あっという間の一年
そしてそれが海上要員として必要な知識として定着して行く。2年生の夏期定期訓練は、海上要員としての意識付けと、基礎的な戦闘技術を身に付ける事が狙いである。約3週間の長丁場ではあるが、これも立派な海上自衛官に成る為に、通過しなければならない壁であるだろう。護衛艦への乗艦実習がメインに行われる。とは言え、そこまで長い期間ではなく束の間の休息と言っても過言では無いであろう。
そして秋は行事が目白押しである。中間試験に、自衛隊中央式典参加、開校祭とある。そして、小原台は潮風が染みる程の厳冬を迎える。さほどの降雪量は無いものの、冬の馬堀海岸は恐ろしく冷える。10月16日~3月31日までは冬季時間で生活をする事になる。そして長い冬の終わりに待つのが学年末試験である。赤点即留年。になる防衛大学校学生もいなくはないが、防衛大学校学生として日課を乗り越えて行けば何とか乗り切れると言う。そしてそれらを乗り越えると、4年生が卒業する。
卒業後は陸海空各自衛隊の幹部候補生に任官し、久留米(陸上)、江田島(海上)、奈良(航空)の幹部候補生学校に赴任する。卒業式では、防衛大学校恒例の「帽子投げ」も行われ、小原台の一年はこうして過ぎて行く。
進級し、4月1日からは新年度が始まる。海上要員の場合、横須賀地方隊が近くにある為、部隊実習を行うにしても、直ぐにアクセス出来ると言うのは、ちょっとした利点であった。陸上要員や航空要員では中々その様な便利さは無い。米国海軍の横須賀基地がある事も見逃せない。基地内に入る事は出来なくとも、横須賀港から見える米国海軍の艦艇は防衛大学校学生ではなくとも、興奮するものであるだろう。
カッターを嫌と言うほど漕がされたが、現在の海上自衛隊においては、カッターの出番は少ない。ならば何の為に奴隷船をわざわざ漕がされるのかと思うであろう。答えは団結力と船を動かす為には、バラバラに漕いでいても進まない、と言う事を理解させる事にある。