6/16
10-06
コノエはサラの様子をじっと見つめた。まるで悟りでも開いたかのような穏やかな顔で、その少女は空を見上げている。
この子には資格がある。そう思ったコノエは、肩からさげていた白のポーチからゴソゴソと何かを取りだした。
「生きる意志のあるものには『生』を、死ぬ意志のあるものには『死』を。それが我々のスタンスなの。自ら命を絶つのは悪だとか、将来を無駄にするなとか、そんなのはただの綺麗事」
ポーチから出てきたのは、丸くてオレンジ色をした1錠の薬。人差し指に、ちょこんと乗る位の大きさだ。
「これが...」
サラは手のひらを差し出し、恐る恐るその薬を受け取った。薬は街灯に照らされ、そのオレンジ色はより際立った。
「これが私達の開発した、最も確実に、安らかな死を得られる薬。これを飲むと全身の感覚が薄れ、徐々に意識が遠のいていく。そして1分ほどで確実な死が訪れる。サラちゃんは............これを飲む資格がある」
コノエの茶色い瞳が、サラを捉えて離さなかった。
サラは唾をゴクリと飲み込み、小さく頷いた。