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異端の思考

 暴徒部隊と制圧部隊は一定の距離をとっている。間合いをとりながら、着剣した隊員が銃を構えて横一列に並び、その10メートル後方で道上小隊の90式戦車が控えている。無理に小隊を前進させる命令が響く。

 「小隊前進よーし。」

 と、予令をかけ、各車長達が手を挙げる(了解の意)のを確認して、「前へ」と号令を下す。制圧部隊と暴徒役の隊員達との緊張感溢れるやり取りが続いて行く。

 戦車小隊の指揮は無線で行うが、ガスマスクをしていると、リップマイクへの音声の乗りが悪く聞こえづらい。道上は無意識の内にガスマスクの底を少し開いて、声の通りをよくしようとした。道上は予期していなかったが、戦闘室内に催涙ガスが漏れており、たちまちガスマスクの内に進入して、涙や咳、吐き気の三重苦にせめられた。制圧には間接制圧と、直接制圧がある。暴徒と直接接触する事なく制圧する間接制圧が望ましい事は、言うまでもない。

 間接制圧で重要な事は暴動・騒然の現場に、進出するに先立って、各種の広報手段を駆使して、政府(自衛隊)の決意、特に武器の使用について明確に周知する事である。こうした治安出動の訓練が行われる一方で、日本国内の治安は第一線に機動隊、総予備に自衛隊と言う態勢で維持出来ている事が立証されて行く。治安出動→憲法改正→自衛隊の国軍化は必ずしも正統な思考過程ではないが、異端の思考をとらざるを得ないと言う我が国の現状もまた異常なのであろう。

 自衛隊中央パレードにも道上は参加している。以前は絵画館前の広場で行われていたが、昭和40年からは、国立競技場前に変更されている。パレードが終わると、総合火力展示演習の準備に入った。都心でのパレードは、昭和47年(1972年)の中央式典を最後とし、埼玉県の陸上自衛隊朝霞駐屯地の訓練上に移駐された。その背景には、社会党を基盤とする美濃部革新都政の誕生がある。

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