13 転入試験開始
闘技場に出ると、観客席に座る大量の学生が視界に入る。
俺とユナに向けられるのは、懐疑や嘲笑といった視線だ。
「あの二人が突然変異種のロックドラゴンを倒したんだって?」
「ありえないって言いたいところだけど、男の方はティナ様の兄らしいからな。嘘か本当か分からないぞ」
「けど、どうせこれまで第二学園にいたような奴だろ? 無理に決まってるさ」
聞こえてくる言葉から察するに、やはり否定的なものの方が多いか。
仕方ない。その全てを覆してみせよう。
突然、わあっと会場が沸く。
どうやら向かいから炎黙の顎の八人が出てきたみたいだ。
ミカオーをはじめとし、黄色い声が上がる。
「ミカオー様! 頑張ってください!」
「ヴェレ! そいつらの不正を暴けよー!」
どうやら先ほどユナに声をかけてきた男の名はヴェレというらしい。
彼らは慣れた様子で観客に手を振りながら位置につく。
俺たちとの距離はおよそ100メートル。
魔術師同士の戦いが基準とされているため、開始位置が離れているのだ。
接近戦を得意とする俺たちにとっては不利な条件だと言えるだろう。
しかし――
「やっと、お披露目だな」
「そうだね、ルーク」
皆の注目が炎黙の顎に向けられる中で、俺は腰からその武器を抜く。
透き通るような美しい刀身に、漆黒の鍔と柄。
俺がずっと待ち望み、ようやく手にすることができたその武器の名は――剣。
ロックドラゴンと戦った時のような、その場限りの紛い物ではない。
この三日間のうちにロックドラゴンの鱗と、とある素材を利用し作り上げた、高水準の強度と切れ味を誇る剣だ。
会場からの注目が、一気にこちらに集まる。
「なんだあれ……武器なのか?」
「文献で見たことがある。剣じゃないか? 昔に使用されてたっていう接近戦用の刃物だ」
「魔術師相手に接近戦を挑むつもりなのか!? それもこの人数相手に? 無茶苦茶すぎる、始まる前から勝負がついたみたいなもんじゃないか」
随分な言われようだ。
けれど仕方がない。それがこちらの世界の常識なのだから。
その常識を、これから壊してみせる。
そんな俺の決意に水を差すように、ミカオーがはぁとため息をつく。
「呆れたね。魔術も使えない落ちこぼれだとは聞いていたが、まさかそんなおもちゃに頼るような輩だったなんて」
「おもちゃかどうかは、すぐに分かりますよ」
「そうだろうね、君たちの惨敗という結果が教えてくれるはずさ」
それ以上、お互いに言葉を発することはなかった。
開始に向け、集中力を高めていく。
そして――
『それではただいまより、ルーク・アートアルドおよび、ユナ・ミアレルトの転入試験を始めます。双方、準備はよろしいですか? それでは――始め!』
――ゴンッ、と、鈍重な音が会場全体に広がった。
「……え?」
会場の中でもいち早く、ミカオーは呆気にとられながらも音がした方に視線を向ける。
半円状に広がっていた味方のうちの一人がうつ伏せに倒れているのに気付いたようだ。
そして、倒れているその男のすぐ横には――
「まず、一人目だ」
――剣先を地面につけながら、次の目標を見定める俺の姿があるのだった。
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