第三十六話 独白
あの人と私が出会ったのは、3年前だ。出会った当初は私もあの人も、全く縁のない赤の他人同士でしかなかったし、お互いに積極的に話しかけようとも思っていなかった。
初めてあの人に声をかけられたのは、1年くらい前。大切な人を亡くして生きる気力を失っていた私を、真っ直ぐに見てくれた。誰もが同情や憐れみの目で私を見て、多くの人は声をかけることを避けて、声をかけても慰めしか言ってくれない。そんな中、あの人だけは私に同情も憐れみもせず、慰めの言葉さえ言わず、乱暴でありながら私の死を否定した。
その時は何も感じなかったが、今ならそれでどれだけ自分が救われたかが分かる。
ようやく、あの人と同じ道を歩めるようになって、私は自分の気持ちに気づいた。膨らみ熱くなり、いつしか破裂しそうなこの想い。それでもその気持ちに気づくには遅すぎた。
あの人の隣には、いつもあの子がいた。出会った時間など関係ないように、私よりも早くあの人と同じ道を歩んでいた。最初はしょうがないと思った。あの子は私とは違って大きな目標がある、すごい人だから。
大きな目標がある人達の中で、私は自分が嫌になる。私はどうしてこの道に進んだのか、分からなくなる時がある。私も大きな目標のようなものの為にこの道に一応進んだが、それは私自身が決めた目標ではないし、大言壮語なのではないかと考えてしまう。
そして、時々思うのだ。もしも私があの子よりも先にあの人と同じ道を歩んでいたら、今あの人の隣にいるのは、私だったのではないか、と。過ぎた過去に「もしも」など存在しないのは分かっているのだが、やはり考えてしまう。
あの子がいなかったら、あの人の隣にいるのは私だったのに。
そんな傲慢な考えが頭を掠めた時、私の頭の中に、声が響いた。
―――あの子なんて、いなくなってしまえばいいんです




