。
強盗を倒した後、探索範囲を広げながら街道を進んでいるとCランクの魔素だまり3つ程があったが、こんな強盗の出る街道は早く抜けたくて、魔素だまりには寄らずに馬車を走らせる事にした。
次の村には暗くなってから到着。
村の近くだと明かりをつけても魔物が寄って来ないだろうと、魔石ライトで道を照らしながらの移動だ。
村を守る城壁の外にある荒れている迂回路を通り、先の街道へと。
こちらを観察している様だけど『何故』って気配が多いかな。
村に入らず迂回するような奴は、殺されている筈なのに。
村から強盗として参加している人達は、まだ帰ってこないのに。
そんな感じだろうか。
最悪、襲って来る連中もいるかと思ったが、それは無く村から順調に離れている。
「襲って来なかったね。それとも、この先に居るの?」とタチアナが確認してくる。
「いや。俺の調べた限りでは居ない。
あの村で俺達を監視していた連中の気配は『何故』って感じだから、まだ分からないけどね。
だから、スピードを上げて移動しているし」
俺がそう言うと、しばらく黙り込んだ後「あんな事しないと駄目なのかな」と、タチアナが言い辛そうに聞いて来る。
「殺すべきでは無かったって事?」
「逆よ。村や町にお金を落とさず通り過ぎるような奴は、殺すって」
「あ~。真に受けない方がいいと思うけどね。
あそこまでやる連中なんだから、門を使用しようが、市場を開いて貢献しようが、楽に襲えると思ったら襲ってきた可能性の方が高いと思うけど」
俺が移動しながら自分なりに出した結論を言うと「そっか。そうだね」と、タチアナも同意してくれる。
「簡単に取得出来る農業スキルとかの恩恵で、食っていくのには困らない筈なんだけど、何がどう狂っているのか。
辺境伯に高い税とか払わされているのかもしれないし、働けない家族を養っている人が多いのかもしれないし。
でも、あそこまでやったら終わりだよね」
「うん……。人族の為にならない……か」と、タチアナが俺が発言し違和感を覚えた言葉を悲しそうに呟いている。
「あまり、その辺は真に受けないでほしいんだけど」
「でも、あんな事が国中で起こっているのなら、この国は弱体化するしかないよね」と、タチアナには愛国心がある様で落ち込んでいる。
ああ。
単純に国が住み難くなったら、多くの人が苦しむことになる事を危惧しているのか。
それとも、単にまじめで優しいからなのか。
そう思いつつ「どうなんだろうね。辺境伯領が乱れているだけかもしれないし」と、希望的観測を言っておく。
「そっか、次はレーチス公爵領なんだよね。レーチス様は、ちゃんとしたお方だから、大丈夫だと思うよ」と、タチアナの雰囲気が多少明るくなった。
「まあ、行ってみれば分かる事だし、先を急ごう」
そう明るくを意識しながら言って、闇の中を進み続ける事にした。
辺境伯領を出たら、治安はよくなるでしょうか。




