卒業生と任官辞退者
防衛大学校学生の果たさねばならない道義的責任と言うものは、初代防衛大学校長槙智雄が述べていたノブレス・オブリジェに集約されるのだが、それをきちんと果たさない事には、防衛大学校学生が、防衛大学校で学んでいる事が役立たずの不備に終わってしまう。そうであっては欲しくないからこそ、防衛大学校学生にはもっと自己を省みて欲しいのである。困難な時代に困難な任務を任されるからこそ、しっかり学ぶべき事を学んで欲しい。
それも与えられるのではなく、自らが求めるものであって欲しいと思う。確かに決して楽な事ではないし、誰にでも簡単に出来ると言う様なコンビニエンス性はない。だからと言って、日本の将来の安全保障を担うと言う覚悟を決めた以上は、その道に進むと決めた以上は、その責任を果たしているのが防衛大学校学生の務めである。日本で国防を任せられるのは、他をおいても自衛隊しかいないのである。その自衛隊の幹部にたる人物である事が防衛大学校学生には求められるのである。それが出来ない訳ではないだろう。
道上、海倉、天野等の第58期生が卒業したのは、平成26年3月16日の事であった。その数約465人。陸上要員である道上は、この日以降第113期生として陸上自衛隊で人事管理される。第58期生のほとんどが防衛大学校卒業と同時に幹部候補生への任官を果たす。病気や怪我などによる健康上の理由及び、万が一やむを得ない家庭の事情等を除くと、他のいかなる理由を弁ずるとも、「陸海空各自衛隊の幹部を養成する」と言う防衛大学校設立の目的に任官辞退者が反している事は明白である。
新国防軍像を明確に示し得ない政府・政権の責任は逃れがたいが、任官拒否の言い訳にはならない。卒業式の前日、進路を迷っている生徒がいれば、その生徒はまず間違いなく小隊指導官に呼ばれ、卒業後に幹部候補生へ進むのかどうかを問い詰められる。小隊指導官の立場では単なるチェックであろうが、勘ぐれば防衛大学校当局は、卒業生の大量離脱の予兆をしていると言う訳でもない。