カッター訓練と水泳訓練
海抜85メートルの小原台から、走水に下りると海上訓練場があり、そこはポンドと呼ばれている。ポンドには、青色のダビットがずらりと並び海軍の雰囲気を漂わせている。
防衛大学校では、中隊毎に短艇を保有し、5個大隊20個中隊のカッターが一対のダビットに2隻ずつ吊るしてある。管理は中隊の海上要員学生が行う。従って海倉も自分の所属する中隊のカッター管理を任されていた。ポンドの一角にボート等を収納する艇庫があり、ボート部員は授業が終わると、駆け足でポンドに下り、練習終了後台上に駆け戻る。
連日のポンド往復で足腰はしっかり鍛え上げられる。ポンドには、ボート部の他に短艇委員会(カッター部)と、ヨット部も同居している。1年時は海上基礎訓練として、カッターの漕ぎ方を覚え、2年生になると、大隊対抗の短艇競技会に参加する。カッターは、奴隷船と揶揄される様な頑丈な艇で、16人(艦長、艇指揮官が1人ずつと、漕ぎ手11人、予備員2人)が定員で、カッターは固定座席に屋てい骨を支点として、長さ4.9メートルのオールに全体重を乗せて漕ぐ。無骨でダイナミックな海の男の乗り物である。
防衛大学校では、陸海空のどの部隊に行く事になっても、カッター訓練を行う。一見すると、関係無さそうに見えるかもしれないが、航空機が海上に不時着したとか、陸上部隊を乗せていた輸送部隊が海上で事故にあったという様なケースを想定して、万が一に備えると言う意味合いと、もう一つは、海の怖さを知ると言う意味合いがあった。
夏にはこれとは別に三週間の夏季定期訓練もある。水泳訓練が大半で10メートル飛び込みと8㎞遠泳が最後の関門として待ち構えている。1年生の中には、ほとんど泳げない者もいて、赤帽を被せられて徹底的にしごかれる。赤帽組の中には体の比重が1.0よりも大きく、水の中で浮かび上がらない者もいるが、最終的には8㎞泳ぎきれる様になる。