ノブレス・オブリジェの本質
「そうだな。防衛大学校学生の柔らかい思考が、自衛隊の常識に風穴をあける事は事実かもな。」
「一度、数人の防衛大学校学生と一般大学の学生同士でディベートをしたら面白いかもな。」
「それが実現されるかはどうか分からないが、俺達は、そう遠くない将来に自衛隊の幹部になる。陸海空問わず、とにかく人の上に立たなければならない。日本が本当に民主主義と自由を愛する国なら、もっと防衛大学校学生の意見にも耳を傾けて欲しい所ではあるなぁ。」
こうして、横須賀での夕食会は終わった。防衛大学校学生は、こうやって、時を見つけては、国防問題の弱点に切り込んで行く。勿論、プライベートでの愚痴っぽい部分がある事は否めないが、それでも、これらはオブラートにすら包まれていない、防衛大学校学生の持つ素朴な声である。
防衛大学校学生は、特殊な存在ではない。何処にでもいる普通の10代後半から20代前半の若者である。唯一違うのが、彼等が今後数年以内に陸海空各自衛隊の幹部として部隊に配属され、将校として部下を率いて行くと言う事である。しかしながら、若くして彼等は、日の丸の旗と多くの部下をその背中に背負って行かねばならない。その重みを感じ責任ある自衛官として国家防衛に尽くさねばならないのが防衛大学校学生の務めでもある。
ノブレス・オブリジェの本質はそこにある。選ばれし者の義務と言うものは決して軽々しいものではないし、防衛大学校で4年間を過ごした人間ならば、気付く事であろう。勘違いしてはいけないのだが、防衛大学校学生は、もっとメッセージを発信しても良いと思う。防衛大学校の存在そのものが一般的ではないが、彼等の生活の一面を明らかにする事が、本書の狙いでもある。国民にもっと防衛大学校の事、防衛大学校学生の事を知ってもらい、国民的議論として安全保障の事を考える機会を持つべきではあると思う。




