要員選考
防衛大学校のパレードでは、「抜刀隊」と「君が代行進曲」が吹奏される事が多いが、この日は海軍の先輩達に敬意を表した。暁のパレードが終わると、短いが年末年始の休暇が与えられる。ほとんどの学生が、実家に帰省し各々に年末年始を過ごす。
正月気分も抜けない中で小原台では、平常の日課がスタートする。1年生はフレッシュマンから、ソファモアに進級する年であり、念願の要員選考が行われるが、進級試験等関門もあり、手放しで喜んではいられない。2月上旬になると、1年生の最大の関心事は、要員の選考に集中する。何度も言う様ではあるが、防衛大学校では2年生進級時に陸海空の要員が決まる。それぞれに定員があり、必ずしも希望通りに行くとは限らない。募集定員は1学年530人で陸上要員300人、海上要員100人、航空要員130人となっている。海上要員と航空要員は希望者が多く、相当数の学生が陸上要員に回されると言う。
それより少し前には、防衛大学校の新入生合格者も発表される。防衛大学校は他大学に比べて試験の日が早く、受験料もタダなので、腕試しで受験する者も多い。合格発表も早い為、気が抜けて本命への備えが若干手薄になるが、そうした彼等は入隊しない。防衛大学校1本槍の者にとっては迷惑この上無い。だがこの日をもって防衛大学校第一志望者の受験態勢に、終止符を打つ事になるが、他大学を受験する者は、そうはならない。
高校生に人気なのは、自衛隊の部隊見学であり、これらは将来の要員選考の参考にする狙いもある。1年生の中には、既に将来の進路を明確に定めている者と、漠然と防衛大学校に進学した者の二種類の人種が存在する。そう言う者にとっても、現場の部隊を生で見れる事は、貴重な経験である。
最新鋭の護衛艦に乗艦したくて、海上自衛隊の幹部になりたくて、海軍士官になったつもりになったり、ヘリコプターや輸送機や戦車に乗り陸上自衛官や戦闘機を見て航空自衛官に成るのを夢見る、肌で感じて貰うのが目的である。
中・小隊指揮官との面談を経て、要員の内示がある。その間に居室が変わる。