戦車のウィークポイント
首都の治安維持を担う第1管区隊は、東京都練馬(管区総監部、第1普通科連隊など)、新潟県高田(第2普通科連隊)、長野県松本(第13普通科連隊)、静岡県駒門(第1特科連隊)、静岡県相馬原(第1特車大隊)等、関東甲信越、静岡の広域に展開していた。管区隊は後に師団へと改編(昭和37年改編)されて行くが、治安出動の訓練は無効扱いの草案が長い事、使用されている。
戦車の運用は、当初から戦車に徒歩の小銃部隊が密着して第一線に出る。戦車は後方に控えていて、緊急時に第一線に割り込む。と言う二通りのケースがあり、後者の場合小銃部隊と戦車の連携を密にしないと、戦車で小銃部隊の隊員をひく危険性がある。実際の訓練では、このパターンを繰り返し練習した。戦車自体の防護をどうするかと言う悩ましい問題もある。戦車に火炎瓶を投げ込まれた場合の対策として、戦闘室内に予備の携帯消火器を積み込み、濡らした毛布を準備する。
塗れ毛布は火炎と空気を遮断する効果が大きく、火炎瓶対策としては有効な手段の一つである。90式戦車の燃料は経由で、ガソリンより燃えにくいが、戦車内部には油脂類、車輪のゴム、塗料、電纜等、可燃物が沢山ある。戦車に暴徒が飛び乗らない様に、鉄条網を車体に巻く、グリースを塗ると言う提案もあったが、道上は戦車の美しい車体を異物で汚したくないと考え、何もつけない事にした。
来るなら来い。叩き落としてやる。と、覚悟して、戦闘室内に木刀や木銃等を積み込んだ。90式や10式戦車の大きさを考えていると、動いている戦車に飛び乗る事は至難であるが、停止して囲まれるとヤバいかもしれない。最悪の場合にどうすれば良いのかを考え、腹をくくらざるを得ない。車載式火炎放射機を改修したもので、ゲル化剤の代わりに催涙ガス液をタンクに詰めて、連装銃の銃座につけた放射機で催涙ガス液を放射するというガス放射機なるものも考え出された。