第122話 滅びた生まれ故郷
領都から逃げ出し街道を馬車で移動していると出会った冒険者達。
その冒険者達から生まれた村が滅んだと伝えられました。
滅びた生まれ故郷の村について注意をしてくれた冒険者達と別れて、荷馬車のスピードを上げる。
直ぐに村が見えてきた。
すると、遠目でも村を守る城壁が破られた跡が見えている。
城壁に近づくと、その隙間から家々が見えるのだけど壊されて原型を留めていない。
探索スキル、風探索、土探索を使い、生存者がいないか確かめたが誰も居ない。
門の周りにいて警戒している冒険者や騎士団の人達だけ。
俺をスキルが得られない無能と馬鹿にしていた連中は居ない。
だから言ったんだ。
着服せず、防衛に金を掛けろと。
でも、間に合わなかったのか。
俺はいずれ村を出て行くつもりだったし、忠告すれば虐待が酷くなるのは目に見えていたし。
村の入り口に居る他の村の冒険者や騎士12人にも声を掛けられたが、生存者は居ないそうだ。
は~。
暗くなる迄に出来るだけ距離を稼ぎたいと言って、その場を離れる。
しばらく進むと、タチアナが声を掛けて来た。
声も偽装されていて男の声で「ツイラ村って、貴方の出身地でしょ」聞かれるが。
「そうだね」と、冷たくいってしまう。
「全滅だって事だけど」
「ああ。念入りに探ってみたけど、生きている人は居なかった」
「父親がいるって」
「ああ。俺を虐待し、母が死ぬ原因を作った父親は居なかったな」
「……、寄らなくて良かったの」
「今は逃げるのが先だし、生き残りにあった処で、八つ当たりしてくるだろうしね」
「八つ当たり?」
「そう。俺が戦闘系スキルを取得して村を出る時に、村を守れって言われたんだよね。
村に育ててもらったから村を守る義務があるとかって。
でも、俺は村を守る為にと成人を迎えた時に支給される防具すら貰っていなかったし。
それで、指摘したんだよね」
「指摘?」
「村長が、村の防衛費を着服していて、村は何時滅んでもおかしくない状態だって。
指摘が間に合わなかったのか、それとも指摘されても防衛に力を入れなかったのか」
「そ、それって犯罪でしょ」
「ああ。見ればわかる程度の粉飾なのに、それを指摘すべき人達は賄賂でも貰っていたのか調査・指導しなかったようだね。
本来は土魔法使いに頼んで治すべき城壁の一部は手作業で治していたし、弓矢とかの常備数は少なかったし、予備の武器なんかも酷いのは竹やりとかだったかな。
鋼鉄の槍とか揃えるべきなのに」
「そ、そんなのを放置するなんて」
「母は何度か指摘したけど余所者扱いされて聞いてもらえず、俺はスキルが得られないって馬鹿にされ虐待されていたから、変に指摘すれば虐待が酷くなるって無視していたしな。
だから諦めていたんだけど、やっぱり、こうなるのか」
「……、そっか。滅ぶべくして滅んだのね」
「まあ、人族全体がそんな感じなのかもしれないけどさ」
そう言うと、タチアナは複雑そうに黙り込んでしまった。
ラシェルもチェーリアも、複雑そうにしている。
まあ、村が滅んだんだしね。
俺は、冒険者として彼方此方の市町村を見て来た母の言う事すら聞かないと諦め連中を放置した。
だから、皆死ぬことになった。
俺を虐待していた連中なんて、死んでざまーみろと思うけど
俺を虐待なんてしようのない、まだ生まれたばかりの赤ん坊も居たか。
俺はどうすればよかったんだろう。
こんな連中は、人族の為にならないと、殺して世直しをする方が良かったのだろうか。
まあ、殺したからといって、改善するとは限らないし、俺に殺人者の称号が数日から数十日付くだけか。
ん。
人族の為にならない?
そんな事を考えた事は無かったはずだけど。
ああ。
神様に人族を救ってほしいなんて言われたから、そう言う考え方もするようになったのか。
しかし……。
あんな村、滅びれば良い。
そう思っていたけど。
人なんて滅びれば良い。
そう神様に断言したけど。
実際に滅ぶ事になったら、今以上に嫌な気持ちになるのだろうか。
俺は、どうすれば良かったんだろう。
俺は、どうすれば良いんだろう。
主人公の生まれた村は、主人公の指摘通りに滅びた。
流石に、主人公も後味の悪い物を感じている様です。




