エンゲージリング
「その最初が、江田島だ。一年間の幹部候補生課程を修了してようやく、部隊配置となる。横須賀に来る事ができれば良いが、海上自衛隊の主要基地は、大湊(青森)、横須賀(神奈川)、舞鶴(京都)、呉(広島)、佐世保(長崎)と5つある。確率的には5分の1だ。もしくは、潜水艦乗りや航空機部隊に配置される事は有り得ない話ではない。まさか、お前に仕事をやめてついてこいとは、言えない。だからと言って、このまま付き合っていても自然消滅してしまうのが落ちである。だったら今から結婚しておこうと、こう考えた訳なのさ。」
「そう言う事ね。単身赴任が増えるのね?」
「こればっかりは幹部自衛官の宿命なんだよね。分かってくれるよな。涼子ならきっと。」
「子供が出来たらどうするの?」
「そうだな。その時は育休をとってしっかり対応するよ。」
「そんなに上手い事行くかな?」
「今からしっかり対策をとっておけば大丈夫だと思うよ?実際に先輩達や自衛官の多くが、育休をとっているし、託児所もある。女性自衛官が増えてきた今となっては、自衛隊もそのくらいの福利厚生があるんだよな。」
「私も育休はとるつもりっていうか、時間の融通が利くのは私の方だし。自衛隊が育休とか出来るようになったのは、意外だわ。」
「あっ、そうそう。…アイス溶けちゃう。」
「そうね。あっ、固い物が‼」
海倉はニヤニヤしてる。
「エンゲージリング?」
海倉はシェフに協力してもらい、デザートに決して高値ではないが、安物のエンゲージリングを忍ばせていた。
「あんまり高いエンゲージリングじゃないけどサプライズ!」
「値段の問題ではないわ。ありがとう。」
沢井は海倉が防衛大学校学生があまりお金を持っていない事を知っている。だから尚更海倉の気持ちが嬉しかった。こうして、海倉と沢井は結婚する事になった。結婚しても何の不思議もない年齢に来ている事は確かである。




