3人の防衛大学校生
防衛大学校の校歌を作詞した一期生の当初案だと"朝に勇武を磨き"であったが、槇智雄校長の強い指導で勇智となったと言うエピソードが残っている。
防衛大学校に着校するまでは、あくまでも入校予定者に過ぎない。着校後の身体検査において、採用条件に抵触する項目があると、不採用になる。この関門を突破すると、被服類の貸与がある。下着以外は何でも貸与されると言われ、自分のサイズに合う何種類もの制服や作業服を借りる。
学生舎の居室は全て8人部屋であり、4年生~1年生までがごちゃ混ぜになり居住する。防衛大学校では、学年を見分ける為に、袖に桜章をつけている。桜章が3個あれば4年生、2個ならば3年生、1個ならば2年生、桜章が無ければ1年生である。
1年生時は陸・海・空の区別がなく、2学年進級時に分かれる事になる。希望通りの配置になる人間とそうではない人間がいるが、こればかりはどうしようもない。希望通りではない配置であっても、防衛大学校に入る事の難しさを思えば何て事はないだろう。
本書は3人の防衛大学校生(フィクションの陸海空それぞれの要員)の成長を辿った青春小説である。航空要員の天野星也、海上要員の海倉涼、陸上要員の道上鉄也…だ。
令和の世にあって防衛大学校を取り巻く環境は大きく変わりつつある。しかしながら、日本国民の果たして何人が、この日本で唯一の士官養成機関である防衛大学校について知っているだろうか?自分は、無知であってはいけない分野、それこそが国防であると思っている。
毎年多くの人間がこの小原台を巣立っていると言う現実がありながら、日本人の興味や関心は低い。そうした現状の改善も無しに憲法改正論議ばかりが、先行してしまう事は非常に危険な事である。日本国民一人一人が内容のある憲法改正論議をする為には、それなりの知識が必要である。
本書がそうした日本国民の国防意識を高める為に用いられたとするならば、作者としてこれ以上喜ばしい事はない。




