表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/141

一人前の戦車小隊長

 自衛隊の訓練だと、「敵は友軍・弾は空砲」と言う状態になりがちである。道上鉄也は、平成26年12月31日から平成27年1月3日まで、第201戦車大隊の当直副司令に上番して、新任の初級幹部らしく、何人からの同期生から「貴様も当直か」と電話がかかってくる。等と言いながら年末年始を営内で残留隊員と共に過ごした。第201戦車大隊は年明け1月4日からは通常の訓練態勢に戻り、道上は平成27年度(新年度)は北部方面隊機甲戦技会への参加を命ぜられた。

 北部方面隊機甲戦技会は、北海道に駐屯する全戦車大隊の中から一個小隊が選抜され、北海道大演習場の恵庭射場で一堂に会し、射撃等の戦技を競う競技会である。道上は小隊長として15人の部下と共に、津軽海峡を渡った。北海道は蝦夷梅雨の影響で、遠来の道上小隊は、連日の雨と北海道大演習場の軟弱な土質(泥炭地)に悩まされた。不慣れな演習場で、夜間射撃終了後の駐屯地への帰路途次、濃霧に巻かれて数時間往復すると言う特異な体験もした。

 北部方面隊機甲戦技会本番の日、天候は初夏の陽気に一転し、特別参加の道上小隊を含めて24個小隊96両の90式戦車が一堂に会し、その壮観さは凄まじいものがあった。道上は、昨年8月の原隊復帰以来、息つく暇もない程の実戦訓練を重ね、戦車小隊長として自信が持てる様になった。戦車と共にある毎日は隊員と共に訓練する面白さと言ったものがあり、そう言った面では道上には何らの不満はない。

 道上が戦車小隊長の実務配置について1年になる頃、小隊陸曹が何気なく「小隊長!」と声をかけてきた。それまでは意識的に「道上三尉」と呼んでいたのにである。まだまだ小隊長としては正式には認めていないぞ、と言う無言の意思表示でもあった。若い隊員は小隊長と呼んでくれるが、小隊陸曹を始めとするベテラン達はテスト期間として暗黙の認識があったのだろう。「おう、何だ?」と道上は冷静さを装って応じた。内心では、小隊陸曹がやっと自分の事を小隊長として認めてくれたか、やっと合格したかと、心の底から嬉しかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ