第102話 少しづつ
主人公は異性の奴隷を雇い、その人達からの好意・愛情で恩恵:百能の能力を強化し使える様にしようと思っていたので、奴隷商に行きました。
そこで出会ったのは、酷い目にあい重症も負っている精神的に問題のありそうな女性二人。
大丈夫なのでしょうか。
冒険者ギルドで紹介してもらった奴隷商で深い傷をおっている二人の奴隷と契約し、宿に戻る事にした。
彼女達の服の入ったバッグを持ち、まだ目の見えないラシェルの手を引き、歩く事も出来ないチェーリアを肩に担いでゆっくりと宿に向かっている。
他人の好奇の目もあるが、しょうがない。
しばらくすると、ゆっくり歩いていたのに、更にラシェルの歩みが遅くなる。
それで彼女の様子を確認すると、足の火傷は治っていないから、無理に歩いて傷が開いたようだ。
「ごめん。足の火傷の傷が開いたようだね。ラシェルの方も抱えるけど良い?」
「はい」
「だから、薬を私に使わないで、って言ったのに」と、チェーリアが怒ってくるが「ありがとう」と言っておく。
「なっ、何が」と、チェーリアは俺の御礼の意味が分からない様だ。
「仲間になったラシェルの心配をしてくれて」
そう言うと、複雑そうに黙り込んだ。
誰かにつけられていないか確認し、更に安全を確認した人通りの少ない路地に入り、ラシェルをゆっくりと彼女を地面に立たせ、バックから宝箱から出た中級エリクサー(良)を出す。
それを彼女に飲ませると「あっ。傷みが無くなりました。目も見えます」と、嬉しそうに言って来る。
慢性的な痛みはきついよな。
目が見えなかったのも。
そう思いつつ「そう。よろしくね」と挨拶すると「はい。よろしくお願いします」と明るい声で言ってきた。
その事に安心しつつ「でも、まだ万全ではないから、ゆっくり行こう」と、一緒に歩きだそうとした処で気が付いた。
これから欠損部位の再生治療をすると、俺がエリクサーを大量に持っているとバレてしまうと。
なので、周りから見られていないのを確認し二人に偽装を施す。
ラシェルは、左ひじから先が無いのを左手の手首から先が無い様に偽装。
チェーリアは、右足が太ももから、左足が膝から先が無く、更に目もまだ無く、左手は肘より上まで無い。
それを、両足の足首の先と左手の手首から先が無い様に偽装する。
ここまですれば、宿屋に着いた時の欠損の状態から、宿の人に高いエリクサーで治療したってバレないだろう。
ラシェルは、自分とチェーリアの見た目が変わった事に驚いているが、小さく「内緒ね」と呟き歩き始める。
ラシェルが服の入ったバッグを持とうとしたが「まだ無理は駄目だよ」と、断って宿に辿り着いた。
「さあ。ここだよ」と言って一人を抱え、1人を連れて中に入る。
すると、カウンターにいた何時ものおばさんは驚いている。
簡単に「二人の奴隷に来てもらったんだ。だから、部屋を移動しないと駄目なんだけど」
そう言うと、部屋の値段を聞かれ「もう直ぐ移動するから高めで良いけど」と言うと、一晩1万GAZUの部屋と言うか同じ敷地に建っている小さめの平屋を勧められた。
朝夕の食事は運んでもらう事にし、前払いと相殺し、3日借りる分の差額の28500GAZUを払い、借りた建屋へ。
うん。広いね。
寝室は2つあって、ベッドは4つか。
風呂もあるけど、二人は生活魔法持ちか何かに綺麗にしてもらっている様だから、微妙か。
いや。まあ、一緒に入るとかありだけどね。
チェーリアを座らせ「チェーリアも、もう一本で治療しておくか」と言うと「彼女を治してあげて」とキツメに言われる。
なので、キッチリと諭しておくことにした。
「どうして、自分の治療は必要ないなんて言うの?」
「私なんかより、彼女を優先してすべきだと言っているの」
「それは俺のために働きたくないから、って意味」と違うと分かっていて、ワザと聞く。
「違う。違うのに」と混乱し始めたので」
「さっき、ラシェルに使ったのは中級エリクサーだから、結構治療が進んだんだ。
だから、ラシェルは目も見えるし、ある程度普通に生活できる程度には回復している。
でも、両足の無いチェーリアは他人の介助が無いと生きて行けない状況でしょ。
それなのに、ラシェルを優先しろっていうの?
彼女は、これから夜伽とか、魔物との戦闘とか、俺の身の回りの世話とかで酷使されるんだよ。
その仕事を一緒にして、彼女の負担を楽にしてあげようとは思えない?」
そう言うと黙り込んでしまった。
でも、しばらくすると「治療を御願いします」と言ってきたのは良い傾向かな。
頑なにならず譲れるところは譲るって言うのは、この娘には必要そうな事だし。
「うん。よろしくね」
そう言ってから、上級のエリクサー(良)を飲ませる。
すると、目は両目とも再生し、無い部分の手と足が少し伸びた。
これなら、治す部位を意識させておいた方が良かったかな。
「えっ。目が見える。体の傷みも」
そう言って驚いている。
「うん。次はどちらかの足か手に集中してもらった方が良いのかな。
それなら松葉づえで歩けるようになるし」
そう言ってもチェーリアからはお礼の言葉は無く複雑そうに黙り込んでいる。
「どうしたの?」
そう聞くと「どうして」と、悲しそうに聞かれる。
彼女に心理状態が分からないので「何が?」と聞くと「どうして、ここまでして治すの」と怒っている感じで聞かれるけど、彼女のその感情は無視して説明する。
「チェーリアの全てが欲しいからだけど」
「わ、私は罰を受けて」
「じゃあ、一生かけて俺に尽くすのが罰なのかもね」
そう言うとチェーリアは黙り込んだ。
それも複雑そうに。
「大変だよ。俺、我が儘だし、甘えん坊だから」
そう言うと「……、はい」と絞り出すように返事をしてきたので、今日はここまでかな。
そう決断し「風呂に入りたいなら風呂を入れるし、お腹が減っているなら食べ物を調達してくるけど、どうなの?」と、二人に要望を聞くと「そ、それは私が」と、ラシェルが言って来るが。
「体が万全になったら働いてもらうから、今は大丈夫だよ」と、休むように言っておく。
どう考えてもまだ体調は万全ではないからね。
「はい。でも」と、ラシェルは納得していないが「二人は、お腹減ってそうだから昼食を確保してくるよ。ここで待っていてくれる?」と、お願いって感じで言うと。
「はい。ご命令でしたら」と、命令しろと言われてしまった。
まあ、奴隷と言う立場だとそうなるのかな。
そう思いつつ「うん。お願い。まあ、外に出たっていいけどね」と言うと「はい」と言って来るラシェルは複雑そう。
話術スキルによると、働かなければならないと思っているし、状況の変化に混乱しているし、等々、複雑な心理状態の様だ。
まあ、少しづつ関係を深めて行こう。
主人公は、雇った奴隷に優しくと意識しているようですが。
上手く行くでしょうか。




