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影闘士 ―Shadow Slayer―  作者: 玉子川ペン子
第三章
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第九十九話 答え

 時は、二日前に遡る。影世界に引きずり込まれた拓士の目の前には、スターチスと、リズが現れた。

「……なん、で―――――」

 拓士はそれきり言葉を紡げなかった。七年前、確かに自分の目の前で消滅したはずの彼女がどうしてここにいる。しかも、己を殺した張本人の隣に。

「これは、五年前にあの娘を貫いた時に手に入れた、あの娘の体の一部から創り上げた人形だ」

 スターチスの言葉に拓士は大剣を構えて、スターチスの方に駆け出す。リズがただの人形だと分かれば、どうということはない。スターチス諸共壊してくれよう。拓士が大剣を振り下ろそうとした時、スターチスの声が響く。

「―――こちら側に来れば、リズ・デュランタを生き返らせることが出来る」

 拓士の手が止まる。その瞳は明らかに動揺で揺らいでいた。そして、彼は思わずスターチスにこう言っていた。

「……それは、本当なのか?」

「ああ。本当だ」

 拓士の問いに、スターチスは淡々と答える。拓士は迷っていた。スターチスは嘘を言ってはいないだろう。だが、一度完全に消滅した者を生き返らせるなど、この世の理に反するのではないだろうか。いや、神は不慮の事故による死者を生き返らせているではないか。ただのヒトが良くて、影闘士が生き返ってはいけない理由などない。

 ―――拓士

 唐突に、リズの笑顔が浮かんだ。あの笑顔をもう一度見られるのなら、他のもの全てをなげうっても構わない。今の仲間も、結羽への想いさえも。

 拓士は大剣を消した。それが答えだった。



 ある影世界で、拓士は言葉を発さずただ一点を見つめるリズに優しく微笑んでいる。そんな拓士の頭の中に、自分と同じ声が響く。

『たった一人の女の為に仲間を裏切るとはな』

 闇鬼の言葉に対して、拓士は何ともない風に返す。

「もうあいつらは仲間じゃない。この程度の犠牲でリズが生き返るなら、安いもんだ」

 二日前、リズを生き返らせる方法として、スターチスはこう告げた。

 ―――お前の中にある、この娘の思い出、心の欠片を捧げれば、生き返る。それまで傍に居続けろ。他の者全てを捨て、その娘だけに心を砕け

 スターチスが考えていることは分からない。だから、リズが生き返ったら、スターチスを殺す。あいつの思い通りになるつもりはない。

 そこで拓士は自嘲気味に笑った。

 だが、スターチスを殺したとしても、もう結羽達のところには戻れない。闇鬼(こんなもの)を受け入れた時点で、俺は彼女達の敵だ。居場所など存在しない。


 あいつのこと、本当は好きじゃなかったのかもしれないな。こんな簡単に想いを断ち切れるのだから。


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