第十七話 親友
そして現在、ずっと行方知れずだった一希が、目の前にいる。
「心配させたよな……ごめん」
謝る一希に結羽は無言で近づき、そのまま彼を抱きしめた。
「……今まで、どこにいたの……! 心配したんだから……!」
涙声の結羽の頭を、一希は優しく撫でる。
今まで、結羽が涙を見せることは一度も無く、それを初めて見た三人は、とても驚いていた。その中でも、一番驚いていたのは拓士だった。
自分の知らない男と、結羽が抱き合っている。なぜか胸が少し痛んだ。
「……結羽ちゃん、その人、誰?」
驚きからいち早く立ち直った未來が結羽に尋ねる。
結羽は、はっとして一希から離れる。そうだ、みんなが目の前にいたんだ。結羽は軽く咳払いをしてから答えた。
「彼は紫苑一希。中学の時の同級生で……私の一番の親友!」
一希と再会してから結羽は、一希と二人でたまに登下校するようになっていた。それは当然のことだろう。久しぶりに再会した親友なのだから、積もる話もあるはずだ。
それでも結羽は影闘士としての闘いを怠ることはない。むしろ、以前よりも闘いに無駄な動きが少なくなっているようにも見える。
一希は結羽達とは別の高校だったが、下校時は校門で一希が結羽を待っている。影鬼を一通り倒した後、結羽は一希が待っているところまで走っていく。
「ごめん、待たせちゃった?」
「いや、今来たばかりだよ。じゃあ、帰るか!」
「うん!」
2人が歩いている後ろで、未來と佳奈、拓士が2人の後を付けていた。
「……なんでこんなことしなきゃいけないんだ」
拓士の呆れたような呟きが未來と佳奈の耳に届き、一瞬だけ2人は彼の方を見る。
「だって、気になるでしょ?」
「結羽さんについて、知りたくないんですか?」
2人の目が、好奇心でいつになく輝いている。こうなったら彼女達が満足するまで、とことん付き合うしかないだろう。
拓士はため息をついて、結羽と一希の後ろ姿を見つめる。
結羽の楽しそうに笑っている姿を見て、拓士は人知れず拳を握りしめていた。