第114話 ラシェルとのこれから
主人公は、自分の配下の奴隷となった二人と話し込んでいます。
その中で、二人とも気になった事があった様で、その事について確認して来ました。
チェーリアに、配下の奴隷にもスキル追加の宝玉を使うと伝えると『やる気になったのかな?』と思う様な会話になったのだけど、ピンク発情期対策でもあると言うと黙り込んでしまった。
やっぱり、嫌なのだろうか。
そう推測していると、今度はラシェルの方から質問が。
「そのスキル追加の宝玉は、愛し合う奴隷にも使うんですか?」
「まあ、その人の資質もあるだろうし、その時の判断によるかな。愛情が愛憎にかわるって怖い部分があるから。
でも、君達との事で人材の確保は思う様に行かないと思ったし、多分スキル追加の宝玉は使う事になると思うよ」
「でも、飽きたら別の人に売るんですよね」
「その辺も、状況によるよ。与え鍛えた必要な力を手放す事になるでしょ。
でも、憎まれているのに、傍に置いておくのは怖いし。
適正な値段で引き取ってくれる人が居るなら譲ると言っても、その結果、俺を殺しに来るってパターンもありそうだしね」
そう言うと、ラシェルはしばらく黙り込んでいたかと思うと、意を決したと言う感じで別の話をして来る。
「……、私、赤ちゃんが。子供が欲しいんです」
「えっ。俺の子供を産んでくれるって事?」と、ちょっと嬉しくなりつつ聞くと「別に貴方の子供とは言ってないでしょ。馬鹿なの」と、チェーリアに注意されてしまう。
「ああ。それはそうか。でも」と、奴隷の立場でどうやって子供をつくる人を選ぶのだろうと考え込むと。
「はい。その辺は旦那様が決める事になると思います。私は奴隷ですから」と、ラシェルが答えを教えてくれる。
それに微妙な気持ちになり「うん。そっか。でも、申し訳ないけど二十代半ばとか後半になると思う」と、とりあえず誰の子供かを先送りにしながら俺の都合と言うか予定を言う。
すると「お仕事が終わってから、と言う事ですか」とラシェルが聞いて来る。
「そうだね。冒険者として一人前になるのに、その程度の期間は必要だろうし。
まあ、仲間が増えればもっと早くに産んでもらって子育てが一段落したら、また一緒に働いてもらう、と言うパターンも出来るけど」
そう慌てて色々考えながらラシェルに俺の意見を言う。
すると「はい。それはどちらの形でも大丈夫です。でも、子供は奴隷にしないでもらえるんでしょうか?」と言われてしまう。
「えっ。出来ないでしょ」と聞くと「赤ん坊は圧倒的に弱い存在ですから、奴隷の子供はその期間に強制的に奴隷契約を結ばされる事が殆どです」との事。
ああ。奴隷契約スキルがランク5になれば、圧倒的弱い存在なら強制的に奴隷契約を結べるから。
残酷な世界と言うか、上手く行かないなと思いつつ「そっか。その辺は話し合いかな」と、これも先送りにする。
すると「はい。旦那様が決めるんですね」と、ラシェルはまた俺を睨みながら言って来る。
「……、そっか。そうなるのか」
そう俺が状況を理解すると「はい。働いても稼ぎの無い私では子供を食べさせていく事も出来ませんから」と、俺から目をそらしながら少し悲しそうに言って来る。
「う~ん。思っていたより厄介なんだな。奴隷と関係を持つって」
そう自分の考えの足りなさ等に軽く落ち込んでしまう。
その俺を険しい表情で軽く睨みながら「普通は、そんな風に考えません。強制すればいいだけですから。だから私は、旦那様が昨日おっしゃった、誰にも渡す気はないって言葉を信じる事にします」とラシェルは冷たい口調で言って来る。
……、ああ。勢いに任せて、いってはならない事を言ったのかな。
愛しているとは言っていないと思うけど、口づけしていたし、そうとられるよな。
俺自身、ちょっと気持ちが盛り上がり、そう言う意味で言っていたし。
まあ、これが良い悪いかは、これからの関係次第か。
「ラシェル」と言って、立ち上がり腕を広げて、彼女が俺の胸に飛び込んでくるのを待つ。
その意味を悟ったラシェルは、胸の中に来たけど。
ああ。全然幸せそうにない。
悲しそうと言うか、複雑そうと言うか。
子供が欲しいって言ったって、本音は愛する人の子供だろうし。
色々と失敗したんだろうな。
ふと、チェーリアの方を見ると、ムッとしているし。
誰だよ。
奴隷に優しくすれば愛情が得られるだろうとか、幸せを感じてくれるだろうとか、安易に考えていたのは。
まあ、俺なんだけど。
このまま進むしかない。
そう決めてラシェルをぎゅっと抱きしめ「ありがとう」と耳元で呟いた。
ラシェルとの関係はどうなるのでしょう。




