入校時訓練と新入隊員必携
入校式は圧巻であった。第1学年から第4学年までの全ての防衛大学校学生約2000人が一斉に集まったからである。体育館における入校式典は新入生代表による宣誓からスタートする。
「宣誓、我々は防衛大学校学生たる名誉と責任を自覚し、政治的活動に関与せず、法令及び日本国憲法を遵守し、全力を尽くして学業に励む事を誓います。」
防衛大臣の訓示や校長の式辞等があり、学生隊による観閲式もある。統合幕僚長を初め、陸海空各幕僚長と言った制服組四天王も顔を揃え、未来の司令官候補生達の門出を祝う。生活の場である学生舎では入校式前からベットメーキングや起床動作をみっちり教えられる。分からない事は、対番学生に聞けば何でも答えてくれる。対番学生とは、兄貴の様な存在であり、何でも面倒を見てくれる存在である。勿論、それは入校式までの防衛大学校お決まりのサービスであり、入校式を経て正式に防衛大学校学生となった日からは、ガラリと状況は一変する事になる。
道上は、PX(売店)でとりあえず封筒や切手、ノート、便箋等を購入した。頻繁に電話出来ない為、文章でまとめて家族と連絡する事にした。PXに寄った振りをして、隣の食堂のメニューのチェックも忘れなかった。小腹が空いた時に使えるかもしれないと思った為であり、その点は抜かり無い。校友会(部活動)は、銃剣道部に入った。恐らく銃剣道部があるのは、日本で防衛大学校位であるだろう。その物珍しさから、直ぐに入部を決意した。
それから間髪入れず入校時訓練が行われた。これは新兵教育の様なものであり、高校生臭い新入生を防衛大学校学生らしく脱皮させる段階として位置付けられている。訓練内容は基本教練と武器訓練が主体で個人の動作(徒手、執銃時)、から部隊行動の基礎までを段階的に訓練する。最終的には銃を担ってパレードが出来るレベルになる。学生に貸与される訓練資料である「新入隊員必携」(陸上幕僚監部第5部監修)には、自衛官に必要な基本的事項が収録されている。




