第116話 買い物
主人公は、これから仲良くやって行こうとラシェルを抱きしめたのですが、ラシェルの方は微妙な感じです。
抱きしめていたラシェルを解放しても、彼女の表情は暗いまま。
う~ん。
「まあ、先ずは、この辺境伯領を出てからだな。
俺も考えが甘かったから、二人との関係をどうするのか、二人をどう強化するのかとか色々と考えておきたいし。
まだ、肉体関係もないしね」
そう二人との関係をどうするかについて先送りを選択する。
これも間違いかも、と思いつつだけどね。
するとチェーリアが「肉体関係がなんなのよ」と、気になった事を聞いて来た。
「ああ。幾ら関係を持っても、君達の方が生理的に駄目とかになったら、やっぱり別れるだろうからね」
「そんなの、貴方が命令すれば終わりでしょ」
「そうなんだろうけどね。反応のない女性を抱き続けるのも、お互いに辛いかなって」
「それは、あんたが下手なだけでしょ」
「なら良いんだけど、あれって気持ちに影響される部分も大きいからね。俺の方が立たなくなるかも」
この不能野郎とか言われるかと思ったが、チェーリアは何も言わなかった。
「とりあえず、関係を進めてみるしかない。と言う事で、俺は最後の買い物をしてくるけど」
そう言いつつ、護身用の鉄ミスリルの細剣をラシェルに渡す。
「ラシェルは、買い物とか無いの?」
「今は、特に」
「そっか。まだ、そんな気持ちにならないか。まあ、とりあえず、馬車が来てからでも良いし。
じゃあ、行ってくるから」
「はい。行ってらっしゃいませ」と、行ってくれたのはラシェルだけだけど、まあ、ゆっくり関係を進めて行こう。
昨日馬車を買った商店には、昼前には準備が出来ているでしょう、と言われている。
なので、まだ時間は有るのだけど、腕のいいドワーフの鍛冶師が居た武器屋にも行ってみたくなったので、宿を出た。
「こんにちは」
そう言って、お店に入ると、誰も居ない。
奥でカンコンと音がしているから、多分裏で作業をしているのだろう。
これで、よく盗まれないなと思っていると、カウンターの下からドワーフの女性が出て来た。
何か作業中だったのか寝ていたのかは分からないけど「お客かい?」と、少し不機嫌な感じで聞いて来る。
どうも、店主と同じで商売人ですって感じで接してくる人では無いようだ。
「はい。武器と防具を見せてもらいたくて」
「何が良いんだい」
「鉄ミスリル合金製で、鋼鉄製に見える武器と盾が欲しいんですけど」
「へ~。まあ、ミスリル製は高いし、狙われるからね」
「そう言う事です」
「でも、鉄ミスリル合金製なんて使う技量は有るのかい?」
「まだないと思うんですけど、これから成長させる予定なので」
「ん。あんたの装備品じゃないのか」
「ええ。従者用の武器と盾です」
「えらい、奮発するな」と、驚かれるが。
「その程度の魔物と対峙させると言う事でもありますけど」と事情を説明すると「そっか。それはそうなのか」と、納得した感じになってくれる。
なので、武器を見せてくださいと言おうとした時に「ん。客か」と前に母の形見を補修してくれたドワーフの鍛冶屋が出て来た。
「ああ。あんたか。今日は、何だい?」と言って来る鍛冶屋に「あんた、知り合いかい」と聞いている処を見ると店員ではなく奥さんかな。
「ああ。良い武器だけ買っていく人族が居るって言っただろう。こいつだよ」
「ああ。中古品でG2の良い奴だけ買って行ったって」
「そういう事。今日は何だい?」
「従者が出来たんで、それに使わせる武器が欲しくて。
将来を考えると良い物を与えておきたいし、かといって高額過ぎてトラブルになりそうなミスリル製は不味いだろうから、鉄ミスリル合金製でG1かG2くらいの良品で安いのが無いかなって」
「見た目も、鋼鉄製に見えるのが良いって言っていたな」と、言い忘れたことを奥さんがフォローしてくれる。
「ああ。そうです」
「となると、中古品は無いぞ。直ぐに売れるからな。新品も、それ程無いし」、顎髭をさすりながら、少し困った感じで言われるが、幾つかあるなら買いたい。
そう決断し「見せてもらえますか。多少お金に余裕は出来たので、買いに来たと言うのもあるので」と言うと「そっか。ちょっと待ってろ」との事。
そう言って持って来てくれたのが、鉄ミスリルの剣G2、鉄ミスリルの槍G2、鉄ミスリルの盾G2、鉄ミスリルの斧G2、鉄ミスリルの槌G2の5つ。
「一通りあるんですね」
「まあ、準備はしてあるよ。こいつらは、鉄3に対しミスリル1だから、鋼鉄に見えるだろう」
「そうですね。これなら、鉄ミスリル合金製と疑う人はいるだろうけど、確信する人は鍛冶スキル持ちとかだけかな」
「まあ、そんな処だな。で、どれを買う」
「値段次第かな。まだ得意な武器が決まっていない人も居るし」
「そっか。どれも50万GAZUだ」
「同じ値段なんですね。いや。そうなるように造ったのか」
「そういう事だ。どれにする?」
「全部もらえます?」
「良いが、大丈夫なのか?」
「実は、今日にでも、この都市から離れようと思っていて」
「ああ。そういう事か。なら1つ30万で良いぞ」
一気に4割匹になったので「ちょっとあんた」と奥さんからストップがかかる。
「奥さん怒っていますけど」
「ああ。大丈夫だ。それでも利益は出るし、餞別代りだからな」
そう断言する店主だけど多分奥さんの威光は無視できないだろうと「良いんですか?」と、奥さんの方に聞くと。
「まあ、珍しくアンタを気に入っている様だから、まあしょうがないか」と、お許しが出たようだ。
「すみません」
「代わりに、原料になるミスリル貨で払ってくれれば、御の字なんだがな」と、頭をかきながら木になる情報を言って来る。
「えっ。ひょっとして、通貨を鋳つぶして使っているんですか」と、俺なりの推測をして事情を聴く。
すると「ああ。ミスリル鉱石やインゴットを買うのと変わらなくなったんだ。どうも、戦略物資って事で不足しているようでな」との事。
戦争の準備で、いろんな物が高騰した上に物資不足か。
「ミスリル貨150枚か。ちょっと待って下さいね」
そう言って格納箱を起動して、中からミスリル貨を取り出し150枚渡す。
「あんた、格納箱スキル持ちか?」
「いえ。昨日買ったんですよ」と格納箱スキルが付与されている指輪を見せる。
「ああ。来ていたな。付与魔術スキル持ちが」
「ええ。ダンジョンとか潜る為には必要かなって。
魔法の袋の方が良かったかどうかは微妙ですけど」
「ああ。時間停止が付いている魔法の袋なら、食料品の劣化とか気にしなくていいからな。
と言うか、そんな金持っていたのか」
「母の遺産と言って良いモノが手に入ったんですよ。それで一気に自分を強化しようって」
「ああ。そう言う事なのか。吹っ掛ければよかったかな」
「まあ、値引きが無かったら、見せませんでしたけどね」
「ああ。値引きしたから大量のミスリル貨で支払ってくれる事になったんだから、そうなるのか。
まあ、また縁があったら、よろしく頼むよ」
「いえ。良いモノを売ってもらったのは俺の方ですから、こちらこそよろしくお願いします」
そう言って、ドワーフの夫婦に別れを告げた。
主人公は、縁のあったドワーフの鍛冶師に都市を出ると伝えました。
後は。




