第十八話 右目
とある休日、一希は結羽の家を訪ねていた。
「どうしたの?」
「ちょっと買い物に付き合ってくれないか?」
久しぶりの一希の誘いに、結羽は嬉しくなった。
「もちろんいいよ」
「ありがと! 助かるよ」
そんな会話の数分後、2人は並んで出かけていく。
2人の様子を、拓士は少し離れた場所からそっと見ていた。
一希に対してなぜか腹が立つ。イライラして仕方が無いのだ。一希と話せたら、それが何とか出来そうな気がするのだが、なかなか話かけられない。
だが、そんな拓士の目の前に、影世界に引き込まれそうになっている少女がいた。
「……っ、こんな時に!」
苛立ちながら、拓士は大剣を召喚した。
結羽と一希がスーパーに向かっている時、突然一希の影が真っ黒な穴に変わる。
影世界だ。
「うわっ!」
一希が一瞬で影世界に引き込まれた。
「一希!」
結羽は一希を追って、影世界へと入っていく。先に来たはずの一希を探すと、影鬼が一希に今にも襲いかかろうとしていた。
「―――っ!」
一希に触れるぎりぎりのところで、結羽が影鬼を双剣で斬った。
「大丈夫?」
尻餅をついている一希に、結羽は手を差し伸べる。
「ありがと、助かった」
結羽の手を借りて、一希は立ち上がる。
この影世界を創ったと思われる影鬼は倒したはずなのに、影世界が消滅する気配は無いまだ他にも影鬼がいるのかもしれない。
「一希、後ろに下がっていて。すぐに倒すから」
やっと戻ってきてくれたんだ。こんな奴らに邪魔をされてたまるものか。
「ああ。―――ありがとな」
その瞬間、結羽は背後から寒気を感じて、右の方に飛び退る。
直後に左腕に痛みが走った。そこに目を向けると、切り傷ができていて血が流れている。
結羽が先程までいた場所には、一希がいた。
手にはいつの間にか包丁が握られていて、その包丁には血が付いている。
結羽の背中に氷塊が滑り落ちる。得体の知れない恐怖が間近にあるはずなのに、それを信じられない自分がいる。
「かず……き……?」
結羽の震えた声に振り向いた一希の口には、嘲笑が浮かんでいる。
そして右目の白目が、真っ黒に染まっていた。




