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人形作りの人形  作者: 天桜犀 海陽
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赤色の部屋

扉を潜り抜けた先には、さっきの部屋とは裏腹に明るい赤一色の部屋でした。


いつもの通り、蝶は一番手前の部屋で待っていました。

982はさっきと違い明るい部屋に、意気揚々としながら扉を開きました。


開いた扉の先には、また額縁と張り紙があり、額縁の中には丸の中に斜め線が二つと山形になっている線が一つ描かれていました。


張り紙にはこう書かれていました。


「ようこそ。赤色の部屋へ。

 もう一つの扉へ行って、

 助けたいものを一つ持って

 戻っておいで。」


助けたいものとは一体どんなものだろうと、982は頭を抱えます。

読んでもわからないものはこの部屋が初めてでした。

悩んでいても仕方がないと、982はさっそく外に出ていきました。

今度は蝶はついてきません。


もう一つの扉を開くと、そこにはたくさんの人形が積みあがっていました。


「やっとほかの人形が来た!そのランタンをよこせ!!」


声が聞こえたと思った瞬間、982は殴られました。

突然のことに982は倒れてしまいます。


「きゅ、急に何をするの!?」

「982、そのランタンを俺によこせ!」

「何言ってるの!自分のランタンがあるでしょ、478!」

「よこせって言ってるんだ!」


982は困り果てました。

ランタンなら、今まで行った部屋にいたどの人形も持っていたのに、478はランタンをよこせと言ってききません。

そこで478の手を見てみると、ランタンは握っていませんでした。

部屋の中を見回すと、たくさんの人形と、たくさんの壊れたランタンがありました。


「478のランタンはどこにあるの?」

「俺のランタンなら、前この部屋にいた人形が取って持って行っちまったんだ!あるわけないだろ!だから、982のそのランタンをよこせ!」


同じことを繰り返し言い、また478は殴りかかってきました。

982は、それを慌ててよけました。

478の行動に、982は感情が沸き上がりました。


「これは私のランタンよ!あげられるわけないでしょう!」

「いいや、それは俺のランタンになるんだ!」

「ふざけないで!」


982は478に反撃をしました。

そのこぶしは、478の顔面にクリティカルヒットします。


「うっ!」

「いい加減にして!助けたいものを私は探しに来たの!こんなことするためじゃない!!」


どうやら478は動けなくなったようでした。

今のうちだと、982は急いで部屋の中を見て回ります。


部屋の中は山積みの動かない人形、たくさんの壊れたランタン、それしかありませんでした。

982はまた困ってしまいました。

どうしよう、助けたいものなんてないじゃないかと思います。

その時、視界の端に478が入りました。


982は、彼はきっと理不尽な目にあって、嫌な気持になって、ここから出られなくなってしまったんだと思いました。

そう思うと、何とかして彼を助けたいと思い始めました。


982は急いで壊れたランタンを一つ拾い上げます。

478が起き上れば、また殴られて、言い合いを続けなければならないからです。


982は慌てて床に置かれたランタンに躓きながらも、部屋を出ました。


そして、走って最初の部屋に行くと、部屋の真ん中に机が置いてありました。

張り紙の文字が変わっています。


「助けたいものを持ってきたんだね?

 なら、その机の上においてご覧。」


982はその指示の通り、壊れたランタンを机の上に置きます。

すると、みるみるうちに壊れたランタンが直っていきました。


982は喜びました。

ランタンを持って行こうと思ったその時、目の前の張り紙の文字が変わります。


「彼に殴られ、理不尽を言われ

 “怒った”でしょう?

 嫌かもしれないけど、

 これもまた大切なもの、忘れないで。」


それを読んだ瞬間、目の前に二つに赤い炎が現れ持っているランタンへ吸い込まれていきました。


ランタンの炎の色が変わるのを見た後すぐに982はさっきの部屋へ向かいます。

蝶も慌てて982についていきました。


部屋に戻ると、478はもう起き上がっていました。


「982、なんで戻ってきた。」


低い声で478は982に問いました。


「それは、これを渡すためだよ。」


そう言って982はランタンを478の前に掲げました。

478は驚きました。


「なんで、ランタンが…。」

「私が助けたいと思ったのは、478だからだよ。だから、これをあげる。」

「…。ありがとう。殴って悪かったな。」

「私こそ、殴ってごめんなさい。」


二人は謝りあって、握手をしました。


「それじゃあ、私はもう行くね。478も助けたいものを見つけるんだよ。」

「ああ、ありがとう。それじゃあな。」

「うん。ばいばい。」


982と478は互いに手を振りあって別れました。


蝶に導かれるまま奥の部屋へ982は入っていきました。


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