驚異的狭き門
天野星也は、民間航空機のパイロットをずっと目指して生きてきた。高校も航空機に関連した航空機に精通した高校を卒業している。
そんな彼の転機は進路を決める時に、たまたま見かけた航空学生募集の自衛官募集広告であった。民間機のパイロットに成る事ばかり、頭が向いていた星也にとって、戦闘機乗りと言うのは、異次元の世界の事であった。
星也は、自分でそれなりに調べて、直ぐ様担任教諭のもとへ向かった。すると一刀両断でこう言われた。
「おい、天野?お前の成績じゃあ自衛隊の航空学生は受からんぞ?それを狙うには競争相手も多すぎる。しかし、お前がパイロットとして活躍する道が途絶えた訳ではない。防衛大学校へ行け。防衛大学校なら、航空学生よりも競争倍率が高くはないが、航空自衛隊の幹部になれる。パイロットよりもお前にはそっちの方が良いかも知れない。」
高卒で航空学生に受かる確率と防衛大学校に受かる難易度は変わらず高いしとても、狭き門である。どちらも決して易しいコース選択ではない事は確かである。それでも天野はきちんと考えて答えを出した。
念入りなリサーチの末、防衛大学校を受験する事にした。周囲は当然驚いた。そして、その日から猛勉強が始まる。天野が防衛大学校受験を決定してから、防衛大学校入試日まで、4ヶ月弱しか時間が無かったからだ。しかも、入試科目が9科目(数学3科目、理科系2科目、社会系2科目、国語、外国語系科目)もあり、これは大変な事になったと天野は思った。
防衛大学校は理科系の大学である。(一般的な大学とは違う。)そうした事もあり、理数系の科目に重点が置かれているのが、特色である。天野は、この時を後に振り返って、この時ほど机にかじりついていた時はなかったと、後に語っている。
ちなみに、2020年度の防衛大学校の一般選抜の倍率は男子が36.4倍であったのに対して、女子の倍率は120.2倍。人文社会系の女子の倍率に至っては353.3倍だったと言うから、恐らく日本の中でも最も高い試験の一つであった事は確かである。
防衛大学校は長らく男子のみの採用が続いていたが、1995年度の入試から女子学生の入学が認められる様になった。今では男女合わせて年間約1700が陸海空幹部候補生として世に送られている。




