水泳訓練と夏休み
人間が最も恐怖を感じる高さが10メートルと言われている。遠泳の定着コースは、東京湾から房総半島(富津湾)を通って、横須賀沖の猿島から往復すると言うのが定番である。遠泳は、赤帽組も含めて1、2年生全員参加、全員完泳が目標である。
防衛大学校では、上下の関係と長幼の序列にはとにかくうるさい。と言うのも、卒業して部隊に行けば同様の風習がある為であり、学生のうちからその風習に慣れておくと言うのが、大きな狙いである。
さて、話が前後するが、遠泳にはいくつかのルールがある。30人のグループ(訓練班)毎に4列縦隊の隊形で行う。人数の掌握が容易であると言う安全管理上の理由と、グループで泳ぐ事により、個人の能力を遥かに越えた成果を引き出す為の形態をとる。グループ毎に伝馬船一艇がつく。伝馬船には、スタッフ(教官やサポート学生)が乗っており、不足の事態に備えている。
教官は学生の状態を確認しながら栄養補助食品や水分補給してくれる。学生は伝馬船に近寄りそれらを口にしたら隊列に戻って泳ぎ続ける。そして、夏季定期訓練が終わると校内水泳競技会がある。それを乗り越えると待望の夏休みである。
上級生ほど荷物が少なく、下級生ほど荷物は多い。防衛大学校は他の公立私立大学と同じカリキュラムをこなすため、一般大学よりも夏、冬、春休みが短めになっている。と言うのも、授業の他に幹部自衛官として、必要な技術を養う為に時間をさかねばならず、その為には学生の休みを削るしか方法が無いのである。
少数ではあるが、学生舎に残っている防衛大学校学生もいなくはない。研究しているものがあったり、部活動の一環で夏休みにトレーニングをしたい。勉強に集中したい。様々な理由があるかもしれないが、防衛大学校はあくまで自主自律の精神を尊ぶ場所であるから、一切規制はしない。
短めの夏休みが終わると、行事が目白押しの秋に突入して行く訳であるが、小原台では夏を越えられれば、自衛官としてやって行ける可能性が大きくなると言われている。




